「ふるさとづくり2002」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

「地域コミュニティースクール」の取り組み
大分県 本耶馬渓町
「生きる力」と「考える力」を育む
 本耶馬渓町では、平成11年度より地域で子育てをしていこう、というねらいで「地域コミュニティースクール」を全小学校区(5校区)で展開しています。具体的には学校が休みの土曜日を利用して、地域の方々の身近な教育施設である小学校を積極的に開放してもらい、子どもたちが年齢の異なった集団の仲間と楽しく遊んだり、活動できる場所や、地域の方々に様々な学習機会の提供を促進することによって、学校と地域社会の教育の活性化を図ることが目的です。
 また、様々な体験を通して子どもの「生きる力」と「考える力」を育み、たくましい子どもの成長を願うものです。


地区毎に実行委員会を組織
 活動の運営については、地区毎に地域の方々が実行委員会を組織し、毎回の活動について協議し実施しています。平成12、13年度の活動内容について校区毎に紹介しますと、
(1)洞門ふれあい学級(樋田小学校区)
活動内容…昔の遊び(竹馬・水鉄砲づくり)・昔ながらの餅つき体験(12年度)、巣箱作り(地元に生息する鳥について)・昔ながらの餅つき(13年度)

(2)屋形かじか塾(屋形小学校区)
活動内容…かじか蛙・山椒魚の生態学習会・しめ飾り・郷土料理づくり(12年度)、地元の土を使った土器づくり・川遊び・ミニ門松づくり・竹笛作り(13年度)

(3)上津わくわく塾(上津小学校区)
活動内容…昔の遊び(竹トンボ・紙鉄砲づくり)・昔ながらの餅つき体験(12年度)、土器づくり・校区文化財史跡学習会(13年度)

(4)東谷ほたる村(東谷小学校区)
活動内容…昔の遊び(川遊び・魚取り)・拝殿の大しめ縄づくり・郷土料理づくり及び軽スポーツ(12年度)、どんど焼き体験・地元の山に登ろう(13年度)

(5)西谷ふれあい学級(西谷小学校区)
活動内容…川遊び(竹竿作り・魚取り)・軽スポーツ大会・地元の土を使った土器づくり(12年度)、竹細工づくり(水鉄砲・そうめん流し)・ふれあい軽スポーツ・竹馬づくり(13年度)

 このように年間を通して各校区の児童・生徒とその保護者、さらには婦人会・老人クラブ・消防団その他様々な団体が交流し、地域で子育てをテーマに活動しています。
 これまでの活動は平成11年度モデル的に西谷校区で取り組み、平成12年度全町に広がりました。各校区によって、名称や活動の内容も異なり、それぞれの地域のカラーで展開されています。これらの活動を実施するにあたり、各校区の役員は何度も学校で会議を夜開き協議していました。どのような活動ができるか。この分野ではこの人が得意だから講師をお願いしよう。など、様々な視点から子どもの立場に立って計画をしていました。具体的な活動の内容については、前記のとおりです。


学校では教われないことを体験
 活動による成果と今後の展望については、今現在、このように子どもから高齢者まで一体になって活動する場というのが数少なくなっていると思われます。例えば、餅つきを例にとっても、昔は正月近くになると、近所の数軒で子どもから高齢者まで全員で1日かけて餅をついていました。そのような時に自然に近所のつきあい、地域のふれあいの場ができていました。かまどで火を炊く人、せいろに米を入れる人、かけ声をかける人、合いの手を入れる人、餅をつく人、ちぎって丸める人、子どもには子どもの役割があり、大人には大人の役割があり、その共同作業の中で自然に輪ができふれあいの場ができていたのでしょう。杵でつくと、たしかに時間も労力もかかります。しかし、その分、その餅にはお金では買えないその地域のぬくもりがたくさん詰まっている気がします。
 このコミュニティースクールで上がった成果は何かと聞かれると、自分が暮らしている地域に生息している動物や昆虫の存在を、自分の目で確かめることができ、地域の方々からは、昔の遊びや道具の作り方を教わったり、ふるさとに伝わる料理の作り方を習う、地域の土そのものを使っての土器づくりとドラム缶での焼き上げなど、学校では教わることのないものをたくさん体験することが出来たことが大きな成果といえます。そして、次の世代、さらに次の世代へと受け継がれた時、この活動の成果があったと言えるのではないでしょうか。参加された方は、新聞で様々な少年事件が取り上げられ、「子どもたちの悪い面しか見えていなかったが、こうして自分たちの町の子どもと接してみると、子どもたちの純粋な一面などを発見し、良い交流ができた」と言っていました。


地域に根付いたコミュニティースクール
 この地域コミュニティースクールにおいて最もアピールしたい特徴は、この活動が地域に根付いたものであるということです。実施のための準備も会議も全て地区の方が行い、子どもを育てるために今、それぞれの地区で何ができるのかということを真剣に議論されています。活動当日も老人クラブの方や婦人会の方が講師となり、保育園児・児童まで一体となり、素晴らしいふれあい交流ができています。
 21世紀を迎え、少子高齢化、市町村合併等の問題に加え、平成14年度から学枝週5日制が施行され、益々地域の連帯感、地域の教育力が重視されるようになりました。個人主義、地域連帯感の希薄化等により、その地域が代々培ってきた伝統行事や文化をいかに守っていくかがこれからの世代に課せられた大きな課題であると考えます。そのために、家庭、学校、地域、行政が一体となって、学校が休みの土曜日は、子どもたちを地域に返し、地域のおじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさんとともにふるさとを見直し、地域の絆を深める土曜日であって欲しいと思います。