「ふるさとづくり2002」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

将来を担う子どもたちの育成のための環境づくり
大分県湯布院町 財団法人人材育成ゆふいん財団
ゆふいん財団設立までの経緯

 昭和63年6月、湯布院町は、「人づくり懇話会」の答申に基づき、自然と人間が調和し、文化の香り高い豊かな「潤いのある町づくり」を目指すための「潤いの町人づくり寄金」を設立。同時に「潤いのある町 人づくり寄金条例」を制定し、基金繰入金として1000万円を計上し、条例にある「事業の推進に必要な推進機関の設立」について協議。その結果、法人設立の方向性を決定。広く一般に基金の呼びかけを始めました。町民の関心も深く、財団法人設立に向け、民間からの寄付金も4700万円に上り、湯布院町より5300万円の基金繰り入れも行われ、平成3年4月、基本財産1億円を有する財団法人「人材育成ゆふいん財団」の運営がスタートされました。


ゆふいん財団の目指すもの

 人材育成ゆふいん財団は、未来へ向けていつまでも平和で豊かな社会であり続けるために、町民の叡智を集め、支え合い、お互いの暮らしや地域との関わり合いを深めていくことが大切であると考え、そのような社会の実現に向け、「人」を育む環境を整えていく役割を担うものです。湯布院が目指す「潤いのある町」から世界へ向けて、個性溢れる創造力と生命や自然を貴ぶ優しさを兼ね備えた、感性豊かな人材が育ち、この町の、この国の、そしてこの地球の未来のために活躍することを私たちは願っています。
 このような主旨から、人材育成ゆふいん財団は「教育・学術・文化」「環境・福祉」「産業・技術」「政治・経済」などのあらゆる分野において、21世紀を担う、高い志を有する人材が育つ環境を整備し、ゆふいんに暮らす人々が自主的な学習・実践活動を推進することによって、ふるさと湯布院の豊かな暮らしと環境を将来にわたり継承していけるよう、支援・助成する形や自主的な事業の企画などを柱に事業を進めています。


ゆふいん財団―これまでの事業


 発足当初は、助成・顕彰事業を中心に、教育の現場や行政では手の届かない分野での人材育成を目指し、幅広いジャンル、幅広い人材の参画に重きを置き、さまざまな分野への助成、支援活動を事業として実施してきました。
 例えば、文化的な分野での啓蒙活動として、日本の伝統芸能「文楽」の小中学生を対象にした鑑賞会や湯布院町の年間行事として定着している「ゆふいん音楽祭」、「ゆふいん文化・記録映画祭」、「湯布院源流太鼓」「ゆふいん源流少年隊」などへ積極的に助成、顕彰を行ってきました。これらの町内外からの関心も高い行事については、町民が、特に若い世代の町民が自主的に参加できる、ふれ合える環境づくりを現在も継続して助成支援事業を展開しています。
 また、自主事業として、子どもたちが実際の体験を通じて、より深い知識、経験を深めてもらおうと、平成4年から平成7年までの4年間、小学5年生を対象に「小学生雪国体験交流」事業を実施しています。延べ89人の子どもたちが参加し、岐阜県白川村や岡山県上斉原村などを訪れ、現地小学生とスキー体験をしながら交流を行い、お互いの住んでいる町や村について意見交換をし、お互いの異なった地での生活文化や生活環境への理解を深めることができました。参加した子どもたちらは、自分の身長ほどある雪に感動し、雪国での生活の大変さやその中からでる暮らしの知恵などに感心するなど同じ日本でも生活・文化の違いに驚きと関心を占めていました。2泊3日という短い時間のなかでの事業でしたが、将来、子どもたちの豊かな感受性や社会性を培っていくなかできっと役立つものであると評価できることと考えます。
 平成8年からは、町民の暮らしを取り巻く様々な環境(生活・文化・自然・教育)に目を向けることが、自分たちの生活を見直し、心豊かな人材の育成に深く関わることから、「生活文化環境セミナー」を2回開催。町内のさまざまな団体、グループ、個人に参加を呼び掛け、開催されました。このセミナーから問題提起され、生まれてきた事業、あるいは町民の自主的な活動が「図書館をつくろう」という動きです。それまでにすでに、湯布院町に図書館をと活動を行っていた「図書館を考える連絡協議会」、「ゆふいんFamily」、「図書館をはじめる会」などヘグループ活動支援事業として助成を行ってきていましたが、これを契機に、町民を中心としたまた新たな活動が始まりました。図書館に関心のある6団体との情報交換の場として「図書館を考える連絡会」を発足し、図書館に関わる様々な研修会、活動を続け、その集大成として、この間、積極的に助成支援を行ってきたゆふいん財団から、小冊子「未来をひらくゆふいん図書館」を平成9年3月に発行するまでにいたりました。同月には、小冊子発行記念報告会として小冊子監修を行った竹内さとる氏の講演会を開催。その後も、住民の活動団体「ゆふいん図書館つくろう会」が新たに発足、現在も絵本の読み聞かせや広報誌の発行などの活動を行っています。
 平成11年度からは、地域のコミュニティを見つめ直そうとゆふいん財団の賛助会「木綿(ゆふ)の会」を設立。木綿の会を通して、より町民と「顔の見える関係」づくりを築くことで、財団事業、人材育成の重要性を町民に理解していただける事業活動を開始しました。この「顔の見える関係」にポイントをおいた活動内容が、財団事業の中で、また新しい企画を生み出してきました。
 平成11年度から、そういったヒトとヒトの顔の見える関係づくり、世代を越えた交流、地域間での交流に目をやることで、人材育成の環境形成に「考える」「参加する」「実践する」具体的な要素を盛り込んだ新しい事業展開が始まりました。
 それが「0歳から100歳までの食」をテーマとした「0歳から100歳までのだいこん畑・ふれあいのそば畑」の事業だといえます。現在までに3回開催。種まきから収穫、試食を交えたお祭りまでを、ボランティアの協力のもと、町内外からの参加者とともに汗をかきながら、そして学習しながら、楽しみながら実践してきました。この事業は、単なる農業体験学習というだけではなく、その体験を通して、食文化、食料生産やそのための環境づくり、そして自然環境を守っていくことの大切さなどを学習することを目標に、また、普段はふれ合うことが少なくなった、子どもとお年寄り、他地域間との交流をも視野に入れ、展開を行っています。昨年度からは「0歳から100歳までの生命の水」をテーマに、環境までをも取り込んだ同様な事業を継続、実施しています。
 また、平成13年度からは、国際ふれあい交流事業があらたに開始されました。ゆふいん財団の主催する事業への参加を通じて、外国の皆さんとの接点をなるべく多く創り出し、身近なところから国際感覚の基礎を育んでいこうという目論見です。まずは、隣市別府市にある立命館アジア太平洋大学学生に「0歳から100歳までのふれあいのそば畑」参加を呼びかけ、いろいろな国から来られている約30人もの留学生のみなさんとの草の根交流がスタートし、学生のみなさんたちも日本の食文化にふれたり、子どもたちや地元のみなさんと会話することで、日本についての理解を少しでも深められたのではないかと考えています。また、事業終了後も出会いを大切にした、個人同士での交流も進んでいるようです。
 今年度はさらに一歩進めて、次世代を担う子どもたちを対象とした新たな国際ふれあい交流事業を実施しています。「ゆふいん〜アジアふれあい交流子ども使節団」を公募、身近なアジア諸国を訪れ、自分の目で見て、体験して、アジアから見た日本、アジアから見たふるさと湯布院の町を考え、文化や慣習の違い、またそこからわが国の文化への興味・関心を高めるとともに、将来役に立つであろう国際感覚を子どもの時から育んでいこうと、これも財団をサポートしてくれているボランティアスタッフを中心に展開されています。ちなみに、1回目となる今年は、日中国交正常化30周年ということもあり、上海・北京を訪問しました。


「これからのゆふいん財団」

 湯布院の宝物はヒト。そして、ヒトのネットワーク。
 ゆふいん財団は、うちに、そとに人を結びあわせる事業をさらに展開しながら人材を育む環境形成に向けて事業を進めていきます。