「ふるさとづくり2002」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

美しい水辺づくりと地域活性化―池・小川の復元と自然の保全―
宮崎県宮崎市 山崎エコアップ会
池・小川の復元

 宮崎市、山崎町はシーガイアのリゾート施設の隣接地で森や林、田畑の広がる田園地帯である。
 平成6年、山崎町を流れる江田川も宮崎市内を流れる他の河川と同様、生活排水等で汚染され臭いを発していた。
 江田川の源流は、湧き水で約40年前は灌漑用の溜め池として使用されていたが米作が普通米から早期米と変わり、池や小川が不用となり荒れ果てて、陸地化し湧き水も少なくなり竹やぶとなっていた。平成6年から平成9年に山崎地区住民の中から池や小川を復元し、美しい水辺づくりをして絶滅したホタル、トンボ、メダカを蘇らせ、わずかに残る絶滅危惧種の植物(ミズキンバイ、ヌマゼリ等)を保護し、憩いの場を造ろうと話がもち上がった。
 平成9年11月、山崎町の農家77戸が主体となり地域の会社、神社等も含めた自然保護団体「山崎エコアップ会」が設置された。
 平成10年、陸地化した池の竹を刈り、地域住民100名程度で焼却。昔の池の姿をとり戻すため、地域の土木業者の協力で、約2000m2を60cmの深さで掘削、見事に池を復元した。
 小川は森の脇にわずかに残っていた約500mの凹地を掘削し、小川脇の道路は、地主5人の方々に協力頂き遊歩道を設けた。池周辺には椎22本、桜10本を植樹。美しい水辺が出来上がり「山崎ホタルピア」と命名した。


ホタルの復活

 池や小川は復元されたが、絶滅したホタルを呼び戻すには大変な努力が必要だった。ホタルは、さらさら流れるきれいな水に棲むのであるが、エサとなるカワニナが1匹もいなかった。
 造成した川には、カワニナの食べ物であるコケがなくキャベツ等の野菜を投入、カワニナは近くの小川から採取、約3万匹を放流した。川には、クレソン、ホテアオイ等の植物も移植させた。
 ホタルは、種ボタルを同水系の地区から頂き、飼育、産卵、ふ化させて小川に放流。平成11年に50匹が5月に飛翔し、「会員」の喜びようは大変なものであった。
 さらに増やすために飼育法を北九州市や県内の先進地、北川町、田野町等を訪問し研修を重ねた。ホタルの飼育技術は格段に向上。6月種ボタルを山手のホタル生息地(同水系)より採取し、「山崎ホタルピア」の水ゴケをかごに入れて水ゴケに産卵させる。1匹のメスより500個〜1000個の卵を産む。毎日、小川の水を噴霧して、乾かないように管理すると1か月で、ふ化する。ふ化したホタルの幼虫は、1mm程度である。これに川ニナを与えると、11月には3cmになる。川ニナは、幼虫の大きさに合わせて与えるのがコツである。会員の自宅(約10名)で、2000匹程度大きくして、11月に放流する方法をとった。
 平成12年、13年、14年と段々と飛翔するホタルの数は増え乱舞するようになった。毎年4回、池、小川の草刈りを行い植物の管理を行っている。


地域活性化

 池、小川のある「山崎ホタルピア」は、5月のホタルだけでなく夏にはトンボ、メダカが群れ、希少植物(絶滅危惧種のミズキンバイ、ヌマゼリ等)の繁茂する安らぎ広場となった。近くの小学校の自然教育の場ともなっている。
 5月のホタルは、日本一早いのではないかと思われ、私たち、地域住民だけでなく広く市民や、5月の連休に宮崎に訪れた観光客にも、安らぎを与えるのではないかと「ホタルと音楽の夕べ」を平成13年、14年と催した。音楽は「山崎ホタルピア」に隣接した、花の公園で行い特に癒しの曲である童謡(ふるさと、おぼろ月夜)や「川の流れのように」等皆の知っているものを奏でた。入口では、主婦の手づくりの節句団子を無料で配り、花や松林に囲まれた雰囲気で行った。演奏後、隣の「山崎ホタルピア」でホタルの乱舞を見て頂き「郷愁を誘う催し」と市民や県外客の約300名の皆さんに喜んで頂いた。この感動は、県内各地に影響を与え、美しい水辺づくりの手本となっている。
 「山崎ホタルピア」が源流の江田川は改修工事が進み約5kmの多自然型の美しい小川に変わろうとしている。