「ふるさとづくり2003」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

子どもたちにやさしい心と夢と勇気を!
岐阜県大垣市  特定非営利活動法人大垣おやこ劇場
大垣おやこ劇場の歴史

 東京オリンピックが開催された後、どこの家庭にもテレビが普及し、週刊マンガが出版され、子どもたちの外遊びが減り、コピー文化が蔓延し始めました。また、「消費は美徳・使い捨て」の風潮も始まり、人と人のつながりが希薄になり始めました。そんな時代背景の中、1972年、子どもたちの文化と生活の質的向上を目的に、ふつうの市民たち(主に、親・教師)が子どもたちと生の舞台芸術を鑑賞したり、自分たちで何かを創造したり、仲間同士が関わり合いながら祭りやキャンプを創り上げる「大垣おやこ劇場」の活動を始めました。
 以来30年、子どものための生の舞台芸術が上演されにくい地方都市大垣で、200回以上の公演を実施し、延べ約25万人の親子が鑑賞してきました。また、子どもたちと親たちの自主的な活動(おやこ市・キャンプ・文化セミナー・幼児サークルetc)をしてきました。
 1998年の特定非営利活動促進法成立に伴い、2000年4月、特定非営利活動法人(NPO法人)を設立し、同年8月、岐阜県より認証され、NPO法人として、創立理念を大切にしながら、新たなスタートを切りました。
 おやこ劇場の活動(鑑賞活動・自主活動)を通して、大垣のすべての子どもたちの文化環境の向上と、子どもたちの創造性・自主性・感受性を育み、親同士のネットワークの輪を広げ、地域の人々が心豊かに、楽しく、暮らしてゆける街作りをめざします。

スローガン
・子どもたちに やさしい心と 夢と 勇気を!
・私の子どもから、私たちの子どもたちへ!
・みんなで子育て、楽しく親育ち!
・子どもの主体性を大切に!


活動の内容

【1】舞台鑑賞活動
 舞台劇や人形劇、音楽、芸能など、生の舞台芸術を対象年齢別(幼児・小学低学年・高学年・中学・高校)に、年8回ほど開催します。
(1)鑑賞作品選びは、会員のアンケートを基に、高学年の子どもも参加する会議で。
(2)鑑賞の前には、創造団体との交流や、作品内容に合った活動を工夫し、楽しみに待てる取り組みをします。(劇遊びワークショップ・人形つくりetc.)
(3)会場内では、みんなが楽しく、気持ちよく鑑賞できるよう、お互いにマナーを守る約束をします。
(4)舞台鑑賞の会場運営は、会員みんな(おとなも子どもも)が順番に担います。会場設営・装飾・受付・あいさつ・マナー・プレゼント・場内整理・出演者への手作りの食事等、協力し合います。
(5)鑑賞後は、感想を出し合ったりして、作品を深める取り組みもします。

【2】自主活動
 主体的に関わることを大切にしながら、仲間をつくり、いっしょにたくさんの楽しい体験をします。
(1)おやこ市…子どもが主役のおまつり
 子ども実行委員会で5か月にわたり、話し合い、おとなはサポート役に。
(2)高学年子どもキャンプ
 高校生・中学生・青年が企画の中心になり、小学生のリーダーとして活躍。
(3)高学年子ども自主企画…クッキング・スケート・青春きっぷの旅等
 高学年の子どもたちが発想豊かに、いろいろなことを考え、チャレンジします。
(4)親子対象企画…光るどろだんごつくり・そりすべり・芋掘り・芋煮会等
 主におとなが発想豊かに企画。いろいろな体験活動を通し、親子のふれあい、異年齢の子との関わり等、いろいろな人との豊かな人間関係を培います。
(5)身近な地域(学校区単位)での子育てコミュニティ活動
 子どもの育ちが見合えるような関係を培います。

【3】おとなのための学習・子育てネットワーク
(1)文化セミナー…2002年は年7回開催
 子どもたちの、豊かな子ども時代を育み合えるおとなになるための学習会。
 2002年のテーマは「生きる力って何だろう?」
(2)おかあさんのためのおしゃべり広場
 ひとりで子育てしないで、おとなも異年齢の仲間づくりが大切です。

【4】対外活動
(1)坂内村諸家地区のお年寄りとの交流
 2001年11月より、交流開始。大根の種まき・川遊び・大根引き・そりすべり。山村の自然と温かいお年寄りとのふれあいは、子どももおとなも、活力の源になります。お年寄りの生活文化の知恵は、大きな驚き。
(2)キャラバン隊…おかあさんから、地域の子どもたちへプレゼント
 ぺープサート・手遊びをもって、保育園・幼稚園・子育て支援センターへ。
(3)学校5日制に対応する地域事業に協力
 「子どものひろば」と名づけ、北・安井・江東・宇留生・荒崎地区で、活動内容多彩に、各地域月1回程度実施。
(4)大垣市ファミリー劇場実行委員会の企画・推進の中核
 1992年より、市民に広く演劇などを親子で楽しむ機会を提供。教育委員会と協働。
(5)大垣市主催行事への協力
 花と緑のふれあい展・福祉フェスティバル・子育て支援の会


活動の担い手

 みんなで会費と知恵を出し合い、すべての活動を、母親を中心とする一市民が主体的に担っています。仕事を持つ母親が増えている中、ひとりひとりができることから、少しずつ役割を分担しあっています。


まとめ

 2002年度だけでも、このように多彩な活動を繰り広げてきました。それを担っているのは、ふつうの母親たちです。30年間、その時代を担う人たちによって活動の内容はさまざまでした。が、根底に流れる想いは、脈々と人から人へとつなげられています。目的に掲げている、「地域の子どもとおとなが、心豊かに楽しく、助け合って暮らしていける街づくりを市民ひとりひとりの力で!」という想いです。創立当時、子どもで、その思い出を胸に、今は親として関わっている人がいます。幼児の頃からさまざまな活動に参加し、今、子どもキャンプのリーダーとして活躍している高校生・青年の姿もあります。
 地域の中で、責任を持って社会貢献活動をしようという決意から、大垣市内の数ある市民団体の中で、最初にNPO法人格を取得しました。3年を経過した現在、行政や地域のみなさんからの信頼も増し、さまざまな場面(子育て支援・文化芸術振興・子どもの体験活動・街づくり等)で、貢献していると自負しています。
 過日、人形劇団ひぽぽたあむの幼児向き作品「ばばばあちゃんのいそがしい夜」の上演の時、本当に小さな幼児(2歳くらい)も素朴な人形劇に夢中になっていました。テレビや映画のようなスピード感・迫力・大音響ではなく、人形のつくりと腕と指だけを使った素朴な動き、生だからこその観る側と演じ手の心の通い合いのようなものが、あの小さな幼児たちの心を捉えて放さなかったのだと思います。そして、その傍らには、感動を共有できるおかあさんやともだちの姿がある…、そんな素敵な時を過ごした子どもたちの心はやさしさでいっぱいに満たされたのでは…? 6月末の、小学生とおじいさんとの交流を描いた東京芸術座の舞台劇「夏の庭」の上演の時には、どんな出会いが子どもたちに待っているのか…とても楽しみです。
 こうした文化体験、たくさんの人たちとの出会いの中で、豊かに成長していく子どもたちの輝きをみつけました。私たちおとなも子育てに力をもらい、ともに成長するたくさんの友人たちの輪がひろがりました。心の中にかけがえのない温もりを育み広げている活動の歴史をこれからもみんなで紡ぎ続けていきたいと願っています。この街に育つすべての子どもたちの笑顔のために……。