「ふるさとづくり2004」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

21世紀を担うであろう子どもたちの安全・安心を願って
北海道北広島市  北広島市西の里地区青少年健全育成連絡協議会

 北広島市西の里地区は、北海道一の大都市札幌市のベッドタウンとして年々人口が増加している発展地域にあって、国道274号に沿って街並みが形成されています。地区内には、障害者の授産施設や児童の養護施設など福祉施設が数多く所在し、「ノーマライゼーション推進地区」となっています。
 西の里地区青少年健全育成連絡協議会は、「21世紀を担うであろう子どもたちの健やかな成長を願い」平成11年に設立しました。主に地区内での子どもたちを巡る環境の整備を図るために、地区内の危険箇所を示す「安全マップ」の作成・配布(全世帯)や巡視活動を行なってきました。
 近年、当地区で不審者の出没が多発(平成14年に22件)し、警察や関係団体が巡視活動を展開しても一向に減る気配がなく、早急な対策が求められていました。また、高齢化の波が押し寄せる中で、住民の中で子どもたちへの関心が稀薄になってきたのではないかと危惧する声が聞かれるようになりました。そのような現状を改善しようと考え、平成15年8月に「シルバーPTA」(代表・郡山政夫)を立ち上げることになりました。


シルバーPTA発足の端緒

 昨年4月頃、連合町内会の会長から「毎日、通学路を散歩して子どもたちとあいさつをしていますが、もっと多くの住民(特に毎日散歩をしているお年寄り)があいさつ運動を展開することで心の絆を深め、各所でお年寄りの人が散歩していると不審者対策になるので是非とも輪を広げたい」との提案が寄せられました。以前からあいさつ通りを設けたりして、子どもたちと住民とのあいさつ運動を行なっていましたが、なかなか浸透せず、打開策が見いだせずにいました。さらに、5月から6月に立て続けに不審者情報が6件ほど寄せられ、いつ傷ましい事件に発展するのではないかと危惧され、地区全体で対策を考える必要性に迫られていたことから、関係団体と協議をして立ち上げることにしました。
 関係団体と協議している中で、多くの賛同者を求めるためには、活動の趣旨を明確にする必要があることから、以下の点について住民に説明をして参加者を募ることにしました。あわせて、地区内にある老人クラブ3団体にも協力を仰ぐことにしました。
(1)子どもたちがあいさつをしっかりとできるようにすること
(2)子どもたちとシルバー世代とのふれあいを図ること
(3)不審者対策と子どもたちの非行防止
(4)地域のよき風習、伝統的な技能を伝承すること
(5)高齢者の健康増進、生き甲斐づくりに繋がること
 募集を開始した当初は反応が全くなく、参加者が集まるか不安でしたが、8月17日の発足式には50名近くのシルバー世代(主に60歳以上)の人が集まり、「西の里地区シルバーPTA」を立ち上げることになりました。


異世代交流の推進と安全・安心な街づくり

 主な活動を大別しますと、「子どもたちとのふれあい活動」と「子どもたちの安全確保」、そして「お年寄りの人たちの健康増進、生き甲斐づくり」に主眼をおいた活動であります。
 一点目のお年寄りと子どもたちの異世代交流では、まず、人と人とのマナーの基本ということで「あいさつ運動」を実施することから始めました。以前からお年寄りの人たちが朝夕の時間帯に散歩をしていることに着目をして、歩く時間帯を子どもたちの登下校時間帯に合わせてもらい、子どもたちと会ったときにはお互いにあいさつをし合うことにしました。
 活動を開始してから数か月経過するとお互いに顔なじみとなったことで、会話が弾むようになり、また、小中学校の行事にも案内をされて子どもたちの元気な顔を見る機会が増えたことで、シルバーPTAの会員から「ふれあいの機会を作って欲しい」という声が聞かれました。そこで、百人一首・かるた大会を1月に企画したところ、子どもたちと保護者そしてシルバーPTAの会員を合わせると総勢80名以上の参加者が集まり、お互いに楽しい一時が過ごせたと好評を得たものであります。
 二点目としては、平成14年度に22件という不審者が出没して「声を掛けられたり、子どもたちが連れ去られそうになった」事案が多発し、平成15年度の春先にも立て続けに6件ほどの不審者情報(発生の都度、学校等から情報が寄せられる取り決めを結ぶ)が寄せられた中で、現在86名の会員を有していますが、朝夕の自分の都合の良い日や時間帯に不審者と区別するための腕章を着用し、地域の至る所で散歩しながら巡視することで不審者対策につなげました。また、地区内で車を運転する時に会員に、「安全巡回中」のステッカーを貼ってもらうことで、不審者への牽制措置につなげる一方、交通安全にも一役買ってもらうことにしました。
 三点目として、小中学校と協力して学校行事への案内、シルバーPTAの会員が自分たちのために一生懸命活動していることを説明したことで、シルバーPTAを見る目が変わり、いたわりと温かい眼差しをおくってくれるようになりました。そのことに対して、会員も意気に感じて活動するようになり、ほぼ毎日、散歩することで足腰が丈夫になって健康になったとの声が聞かれるようになりました。その中で、活動を長続きさせるために、強制や無理なことはさせないことを徹底したことで自律的な活動となり、一人ひとりの会員が子どもたちのために何ができるかを考え、行動するようになりました。
 このように一つの活動を通じて地区内で、子どもとの交流が進み、安全・安心な街づくりが徐々に浸透するとともに、お年寄りの生き甲斐づくりができるようになってきました。


21世紀を担う子どもたちにふるさとの思い出を

 私たちの活動は、行政や各種組織から要望や指示を受けずに、自発的に結成された草の根の活動であります。当初、趣旨を理解して会員が集まるか、活動が定着化するか不安でありました。実際には、会員数も声かけにより毎月着実に新規会員が入会しており、会員の意識としてできる限り毎日活動をするという気持ちで頑張っています。
 その結果、平成14年度に22件寄せられていた不審者の件数が、活動を開始してから、3割ほど減少しており、今年度では春先に多発していたものが、l件も発生しておりません。これも、シルバーPTAの活動とともに地域全体で子どもたちを守るために「不審な人物や車両」に注意を払う意識が浸透したお陰だと推量しております。
 また、昨年の秋に学校で「シルバーPTA」の皆さんをどう見ているかとのアンケートを実施したところ、「いつも私たちのことを見守ってくれてありがとう」、「無理をしないで頑張ってください」等々、感謝の気持ちやいたわりの声が大半を占めていたとの説明を校長先生から会員にしてもらい、間違った方向に進んでいないことを知ることができました。一方、会員からは活動を開始して「子どもたちの笑顔を見ていると元気が出てくる」、「自分の孫が増えたように思う」、「自分もまだまだ社会の役に立っている」等々の声が多数寄せられており、シルバー世代の方々の生き甲斐に繋がっていることが自覚できます。
 そして、何よりも地域の子どもたちを地域で育てるという意識が広がりつつあり、子どもたちがこの地を巣立ったときでもおじいちゃんやおばあちゃんが声を掛けてくれたことや一緒に遊んだことを忘れないでいてくれるものと期待し、信じております。

 今回始めた活動はささやかなことではありますが、地域のよき伝統として脈々と伝承されて行くために、手始めに今年の6月には「地引き網」を企画しておりますが、今後も学校や地域、行政と連携して裾野の拡大と創意工夫を凝らした活動をすることで意識の統一が図られております。また、子どもたちが悲惨な事件に巻き込まれないようにシルバー世代を含めた大人たちが子どもたちを見守っていく街づくりを進めていこうと考えております。活動を開始した以降、他の地域や市町村から問い合わせが寄せられていますが、同様の活動が他の地域で始められることを期待しています。