「ふるさとづくり2004」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

一歩一歩の歩みが大きな歩みに!
宮城県小牛田町  小牛田町国際交流協会

 一つ、一つ、できることをしていこう、小牛田町国際交流協会のミッションです。小牛田町国際交流協会は、まさにその言葉どおり一歩一歩の歩みを進めてきました。最初小さかった歩みは、今では行政や多くの町民を巻き込む活動にまで発展したのです。
 平成9年2月、小牛田町国際交流協会は、国際交流の推進と国際性豊かなひとづくりを進めることを目的に、異文化に対する相互理解を深めるとともに草の根的な幅広い交流活動を定着させるため、「小牛田町国際交流を進める会」としてその活動をスタートさせました。
 設立当初は30名程度の会員でしたが、現在は162名ほどになっています。さらに14団体の町内企業等も会員になっています。


英会話コンテストとアメリカ派遣事業を実施

 国際交流協会の活動は、県内や町内に住む外国人を対象としたホームステイ事業、町内の二つの中学校の2年生を対象にした英会話コンテスト及びアメリカ派遣事業の実施、インターネットによる国際交流協会の活動紹介、会報紙の隔月発行です。これらの中で、もっとも小牛田町国際交流協会として特色ある事業といえば、英会話コンテストとアメリカ派遣事業なのではないでしょうか。
 「英会話コンテスト」をやりたい、優勝者は、アメリカの好きなところに連れて行く、最初にその会員の言葉を聞いたときそんなことできるわけないと思いました。英語の弁論大会ならどんなものかイメージすることができますが、英会話のコンテストなんて聞いたことがなかったので、どんなことをやるつもりなのか想像ができませんでした。今の世の中あまりいい話を聞くことがないから、夢のある事業がしたい。そんな会員の思いが人を動かしました。募集要項、評価基準、審査員、手探りの中、全て国際交流協会の会員で作り上げていきました。そして、平成10年1月に第1回英会話コンテストが開催され、今年平成16年で第7回を迎えるまでにいたりました。今や小牛田町の多くの中学生にとって英会話を勉強し、英会話コンテストに入賞してアメリカに行くことが目標になっています。英会話コンテストに挑戦する生徒の数も年々増えるとともに英会話のレベルも確実に向上し、審査員を悩ませているくらいです。
 英会話コンテスト入賞者が参加するアメリカ研修旅行も、旅行業者の手を借りるのではなく、国際交流協会の会員が飛行機のチケット・ホテルの手配、訪問先との連絡調整全てを行なっています。旅行費用については、国際交流協会の会員が中学生に同行することで、中学生の旅費を負担するという形で、中学生2名を大人10名でアメリカへ連れて行くところからスタートしました。
 アメリカ派遣も回を重ねるごとに、派遣する中学生の数も増えていきました。また、中学生の他、小牛田町内にある県立の小牛田農林高校の生徒も加わり、今では30名をアメリカに派遣しています。30名の団体を派遣することが可能になったのは、生徒たちの飛行機のチケット代を負担してくれる町内企業など、この事業の支援者が増えたこと。小牛田町とアメリカのウイノナ市が姉妹都市となってからは、町も若干の資金援助を行なっていること。また、ウイノナ市においても、訪問するたび、友人が増えたことでホームステイ先の手配など、日本人の受け入れをする支援者と環境が年々整っていったことが理由としてあげられます。


姉妹都市との相互交流も実現

 国際交流協会では、平成11年からアメリカ派遣事業でウイノナ市を訪問して交流を続けてきました。その積み重ねが実を結び、平成13年9月の小牛田町とウイノナ市との姉妹都市締結につながったのです。
 姉妹都市となり、交流を深めてきたことで、日本からアメリカへといった一方通行の交流からアメリカから日本に来る相互交流が実現しました。平成15年4月、初めてウイノナからの訪問団25名を迎え入れ、今年の4月には、30名もの訪問団が訪れるまでとなりました。
 ウイノナからの訪問団が来町した際、歓迎パーティーやホームステイの手配、企業や学校訪問、観光案内などで働いた人材の多くが国際交流協会の会員であり、ウイノナを訪問した経験のある町民でした。現在ウイノナ市を訪問した町民の数は150人以上になっています。


ALTとの交流も

 小牛田町のホームページには、英語とフランス語で、小牛田町の紹介がされています。これは、小牛田町に住んだALTが作製してくれたものです。小牛田町という町に愛着を感じてくれたことで、快く作製に協力してくれたのです。ALTとはAssistant Language Teacherの頭文字、日本語で英語指導助手と言っています。小牛田町では、平成3年からALTの受け入れをしていますが、定着率が悪く受入を始めた平成3年から平成7年まで概ね1年で帰国しています。ALTが町に定着しない理由は、知らない土地に来て日本語も分からない、友だちもなかなかできない、そういう理由でホームシックにかかり1年で帰国してしまっていたようです。平成8年に国際交流協会ができてからは、国際交流協会の会員有志が、ALTと意識して関わり、友人として付き合うことから始めました。その後、国際交流協会として組織的に、ホームステイの事業を行なう際は、町内のALTにも案内するなど、会の行事を通して積極的にALTと関わりを持ってきました。その結果、国際交流協会設立後のALTの定着率は2年〜3年になり1年で帰国するということはなくなりました。小牛田町のALTの職を終えて高校のALTとなり滞在期間を延長する方もいます。小牛田町に住んだALTの中には日本に愛着を感じて現在も日本に住み職を得ている方もいます。
 今年、そのALTの結婚式に出席するために渡米した会員がいます。今、小牛田町の町民にとってアメリカは遠い国ではありません、知り合いが、友人が住む国、「ちょっと行って来るね」と気軽に出かけることができる国なのです。生徒たちにとっては、英語の勉強を頑張れば行ける国。そして、研修旅行に参加した生徒たちにとっては、ホストファミリーや友だちが住む国。


“住民主導、お金をかけない、楽しみながら”だからできた

 国際交流協会の活動は、人と人とをつなぎ、生徒たちに夢を与えています。生徒たちだけではなく、今年派遣事業に参加した、中学校の英語教師を退職した女性は、アメリカに行き英語を話すのが夢だったときらきらした目で語ってくれました。
 国際交流協会の会長は言います。「私たちでできることをやりましょう」。小牛田町の国際交流協会の活動はお金をかけず、できることを確実にやってきた積み重ねです。国際交流事業は、一般的にお金がかかるイメージがあります。行政主導で行なってきた交流事業が財政難を理由に縮小廃止されていく中、小牛田町での国際交流事業は、より充実しています。これは、住民主導、お金をかけない、楽しみながら自分たちでできることをやるというスタンスだったからこそ成り立っているのだと思うのです。
 国際交流協会の会報紙は、「パザパ」という名前です。これは、フランス語で一歩一歩という意味。この言葉は今までの、国際交流協会の活動を表している言葉です。国際交流はまさに、人と人との関係を一つ一つ積み重ねていくことから始まります。今年も一歩、来年もまた一歩、小牛田町国際交流協会は今後もその歩みを続けていくことでしょう。