「ふるさとづくり2005」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

地域に根ざした特産品の研究開発による地域活性化
北海道剣淵町 剣淵町特産研究グループ福有会
活動の概要

1.地域に根ざした特産品の研究開発
 会員のアイデアや道内外の先進地事例調査などを基に、毎年20種類以上の品目を試作し、関係機関や町民による試食で評価された物のみがテスト販売される。
2.原材料にこだわった製造
 原料は、地元の有機農産物生産組合「剣淵・生命(いのち)を育てる大地の会」や「剣淵町稲作振興会有機栽培米研究班」と連携し、米、大豆、野菜などの有機・減農薬農産物を中心とした高品質な町内産原材料にこだわり、スモモやしそなどは会員自らも栽培に取り組んでいる。
 試作段階から始まる徹底した衛生管理と、「美味しそモマニ」に見られる1個1個のスモモにしそを巻く細やかな手作りの漬物は、添加物を含まないことから鮮度に気を配り、町内販売先やイベント会場に配送される。また、味噌造りでは、麹の加工から仕込みまでをすべて手作業で行ない、1年間をかけ完全に熟成させており、これまでに3種類の味噌(米こうじ味噌・青大豆味噌・麦こうじ味噌)の商品化に至っている。
3.町民や消費者とのふれあい
 町内の温泉施設「レークサイド桜岡」で通年販売を行なうほか、町内外のイベント(けんぶち湖水まつり、けんぶちふるさと祭り、びばからすカップスキー大会、スノーフェスタ、百貨店などでの販売イベント等)にも積極的に参加し、口コミで集まる観光客や町民との語らいの中で消費者ニーズをつかむ対応は、農産加工品に通じた消費生活アドバイザーからも商品と接客の両面から高く評価されている。
4.地産地消と食育教育
 学校給食に味噌や、イモ・カボチャ団子を提供することにより、子どもたちにみそ汁の美味しさと、これが町内で造られていることを知ってもらっている。


取り組みに至る背景・経緯

 剣淵町では、昭和58年に農畜産物加工研究施設を建設し、併せて地場産農畜産物に付加価値をつけるための地場産品加工研究組織を、剣淵高等学校を含む関係機関が一丸となって立ち上げ、漬物を中心とした加工研究に取り組み始めた。
 その後、剣淵農業協同組合婦人部、剣淵商工会婦人部などの女性団体に働きかけて町内漬物コンテストを平成3年から開催し、出展品を紹介した冊子『おふくろの味自慢』は町内外から大きな反響があった。
 町内の農産加工に対する気運を盛り上げる中、平成6年8月、漬物に関心のあるお母さん方への自主的特産研究グループ結成の呼びかけに10名の腕自慢が集い、「福有会」が結成された。
 福有会で取り組んだ一番人気の漬物「美味しそモマニ」(スモモのしそ巻漬)のパッケージングなどを平成9年に行ない、商品性向上を図り販売の端緒を開いた。
 平成10年に新たに整備された農産物加工研究施設の活用により商品数の増加が図られ、本格的な販路開拓に結びついた。
 これまでに開発された主な製品は次のとおりである。
・平成9年度「美味しそモマニ」(スモモのしそ巻漬)
  平成16年度製造量 50s
・平成11年度「だいこんの山ブドウ漬」
  平成16年度製造量 50s
・平成12年度「だいこんのカリカリ漬」
  平成16年度製造量 50s
・平成13年度「玉ねぎのしその葉漬」
  平成16年度製造量 150s
・平成14年度「米こうじ味噌」(北海道味噌醤油工業協同組合理事長賞受賞) 
  平成16年度製造量 3000s
・平成16年度「お惣菜味噌」
  平成16年度製造量 90s


活動展開上のポイント(特徴)

(1)本会が製造している味噌は、農家の自家製味噌の食文化を商品化したものであり、長期にわたる試作の繰り返しと、手作りながら製造段階における効率化を図ったことで一定量の生産が可能となり、これが味噌業界からも本物として認められた。
(2)本会が粘り強く試作研究を進めてきた結果、「美味しそモマニ」や漬物、味噌などがヒット商品として開花したが、成果に安住することなく継続的に試作に取り組み、その数は50品目以上に達している。
(3)農産加工に楽しく取り組み、自家の農業経営と両立させつつも、技術的な検討に関しては一切の妥協を排している。試作と試食を納得のいくまで行ない、原材料を剣淵町産の有機・特別栽培農産物などにこだわることで品質向上につなげ、原料生産者とも良好な連携の下に事業展開を図っている。
(4)女性や高齢者が地域や家で自らのポジションを確保し活き活きとすることは、地域活性化の根源であり、これが実現されている。
(5)剣淵高等学校や学校給食への味噌の原価提供により、子どもたちがみそ汁の美味しさを知るなど、食育教育と地産地消がともに展開されている。
 これらのことから、今後は子どもも含めた「地域食文化の伝承」までを見据えるなど地域への経済効果と活性化効果が相乗的に期待される。


活動実績や活動の展開による地域活性化への効果

(1)福有会の漬物・味噌の商品開発を通し、地元有機・特別栽培農産物と加工技術の素晴らしさを町民に知ってもらうとともに、町外に対しても剣淵町産農産物加工品づくりの取り組みを広くアピールできる。
・平成14年10月、北海道味噌品評会の市販品審査部門で、農業者グループとしては初の北海道味噌醤油工業協伺組合理事長賞を米こうじ味噌で受賞。
・平成15年1月、北海道から農村の暮らしと地域を活かす女性・高齢者グループ表彰で最優秀賞を受賞。
(2)地元イベントでの農産物加工品(いも・かぼちゃ・でんぷんだんご等)販売を通して、加工施設の有効利用と町民との交流を深めることができる。
(3)子どもたちに地場産の安全な食品を食べてもらいたいとの願いから、味噌を原価で学校給食に提供するなど、「食の教育」にも力を注ぎ、子どもたちに地域と農業の素晴らしさを感じてもらうことができる。
(4)会員による町民への麹づくりの指導や「地産地消」をモットーとした「福有会」の活動に触発されることで、農産加工に取り組む農村女性グループが町内に増え、農産加工の輪が広がる。


今後の活動における課題と展望

(1)パッケージングまでを含めた商品性の向上を目指す。
(2)剣淵高等学校農業クラブ活動との連携による地域食文化の創造。
(3)学校給食及び総合学習との違携による食育教育への支援拡大。


その他

(1)設立年月 平成6年8月(規約あり)
(2)組織体制 会長1名、副会長2名、会計1名、監事2名、幹事長1名
(3)構成員数 7名(平均年齢61歳)
(4)年間活動回数(平成16年度)
@製品製造  106日
A試作研究    10日
Bイベント参加等 10日
C事例調査    2回
D他組織との交流 3日
E運営会議    10回
(5)活動の成果
@本会は、剣淵町の農産物の有効利用を図ることを目的に平成6年8月に設立され、特産品の試作研究に粘り強く取り組み、平成11年頃から「美味しそモマニ」や漬物の商品化が軌道に乗り、高品質、良食味であることから順調な販売につながり、平成14年には北海道味噌品評会から市販品粒みそ部門の最優秀賞に当たる北海道味噌醤油工業協同組合理事長賞を受賞する。このほか、北海道から農村の暮らしと地域を活かす女性・高齢者グループ表彰で最優秀賞を受賞するに至っている。
A本会は、農産加工分野だけでなく、地域の活性化に関しても町内の農村女性活動の目指すべき目標となっている。
B本会は、「本会構成員に係る効果」と「地域への波及効果」の両面で次のような効果を実現している。
(a)会員に係る効果
・短期的経済効果としては「製品売上高の向上(年間200万円台)」
・長期的経済効果としては「加工技術ノウハウの蓄積」、「新製品開発体制の確立」、「製品販路の確保」などがある。
・精神的効果としては、目標のステップアップとチャレンジによる達成感の実現や生活の活力と家庭内における地位の向上があげられる。
(b)地域への波及効果
・経済効果としては「有機農産物生産者との連携」や各種イベント・マスコミ媒体を通じた「剣淵町のPR」がある。
・このほか、地域活性化効果として、「地元の有機農産物生産者との連携強化」や「地域食文化の伝承」、「地産地消の確立」、「学校給食を通じた食育教育への寄与」、「農村女性活動への支援」、「消費者との交流促進」などがあげられる。