「ふるさとづくり2005」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

地域を“新しいふるさと”に
愛知県小牧市 おおくさ探検隊
新しいふるさとを目指し

 私たち「おおくさ探険隊」は、愛知県小牧市の東部丘陵に位置する、大草地区、桃花台地区を活動のフィールドとして、1994年(平成6年)3月に結成された団体で、ここに住まう人やここに関わる人や、ここに関心のある人がメンバーとなっています。
 メンバーの多くは、新しい住宅団地である桃花台に住まう人で、それぞれ出身地があり、自分のふるさとは、それぞれです。しかし、その子どもたちには、ここが「ふるさと」であり、大人にとっては、ここが新しい第二の「ふるさと」となります。
 旧集落の田園生活や里山の自然と、愛知県の住宅供給公社が開発した住宅団地・桃花台の都市的生活や景観をあわせ、ここに生活し活動する市民にとって、双方全体が、共通の生活の環境と受止め、人々の出会いや交流を深めることや、この広がりの豊かさを改めて体験し発見し、よりよく知り改善すべき課題を共有し共通のテーマとし、このフィールドに関わり、ここを「新しいふるさと」となることを目指し、活動をスタートしました。


「おおくさ展」をきっかけに「博覧会」開催に発展

 この地域には、尾張平野が丘陵に移り変わってゆく地形の変化、多様性があり、農業の営みに係わる、河川や多くの大小の溜め池、水田、野菜畑、果樹園(もも、かき、ぶどう、いちじく、みかん、りんご、なし)、雑木林、集落、神社、寺院、祠などなど、連綿と受け継がれてきている要素からなる風景と、丘陵に開発された人口3万人弱の住宅団地がショッピングセンター、道路が巡らされ整備された区画に集合住宅や独立住宅が、凝縮されたように、人工的な中にも東海地方のゆったりさを持って都市景観が形成されています。
 発端は、名古屋から移転して来た名古屋造形芸術大学(当時は、短期大学でした)が、大学内のギャラリーに於いて開催された、「おおくさ展」でした。
 これは、移転を期に、大学の立地する環境を様々な角度から調査研究し、発表する展覧会でしたが、大草地区のお年寄りから、昔の習慣や伝統行事、出来事などの聞き取り、交流を育むシンポジウムも会期中持たれたりして、ここに、参加することができ、大学の先生方とも面識ができてきました。
 また、メンバーの1人が、非常勤講師として、大学に関わるようになる中で、先に知り合った先生方との交流も深まっていきました。
 この中から、大学で開催された「おおくさ展」を、是非、地域に持ち出して、より身近に自分たちのことを知る機会として、改めてこの展覧会を開催しようということになり、資料やデータ、人的支援をいただく中で、新旧住民が住み生活している地域との認識をベースに、「おおくさ探険隊」主催で、1994年の秋、11月3日を中心として、前後の土日を含めた9日間を期間とする「おおくさ博覧会」を開催することとなりました。
 結成は、3月ですが、秋までの半年間を準備期間とし、プレイベントとして地域探険や自然観察会、子どもたちに向けてのとりで造りイベント、学生の参加を得ての地域の現況調査、この地域から出土する焼物の遺跡などを中心とする文化遺産の調査と確認、川池や植生の調査等のまとめ、またこれらの情報発信としてミニコミ紙の発行と配布など休日を利用して活動していきました。すでに12年の昔のこととなり、今振り返っても、あの膨大な活動をよくやれたものだと回想する程に、精力的にいろいろなことをやりました
 メンバーそれぞれの考えや意欲や関心は様々だったと思いますが、お互いが共通の体験や思考を経て、秋の「博覧会」に向けて突き進んでいったのでした
 1994年(平成6年)秋の「おおくさ博覧会」のメニューを、以下に書き出します。
・展示
 大学よりのパネル展示/国土地理院の地図による緑の変遷図(明治〜大正〜昭和〜戦前戦後〜近年)/都市計画図による土地利用図、文化財調査図、建物現況図、植生図、とくに、水(池、川)現況図、庄内川水系図、地元の支流調査図/地元のサークルの作品展(水墨画、陶芸)/川の水生動物の採取水槽展示/調査記録写真/イベント写真/地域全戸(約1万1000戸)対象のアンケート結果(フリーコメント集)掲示
・イベント
 地域の伝統無形文化財「棒の手の演技」/焼物絵付け教室/竹細工教室/パン焼き教室/フリーマーケット/野外音楽祭/野外映画祭/人形劇/朗読会/ファイヤーストーム/稲刈り後の田圃に竹を中心素材とする竹の立体造形
・シンポジウム
 テーマ=地域の未来(地元、大学、市内外よりの顔ぶれ)
・連携
 名古屋造形芸術大学の芸術祭と相互乗り入れ/大城小学校の絵画展示に合わせて、かつて生息していた植物、昆虫の写真展/光ケ丘中学校の文化祭と相互乗り入れ/小牧市市街地のギャラリーにて「おおくさ展」一部展示
・情報発信
 ミニコミ紙「おおくさ探険隊・かわら版」の発行

 こうして、「おおくさ博覧会」は、無事、盛り沢山の内容をもって達成できました。
 年を越え、改めて振り返る中で、この「博覧会」で実施したいくつかが、メンバーの思いを受けて、継続しての活動となり、現在まで続いてきています。
 それが、ミニコミ紙「おおくさ探険隊・かわら版」であり、竹の立体造形展です。この二つは、セットで今日も継続して、地域に浸透した毎年恒例の行事となっています。


竹林の再生を

 竹の立体造形展は、「バンブーインスタレーションinおおくさ」を正式名としています。
 バンブーは竹、インスタレーションは、期問限定(仮設的な)作品と説明していますが、この横文字表現は、内容をよりしっくり現わしていること、ローカルな作品展ですが、表現としてグローバルな広がりを込めてなど、いろいろ検討した上での命名です。
 では、この作品展の全体像ですが、まず、地域に勢力を伸ばし存在する竹林、しかも放置された状態で、かつては生活と密接な関係にあった里山や雑木林が、生活から遠ざかり、地下茎で広がる勢力の強い竹が、他の樹木を駆逐し勢力を伸ばしてきており、これが現在の竹林が広がる里山の風景を特徴付けています。実際に見る竹林は、まるでジャングルのように生きた竹とともに枯れた竹が林立し、先が見通せない荒れ放題の状態になっています。
 何とかこの荒れた竹林を美林に再生できないかの課題。そして、切った竹の活用、使い道がないものかと言う課題。そして、また大地に還る、自然の大きな循環に組込めないかとの思い。これらが、様々なアイデアや調整、他のグループとの連携や協働と、裾野を広げ、少しずつですが整備され、やっと昨年2004年(平成16年)に一応の形ができました。すなわち、竹の切り出しによる竹林の整備、切り出した竹を活用しての立体造形作品の制作、これは現在、幼稚園から、小学校、中学校、大学生、社会人、地域の大人のグループ、造形作家など、幅広い様々な世代や分野の個人やグループの参加による作品が出現しています。そして、作品は、稲刈りの終った田圃の中という自然の風景の中に展示、設置され、これもこの展覧会独特のものとなっています。
 ここまでには、当然のことですが、竹林の所有者や田圃の所有者の理解と了解がなくては成立しないことであり、地域の皆さんの理解と了解、さらに、地区の公民館やその駐車場の利用許可を得てこそできることであり、地域の総合力に支えられてこそ実現しています。
 今年は、名古屋造形芸術大学の授業の課題としても位置付けていただけることとなり、より、地域密着型の基盤が確たるものとなってきました。
 さて、作品制作の素材として活用された後、これらの竹は、竹炭と竹酢液に生まれ変わり生活の中で、野菜や草花の生育に活用され、また、地域を流れる川の水質浄化に活用されるようになり、竹の循環が完結できました。竹炭は、他のグループが窯をつくり、本格的に竹炭つくりができるようになり、一方で一宮女子短期大学の環境ISOの一環で、この大草の地に竹炭の窯も設けられ、学生が授業の一環として参加する広がりも生まれてきています。
 これからの展望ですが、地域に活きづく行事として、また、自然の循環の実践として、さらにこれらの成果として、美しい里山が整備され、これが「新しいふるさと」として、次世代以降の原風景となるとともに、地域から広く外へ向けての魅力ある大きく強い発信となればとの思いは広がっています。