「ふるさとづくり2005」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

地域・親・子ども 共に育とう 子育て支援
兵庫県小野市 小野託児サークル“このゆびと〜まれ♪”
手探りからのスタート

 私たちの住む小野市は、兵庫県南西部に位置する人口5万人の自然豊かな田園地帯です。昔は2・3世帯が一緒に住んでいましたが、昨今では、少子高齢化が進み核家族化になってきました。
 平成12年、小野託児サークル「このゆびと〜まれ♪」を立ち上げた当時は、「子育ては女性がするもの」「子育て中の母親は家に居て育児に専念するもの」という概念はまだまだ残っていました。
 子育て真っ最中の母親は、「少しの時間でもゆっくりと自分の自由時間が欲しい。だけど、子どもが居るから…」とあきらめていました。
 そんな中、10年ほど前に、近隣にある兵庫県立嬉野台生涯教育センターでのセミナーを受講しましたところ、無償の託児室があることに感激し利用させていただきました。すると、子どもも安心して遊んでいて親も心置きなく学習することができました。
 その感動した体験をもとに、自主子育てサークルの勉強会・幼稚園のPTA活動や講演会において、有志を募って託児をしました。徐々にではありますが託児の広がりが見えてきました。そして、「小野市のみなさんにも気軽に利用できる、託児のシステムがあればどんなにいいか…子育て中の若い母親にも積極的に学べる機会を与えてあげたい」と、子育て環境の充実する市にしたいという思いが芽生えてきました。そして、託児環境の整備を望み行政に要望しました。
 平成11年、ついに小野市中央公民館主催の“託児ボランティア養成講座”の開講にまでこぎ着けました。当時中央公民館の講座担当者が女性の方でしたので、託児の必要性を認識され、今では男女共同参画の意識が広がりつつありますが、この当時はまだまださきがけでした。この方に大変ご尺力をいただきました。「私が子育てで困ったから、子育て中は誰の支援もなく外出もままならないお母さんを助けてあげたい」「孫が誕生し子守りの役に立てれば…」と、子育てに意欲的な女性やその趣旨に賛同した幅広い年齢層の方が集まりました。
 講座終了後、このメンバーにより小野託児サークル「このゆびと〜まれ♪」を結成する運びとなり、平成12年1月、小野市社会福祉協議会のボランティアグループに登録し、無償ボランティア活動を開始しました。
 全くの白紙状態からのスタートでしたから、それは大変な作業でした。近隣の市町の託児活動をされているグループを見学させていただき、アドバイスも受けました。おもちゃ一つない状態から、メンバーの不要品を持ち寄り、一つ一つ手作りしながら、私たちの地域のニーズに一番合ったシステム作りを考えて全て手探りから始めたのです。
 大切なお子さんを預かるため責任役割の分担を明確にし、事故や怪我のない託児をするための規約・運営システムづくりには、近隣の三木市の託児ボランティアグループ“カンガルー”の多大な助言を受けました。


託児ボランティアヘの認識が深まる

 現在でこそ、行政面でも子育て支援は当たり前の時代になってきましたが、当時は「若い母親が乳飲み子を預けてまで講演会に来なくても」「最近の母親はわがままだ」等、批判の声すら、そんな意識が根強かったのです。女性のエンパワーメントを高め、男女共同参画社会の推進を要望すること自体が基本でした。
 私たちサークルは、メンバーの意識向上を目的とし、各種研修会への積極的な参加はもとより、県の男女共同参画の講座等、子育てだけにとどまらず、女性として、人として社会に関わりながらの意欲的な学習に励んでいます。
 設立後、毎年メンバーの視察研修を重ねています。
 平成12年度は、託児活動を開始するにあたり、子育て支援の充実している宝塚市女性センターの視察と託児サークルのノウハウを研修。
 平成13年度は、兵庫県立こどもの館と姫路女性センターの視察。
 平成14年度は、小野市にもファミリーサポートができればと、三田市のファミリーサポートセンターの研修。廃校を再利用し子育て支援の拠点としている篠山チルドレンズミュージアムへ視察。
 平成15年度は、多可郡八千代町立の幼保一元施設キッズランド八千代の視察。
 平成16年度は、神戸市にある子育てサポートセンター多夢の森(保育所とデイサービスの複合施設)の研修。
 平成17年度は、自閉症等の障害者の研修。
 まだまだ今後の課題の多さに気づくとともに、メンバーのスキルアップを図りたいと思っています。
 また、独自で託児ボランティア養成講座を計3回実施し、その都度あらためてメンバー自身も学習しています。受講者は、市内に限定せずに市外からも受け入れ、実際に託児活動にも参加してもらっています。
 その成果として、北播磨の市町にも子育て支援の一環として託児システムの必要性が認識され、託児が開設されたと言うニュースは私たちにとっても大変喜ばしく思われます。私たちが試行錯誤を繰り返して培ったものを、より多方面に発信していくことも今後の課題の一つだと考えています。
 また最初は、私たちの活動への理解を得るため、行政へも積極的に働きかけました。現状として市民会館・児童館・男女共同参画室・教育委員会主催行事・保健センターの検診の際の託児活動が主流です。満1歳児から就学前の子どもを2時間程度一時保育し、安全でより楽しい時間を心がけています。
 活動状況は、立ち上げた平成12年度は、会員数24名、活動回数17回、延べ活動人数71人、延べ託児人数139人。
 平成16年度は、会員数48名、活動回数70回、延べ活動人数282人、延べ託児人数1032人と大きく社会貢献できるボランティアグループへと成長しました。
 利用された子育て真最中のお母さん方から「こんな託児を待ち望んでいた」「嫁姑でIT講習会が受けられ仲良く頑張れるわ」「安心して預けられ静かに学習できてよかった」「離乳食作り講習で赤ちゃんから少しの時間解放できうれしい」との声が寄せられています。
 毎月第2木曜日に定例会を開催し託児活動の反省点や今後の課題を熱心に話し合っています。会は、@総務部A会計部B広報部C研修部D備品部E子どもの遊び部の6部会で構成。総務部は、依頼者サイドとの交渉をはじめ、活動スタッフのスケジュールの振り分け。会計部は、会員から集めた会費の管理や必需品の買い物。広報部は、毎月の定例会での決定事項や連絡事項を広報紙として作成し欠席者にもリアルタイムに情報を発信します。研修部は、会員の資質向上と親睦を兼ねた研修会を企画運営します。備品部は、おもちゃをはじめとする備品の管理と消毒作業。子どもの遊び部は、託児をする時、より楽しくてためになる遊びの研究や指導、また温もりのある手作り玩具の製作等。それぞれの部において責任を持って熱心に活動しています。
 お孫さんも成人された方、自らも幼児を持つ若いお母さん、会員自身の幼稚園児や小学生の子どもたち、トライやるウィーク(兵庫県独自の職場体験)の中学生、保育士を目指す大学生等、幅広い年齢層も私たちのグループの特色であり魅力と言えるのかも知れません。お互いに触発しあい、意見交換しあい、素晴らしい会員同士の横のつながりを見出せたことも嬉しい収穫です。今のところ、男性会員は2名ですが、男性の参加に期待するのも今後の課題の一つです。


そして これから

 小野託児サークル「このゆびと〜まれ♪」の設立当初に比べると小野市にも子育て支援に関して積極的な取り組みが見られるようになりました。また、小野市ひまわりの丘公園に児童館の建設や、社会福祉協議会のファミリーサポートセンターの設立、NPO北播磨市民活動支援センターに設置された託児室の配備には、私たち市民の意見が反映されるなど、子育て支援の輪づくりが広がってきました。
 私たちもこれに満足することなく、もっと意欲的に活動の幅を広げ、より住み良い小野市にするために、今後も多数の課題に取り組みながら、市外の団体とのネットワークづくりを進め、密接なコラボレーションを図り、新たな子育て支援の輪づくり、人づくり、まちづくりに向かってまい進していきたいと考えています。