「ふるさとづくり2005」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

生涯学習のまちづくり
山口県防府市 大道地区まちづくり推進協議会

 防府市大道地区は、防府市生涯学習まちづくりのモデル地区の指定を受け、平成13年度から3年間生涯学習を通してまちづくりに取り組んできました。その活動の状祝と、以後継続的に行なわれている活動について述べます。
 今日、通り魔や誘拐事件などが頻繁に起こったりすることや、家庭での児童虐待など、信じられない事件が絶えず報道されています。私たちのまちづくり推進協議会では、全地区をあげて、それぞれの団体が協力してできることを考え、子どもや高齢者でも取り組んでいけるような計画を立てて実行してきました。小さいことの積み重ねで、子どもたちからお年寄りまで安心して住んでいけるまちづくりを目指してきたものです。活動は、大道地区内の各団体を、大きく二つの分野に分けて協力して取り組んできました。


笑顔のあいさつ運動と体験活動

 まず、あかるい笑顔のあいさつを通して、地域の人たちとのふれあいで児童・生徒の健全育成を目指し、温かみのある住みよい環境づくりに努めることにしました。特に、小・中学生は、「おはようございます」と毎朝、挨拶を元気に交わします。ごく自然に誰にでも挨拶をします。夕方になれば「さようなら」とまた朝の調子で元気に交わし1日が終わります。この声かけは、小・中学生が、朝と夕、見知らぬ地域の人たちとも自然に挨拶を交わすことで、大人の子どもたちへの見守りがごく自然に励行されているものと思われます。大道地区の小・中学生に出会った人たちは、なんと挨拶が良くできると、驚かれる人が多く、大道自慢の光景になっています。このあいさつは、まちづくりにあたって第一に大切なものとして考えていました。そこで、この運動を大道地区の皆さんに浸透させるために、ポスターや標語の募集をしました。14年度はポスターの応募が88点、標語の応募数が195点ありました。
 そして標語の掲示・立看板の設置をし、広報紙による啓発活動を行ない、さらに17年度も新たにポスター等を作成し、地区内に掲示しました。
 誰もが参加できるものとして、あらゆる人たちとのふれあいの中での、生活体験や自然体験学習を充実させました。特に子どもたちの健やかな成長を期待して、子どもの参加を促していきました。まず、大道子ども安全マップの作成や子ども会を中心として花いっぱい運動の取り組みとして、花き生産者の協力を得て、毎年花の苗を準備して全家庭に配布したり、学校で1人1鉢を管理して花を咲かせたりしました。また、休耕田を利用してひまわりの種をまき、花を咲かせたりもしました。ちょうどそのころ、山口元気きらら博覧会が開催され、その時は、大道地区が会場への通り道ということで、各家庭で育てた花をプランターに移し変え、沿道に並べて開催を盛り上げました。これは全員参加のまちづくりに取りかかる絶好のチャンスでした。
 次に、食生活改善推進協議会を中心とした「にこにこクッキング」の開催やPTAを中心とした「馬と遊ぶ」で、近くの乗馬苑の協力をいただき、乗馬体験や馬の世話等動物と楽しくふれあう機会をつくりました。また、ふるさと探訪サイクリングの実施で、郷土の歴史を知る取り組みもしています。JA女性部が取り組でいる「イキイキ健康ハイキング」は、普段できない10キロ以上を歩くことで、途中いろんなことを体験しながら走破した満足感を感じてもらおうとしているものです。さらに且東自治会の古墳公園保存会や子ども会で一級河川佐波川での野鳥の観察会を実施しました。渡り鳥の観察や水辺の生き物の観察など普段目にしないものを、望遠鏡や双眼鏡で観察できて大変喜ばれています。また、自治会女性部と子ども会・食生活改善推進協議会と商工会等が取り組んだ「どんど焼き」など、多くの催し物に多くの団体が携わり、まちづくりの骨格となる基本活動が定着しています。
 こうして、世代間を超えて触れ合う場を数多く設け、高齢者の温かい言葉を感じたり、逆に子どもたちから元気をもらって、広く地区内の特色や文化を知ることができ、地域を愛する気持ちが沸いてきたことを感じています。なお、参加できなかった人たちには活動の状況を知らせることで、活動の大切さが伝わりかけがえのないものとなっています。
 本地域は、全国的に有名となった笑いのふるさととして、笑いの重要性をまちづくりにも大きく役立てています。それは、小学校の行事「お笑い集会」で、「わっはは」と3度笑うその笑い方を競うものです。審査は「笑い講」の人たちで行ないます。本協議会としては、「大道笑いの集い」をモデル地区指定3年間のまとめとして開催し、落語を2席おりまぜ、まちづくりスタッフによって笑いの効用なども啓発する手作りのイベントを行ないました。参加者も多く、改めて普段から笑うことの重要性を認識していただけました。
 現在公民館を中心に活動を展開していますが、平成16年に完成した大道駅の自由通路を新たなコミュニティの場として、各種イベントの関連情報を発信する場に活用しています。こうしたことで、大道老人クラブ連合会など高齢者の人たちによる駅舎の掃除、正月の門松、大道駅周辺の花壇の整備、高校、中学、小学校の児童や生徒、さらに一般の人たちの1年を通しての清掃活動などボランティアも積極的に行なわれています。
 地域の中には、「大道文楽」(人形浄瑠璃)、「代神楽舞」「国府の節」の踊りや「十二の舞」など多くの伝統芸能が継承されています。
 神楽舞は大道地域に三つあって、同じ日に三つの神社で同時に開催されています。これには、小学生や中学生も積極的に参加して一大イベントを盛り上げています。さらに中学校の文化祭で上演をしたり、運動会で踊ったり、大道地区のまつりや敬老会でも上演して皆さんに楽しんでもらっています。伝統文化(文化財)のまちとしての認識を子どもたちに理解させるうえで、地域の人たちも積極的に協力しています。


見守り活動と福祉体験学習

 高齢化社会の中で高齢者や身障者、子どもを含め、地域の住民みんながふれあいを大切にして、助け合い支え合って、明るい住み良い福祉のまちづくりを目指す活動の実施と広がりに努めています。
 これは各自治会の会長や社会福祉協議会のメンバーが大道地区内にある介護支援センターの職員の絶大な協力のもとで取り組んでいるものです。
 はじめて取り組む高齢者疑似体験などの福祉学習会では、独居老人や高齢者世帯などへの声かけ運動の必要性や、大道地区全体の取り組みの重要性を訴えています。各自治会で三世代にわたる交流の場を設けて、子どもたちや普段お年寄りと接しない家庭に、高齢者の気持ちや身障者の私生活の苦労などを、実際に疑似体験してもらっています。ほとんどの自治会で実施しており、今年で4回目の実施となる自治会も出てきており、継続的に実施することで、地区の皆さん方の認識も高まり、その重要性が感じられてきています。そして子どもたちと一緒に参加することで、地域の皆さんと協力して生きていくことの必要性を感じ取ってもらっています。
 なお、心強い福祉施設が地区内にあって、専門員の指導をすばやく的確に受けられることなど、連携が常に保たれていることが大きな成果を上げるうえに大きく働いています。
 次に、小学生と老人クラブの交流の場として、約10年間「三世代交流会」を実施しております。昔話や昔の遊びなど高齢者の人たちから教わり、現在の社会では、なかなか必要としない遊びの道具、たとえば、凧、竹とんぼ、水でっぽう、お手玉などを、実際に高齢者の指導を受けて自分で作って遊ぶことで、子どもたちも大変満足し、夢中になって遊ぶ光景が見られます。高学年では、わらじづくりに挑戦する子どももいます。1年かけて育て、収穫した米の残りの藁を使って、これこそ藁まみれになって2時間、悪戦苦闘して作り上げます。出来上がったわらじに、親と子どもたちの自慢顔はなんともいえないものです。こうした活動を繰り返し行なっていくことで、本来の助け合いの意識、地域の人たち、特に高齢者など、なかなかふれあう機会のない人たちとのつながりの基盤づくりに役立ってきたと思っています。
 さらに、約1年間かけて、人にやさしい「福祉マップ」を作り上げ、地区内の全戸に配付したことは、これまでの活動とうまく連動するものとなり、大きな成果であったと思っています。
 以上のような活動の接点をつなぐものとしては、情報紙「スマイル通信」の発行と写真でつづる発行物でした。いくら活動をしていてもただ参加者だけ知っているのでは、広がりもないし、活動そのものとしては寂しい限りです。「スマイル通信」の発行と連動して発行した「自治会だより」の写真掲示により、活動の取り組みがわかりやすいものとなって、大きな広がりを示すものとなりました。今後は、持続を図ることで、地区内における団体長会など横の連携を保ちながら、よりいっそうの成果を生み出したいと思っています。また、小規模でもいろいろな活動へ取り組むことによって地域全体が生涯学習のまちにふさわしいものになるよう努めたいと考えます。