「ふるさとづくり'88」掲載
奨励賞

魅力あるまちづくりをめざして
青森県横浜町 横浜町手づくり友の会
 青森の北東部、下北半島の首位部に位置し、東西12キロメートル、南北23キロメートルと細長く、西方はむつ湾に面し、日本三大霊場のひとつである美しい釜臥山、恐山が展望できる。東部は下北半島の背深山脈を隔て東通村、6ケ所村と相対し、また、北はむつ市、南は野辺地町と隣接している。
 町を縦貫する国道279号線は、国道4号線と下北半島を結ぶ基幹道路で、その重要性を増している。集落も国道に添い南北に点在し、海の幸、山の幸に恵まれたところで、産業別にみると、農業、林業、漁業が全体の3分の1を占め、そのなかに、就労婦人および家族従業者の割合が非常に大きいウェートを占めているといえよう。また、出稼ぎ家庭が人口の10%にもおよび、約650人の婦人が夫の留守を守っている。


手づくりする喜びを

 横浜町は、半農半漁で年中忙しく、衣生活はもちろんのこと、食生活をみても「手づくり」する心がうすれ、昔のように「うちの餅コ食べてけう」という隣近所の交流もあまり見られなくなっている。また、ホタテ、ナマコのほかは、これといって土産品のない町でもある。
 女が手づくりする心をなくすることは「子育てにも悪影響だ」ということから、手づくりする喜びを味わえる活動を通して、地域の“和”をはかりたい願いを胸に、59年6月、主婦6名で会をつくり、今までの承りの学習から、実践活動へ歩みを向けたのでした。
 そして、翌60年2月までは「べこ餅」の絵柄の工夫に励んだ。やがて、会員も12名になり、食品添加物の恐ろしさを学び手づくりの良さを確認しながら「生きがい」にもなり、手指を使うことはボケ対策にもなる。もっと仲間を増やそうと、町の広報紙を利用して会員を募集した。


婦人の力を合わせて地域づくり

 現在は40名と仲間も増え、豊かな地域づくりと婦人同志の親睦を図り、力を合わせて課題解決の方向を見い出し、実践活動に移すことを指針としており、その具体的な実践方針として、次の4項目をかかげている。
 @運動の拡大と発展を図るために広報活動に力を入れ会員の増員を目指す。
 A地域課題の発掘に努めるとともに、役員の資質向上を目指し、研修会を開催。
 B高齢者意識調査を通じて私たちでできる「ボランティア活動」の推進。
 C地域活性化運動の推進
なお、粘り強く継続活動をするための活動の方向として
 @会報の発行       年2回
 Aリーダー研修会     10月上旬
 B高齢者の意識調査    8月から10月
 Cべこ餅づくりおよび販売 毎月
 Dこうじづくり      2月から5月
 Eみそづくりおよび販売  4月から6月
 F上手なゴミの出し方についての対話集合 3月
 G料理講習会       年2回
 H健康まつり、産業まつりへの参加(即売活動および活動PR)
 I家族バス旅行      11月
 Iそのほかみんなで望むものおよび関係機関が主催する事業へ参加
 これら11項目を重点に活動し、生涯学び続ける態度を醸成している。
 これまでの実践活動を2、3紹介するとしよう。


運動の輪を広げよう

 より安全でより楽しく暮らしやすい地域づくりをめざして「トレイパック廃止運動」「せっけんを使う運動」「自然食品の手づくり運動」「高齢者の生活技術伝承運動」などを進めて3年になる。なかでも不燃ゴミ量の軽減と省エネの立場から取り組んだ「トレイパック廃止運動」は、ゴミに関する学習から始まり、ゴミ処理場の見学、トレイパックされている品目調査、そして対話集会と進めることができ、大きな成果をあげることができた。それは業者との間で廃止品目の合意が成立したそのことよりも、「物言わぬ町民性」のなかで自分たちの目標を決め、自分たちの力で行動できたことが何よりの収穫であった。そして、地域にあった方法で、毎年1回は対話集会を開くことの大切さも学んだことは言うまでもないことである。


べこ餅に愛をこめて

 リフォーム、料理、こうじ、みそなどを作ってきたが、とくに運営費ねん出とふるさとの土産品の工夫もかねて、毎月定期的に米粉でつくる“べこ餅”(牛が腹ばいになった姿に似ているところからその名がある)を手習いし、即売している。会員以外の方でも無料で習うことができ、はじめた頃は、130名も集まり実習できないこともあった。そこで、希望に応じて各町内を巡回したところ、各町内40名以上も集まり、仕組んだ絵柄が出たときなどは、集合所の天井が割れんばかりの歓声があがり大好評だった。
 3年目を迎えた今では道ゆく人、が、手習いしたべこ餅を出稼ぎ先の夫に送って喜ばれた話、遠く県外就職しているわが子に送ったところ、「お母さんがつくったの?」と驚いて電話がかかってきた話など、忙しいこともしばし忘れて話し込む姿も見受けられるようになった。
 仕組む絵は、抹茶、こしあん、山ブドウ、カボチャ、卵黄、赤梅酢などで染めた生地で松、椿、菊、あやめ、結び、町章マークなど10種類以上あり、数回習っても忘れるほどである。気さくに交流できる、そんな“ふれあいの町づくり”にも一役買いたいという熱意は、地域の特産品開発事業とタイアップして普及講習会と即売活動に追われた3年間であった。
 61年度は、そのべこ餅を全国の郵便局ネットを通じ、ふるさと小包便システムで全国にPRしてもらうための対応にうれしい悲鳴をあげた1年であったが、今年はその注文が県内をはじめ、北は北海道から南は九州の全国各地から寄せられ、餅をこねる会員一同も一段と腕に力を込め張り切っている。
 そのほか米消費拡大事業の1つとして「絵巻き寿司」の講習会を4回実施し、会員の技術向上に力を入れた。横浜町産業まつり会場で2日間その腕前を発揮し、実演即売コーナーを設け、多くの町民にPRした。カボチャ、ホウレン草、インゲン、ニンジン、桜でんぶなどで染めたごはんをのりで巻いてつくる「あげは蝶」「でんでん虫」「椿・挑・松」などの絵に人気が集中し、購入希望に追いつけない状態であった・その後、作り方の受講希望が多く、全員募集を兼ね講習会を実施したが、各地区の学習発表会や遠足は絵巻き寿司のお弁当で子供たちの間で大好評。冬は誕生会やひなまつり、お別れ会などに腕を振ろうと、張り切るお母さんたちの希望で講習会は引っ切りなしに続いた。


ベテランの技を生かして

 @昼食は学校給食、おやつは既製品のスナック菓子と、親が作って食べさせることが少なくなった生活を見直し、郷土に伝わる野菜を多く利用した栄養的にバランスのよい料理を子供たちに伝えよう。そして、「既製品に汚染されない生活をとりもどそう」という目的で技術習得に励んだ「郷土料理」については、ベテランの高齢者を講師に依頼し老人クラブ員と一緒に試食会を開き交流した。
 祖父母と一緒に生活している場合でも「今の子供は昔の料理を食べないから」と郷土料理を作らない傾向がうかがえた。交流会で話し合った結果、「こんなに体によいのであれば、遠慮しないで進んで手づくりする」ということだった。今後は、食品の安全性の学習と合わせて「親子料理教室」を開催し、ふるさとの味づくりにがんばりたいと思っている。
 A講習会で得た技術で、北部上北地域特産物利用料理コンクールで過去3回金、銀、銅各賞をいただいたこと、多目的集会施設「洗心閣」落成記念のときの祝賀用食事を200人分手づくりしたことも自慢の1つである。
 B高齢者との対話を通して「高齢者の社会参加を推進する」ことを目標に、高齢者の意識調査を実施しようという機運が盛り上がり、高齢者のひとり暮らし(65歳以上)ふたり暮らし(共に70歳以上)者の名簿、調査票が完成した。今後行う聞き取り調査・分析の結果から、私たちでできるボランティア活動を策定したい。策定後の計画の1つとして、正月に無料給食サービス、手づくりみそ1キログラム、けの汁の提供を考えている。


町づくりの起爆剤に

 開設当時のよちよち歩きから満3年を迎え、先人の知恵を味に生かしたべこ餅は、おらほの一町一品となり、弘前駅前にあるイトーヨーカ堂弘前店のふる里コーナーで1週間実演即売したときには、野坂和一町長が直接売り場に立ち、町おこし、町活性化の突破口を見つけようと、消費者とじかに接しながらニーズを把握した。
 また消費傾向調査では、@真に地域の特産であるA手づくり、本物商品であるBうまいCふるさとを感ずるD地域の産業として安定感がある―などの声も寄せられている。
 女性はとかく趣味の学習には懸命になるが、「今地域で自分たちは何をなすべきか」となると、意欲は全くなく、地域課題の把握、問題解決の行動となると消極的である。身近な活動を通して女性が一歩一歩着実に「生涯学び続ける姿勢」の掘り起こしをしたい。「学ぶ姿勢」は「生きがいを生む」力ともなるからである。
 今後も「横浜町民の誓い」「横浜町民読本」の精神を体し、活力あるまちづくりをめざし、手づくりの友の会がうるおいとまとまりのある町づくりの起爆剤となるよう意欲的に取り組んでいきたいと思う。