「ふるさとづくり'88」掲載

「秋田カエル村」の軌跡
秋田県仙北町 秋田カエル村
出稼ぎの多い町

 カエル村のある西仙北町は、秋田県の中央部、仙北平野の北西部に位置し6町村と隣接しており、東西に約21キロメートル、南北に約16.6キロメートル、面積167.1平方キロメートルの範囲に広がる蝶の形をした町である。町面積68%が林野で民有林は96%にのぼる。中央部を縦貫する秋田県鍛大の一級河川、雄物川は、町の基幹産業である農業に多大な恩恵をもたらす一方で、数年ごとに氾濫し脅威ともなっている。古くから出稼ぎの多い町であり、近年でも数百人の働き手が町外で暮らす、二重家庭をかたちづくっている。
 教育文化的な環境としては、中央公民館を中心にした生涯学習や、社会福祉協議会による“ぬくもりのある町づくり運動”などが展開され、全県的にも大きな評価を得ているが、湿性化や住民の多様化にともない活動への青少年、婦人の参加を困難にしつつあり、旧来の団体活動は停滞気味である。


名称を「金曜会」から「グループ21」へ

 昭和55年に町主催による『青年教室』があり、有職青少年の集いという名称で実施された。
 その交流のなかから互いのつながりを大事にし、何かをやっていこうという声が沸き上がり、「金曜会」という名称の会が発足した。毎月第1金曜日を定例会とし、種々の事業が計画された。最初に計画したのが、わが町を知ろう、歩こうということでクリーンアップを兼ねながら歩こう会を実行した。その収益金で老人憩いの家ヘカラーテレビを寄贈することができた。
 仲間意識の高まりのなかで、いろんなイベントが組まれた。列挙すると「西仙北競歩大会」「元旦登山」「雪おろしボランティア」「雄物川ライン下り」「老人ホーム慰問」、刈和野大綱引きを盛り上げる「かまくら祭り」「ドンド焼き」「宮城県南方町青年団との訪問交流」など、止めどもなく活動を続けた。その基調として流れるものは、地域を見直し、ほれ直し、性み続ける土地であることの認識作業であり、地域とのかかわりにこだわったものであった。しかし順調に推移してきた活動も、次第にかげりがみえてきた。
 発足当時30名ほどではじまった全員は、その後女性会員の婚姻による減少を補うことができなかったのと、当初の活動パワーが次第に薄れてきたため、十分な事業が組めなくなり、会自体が低迷してきた。
 厳しい状況をふまえ、新たな活動に結びつけるために、名称を「金曜会」から「グループ21」と変え、21世紀を目ざした地域づくりの仲間づくりを目指した楽しい会にすべく再起を図った。
「グループ21」のあり方として、行動範囲の拡大と国際化をも考えた豊かな発想を基本にした。これまでの活動を振り返るなかから、自らの生活や考え方を変える(カエル)必要がありはしないか、という視点に立つことになった。


「カエル村」の創設

 地域を守り、育てる活動をより力強くすすめることを念頭に、また、山間部より流れる人びとを止めることはできなくとも、流れに条らないことはできる。この地にとどまって生き続けることの重要性を認識している者たちがカエル行動をともにする“場”を建設するに至った。「秋田の自然とまごころに触れ、都会に住む人に命の洗濯をしてもらおう」と、趣旨に賛同してもらった方たちの協力を得て、場所は町の中心部よりもっとも遠い、西南方面に位置する大沢郷に建設した。山林約40ヘクタールの何もない山(個人の山)を借り受け、メンバーと地元の住民の協力のもとに、昭和58年10月に「カエル村」は完成した。
 カエル村という名前には、自然にカエル(帰る)、自己を見つめて考え方をカエル(変える)などの意味を込めている。そして何らかの活力に結びつけようとさまざまな活動を展開してきた。ひとつには、秋田にカエルというPR活動はさまざまな機会に行ってきた。また、有害添加物にサヨナラして自然にカエル食物の普及を行い、地域の素材を生かした古くて新しい祭りの掘り起こしにも力点をおいてきている。
 カエル村が取り組んだ主なイベントとして「スノーピラミッド世界大会」と「第1回ミニ独立国冬季オリンピックみちのく大会」がある。「スノーピラミッド世界大会」はスコップ一つで制限時間以内に雪を積み上げその高さを競い合うもので、外国からの留学生の参加も定着している。
「第1回日本ミニ独立国冬季オリンピックみちのく大会」は、昨年誘致したもので、カエル村が実施主体となり、町民各層からなる実行委員会によって運営された。歓迎レセプションにおいては、婦人の手づくり料理によるもてなしは、全国ミニ独立国の参加者からたいへんな好評を得た。また、マスコミの報道もあり、県内外にPRもできた。
 このようにカエル村では外に向かってはイベントの実施、また内部では、村の立地条件を生かし、ふるさと村的な要素をふんだんに取り入れ、人が人として本来的な生き方を確かめることのできる環境づくりを手がけている。
 活動仲間も大方家庭をもち、30代の働き盛りとなり、時間的にも社会的にも何かと制約の多い世代になってきている。発足当初の頃は「若いもんが好きなことをやっている」といわれ、これまでも、それを払拭できない面が多くあったが、これからは青壮年、高齢者をも含めた幅の広い影響力のある機能集団に脱皮を計りたいと考えている。
 何よりも、子供たちを巻き込めるような活動内容を市税していくことを検討している。今後はモニュメントの設置や、子供たちの絵画・創作などが生かせる「子供博物館」の建設、あるいは、カエルにつながる作品を展示する「カエル美術館」の設置に向けて活動したいと思っている。
 変な地域エゴや、しがらみから抜け出し、新しい手法で創造する地域社会を目指したい。