「ふるさとづくり'92」掲載
<集団の部>

いきいきふれあいボランティア
山梨県小淵沢町 小淵沢ボランティアセンター
はじめに

 高齢化の著しい小淵沢町では、ボランティアセンターを中心とした町民参加のボランティア活動が盛んに行われてきました。しかし、町内の各団体の活動には、横のつながりが少ないなどの課題を抱えていました。この課題を克服すべく、町内14地区にある公民館分館を利用したネットワークを作り、町民だれもが参加できるボランティア活動を目指して取り組んできました。


高齢化の進む小淵沢町

 山梨県小淵沢町は、長野県境にある県北部の町。八ケ岳南ろくの観光地として知られていますが、最近はリゾート開発が進み、新しいペンションや住宅の建設が盛んです。都会から移り住む人が増えており、地域社会についての住民の考え方も変わりつつあります。
 町の人口は5,484人で、65歳以上の高齢者比率が19.9%に達しており、国や県よりも10年から20年ほど高齢化が進んでいるといわれています。こうした状況の中で、これまでも行政と住民が協力しあってボランティア活動を進めてきました。
 町には社会福祉協議会という組織がありましたが、ボランティア活動の実践母体になりきれなかったり、社会福祉委員制度があっても機能していない現状もあり、新しい推進母体、実践集団を形成する必要を感じていました。


ボランティアセンターの完成

 小淵沢町内のボランティア有志が行った老人実態調査によると、87%の老人が「住み慣れた地域で生活したい」、100%の人が「自宅の畳の上で死にたい」と願っていることがわかりました。この結果を受けて、町の社会福祉協議会は、自立、独立して、横のつながりをさらに強化して活動しなければならない現実を直視しました。
 まず手始めに、昭和57年に社会福祉協議会を法人化し、会費を増額することによって財源を確保しました。また同時に、スタッフの充実も進めました。
 社会福祉協議会を中心に話し合いを続け、昭和62年4月には有志8人が集まり、小淵沢方式のボランティア活動の推進体制を結成しました。「ボランティア活動にはリーダーはいらない。一人ひとりが気づいた時に行うのが本当のボランティアではないか」。この考えのもとで、町民の中から実践グループのコーディネーターを決めました。
 さらに、行政との話し合いでボランティア活動の拠点づくりも進め、町民誰でも集まれる場所として同63年7月、有志の手でボランティアセンターを完成させました。


公民館分館福祉部の設置

 ボランティアセンターの完成で、町のボランティア活動の拠点が定まったわけですが、ボランティア活動をどう実践していくかが問題となりました。社会福祉協議会の組織、福祉委員制度があっても、企画、実践母体としては弱かったのです。
 そこで、私たちは、これまでの福祉委員制度を拡充、発展するという形で、町内に14ヵ所ある公民館の地区分館に福祉部を設置して、分館を拠点とした日常的な福祉活動のネットワーク作りを目指しました。
 ばらばらに活動している各地区の愛育班や栄養改善推進委員、民生委員、婦人会役員、保健婦などが、地区分館福祉部のメンバーに加わりました。各分館単位で横のつながりを強め、助け合いながらボランティア活動を進めようという試みです。


公民館分館を通じたネットワーク

 公民館分館では、地域のボランティアメンバーが中心となって活動を進めました。各分館からは、デイ・サービスのスタッフを選び出し、お年寄りの1日介護にあたりました。各分館単位で、地域のお年寄りを対象としたアンケートを取り、各種福祉講習会(ボランティアスクール)の開催や情報提供などを進めました。
分館をボランティア活動の単位とすることで、地区ごとに、どんなお年寄りがどれだけいるのか、一人ひとりのお年寄りがどういった介護を必要としているのかを明確につかむことができたのです。さらに、各分館同士が定期的に情報交換を行うことで、ボランティアのスタッフヘの活動の刺激となりました。
 ボランティアセンターでは各種の講習会などを開き、参加者が地元の公民館分館で学んだものを広げます。公民館分館のネットワークは、ボランティアという言葉のなかったころから、「みたり、みられたり」として行われていた、地域での助け合いの慣習を見直すことにつながったのです。


自分たちの福祉

 ボランティアセンターを中心として、各地域の公民館分館ヘネットワークを広げた活動の結果、各地域の住民に、福祉の問題が身近な問題として感じられるという効果がありました。様々な活動を通してボランティアに対する町民の関心が広がり、理解が深まったといえます。
 ますます高齢化が進行地方社会のなかで、福祉の問題を他人事、「向こう岸」の問題としてとらえるのではなく、自分たちの福祉、「こっち岸」の問題として理解する必要を感じています。自分たちの福祉として自分たちで地域を耕し、ふれあいを深めながら、地域に根ざした活動を進めていきたいと思っています。