「ふるさとづくり'94」掲載
<集団の部>ふるさとづくり奨励賞

高齢者問題への取り組み
福島県・会津若松市 会津若松中央生活学校
活動の動機

 昭和58年当時、本市にはまだ特養1ヵ所、養護老人ホーム1ヵ所、ショートステイ4床があるだけで、軽費老人ホームA、B型も有料ホームもありませんでした。また、車椅子で乗れる車もバスも無く、老人や病人の通院は大変困難な様子でした。
 私達の廻りには、高齢者だけの家庭やI人暮らしの老人も多くなり、そういう人たちの日常生活におけるさまざまな問題が生起しており、「なんとかしなければ……」と考え、私たちはこの問題に取り組むことになりました。


活動の内容

(1)諸調査やPRの実施
 私たちは先ず、高齢者のかかえている問題を総合的に把握するため、「高齢化社会における生活状態調査」を実施してみました。
 ここからとらえた問題点によって、高齢者の食事に関するPRチラシ「糖質・塩分のとりすぎに注意しましょう」や会津若松市芦の牧ホームで得た「献立表」を配布したり、市民生活展において実際に献立を作るなどして啓蒙につとめました。
 老人ホーム問題については、平成元年度と4年度の2回、アンケート調査を実施しました。その結果は、老人ホームに入居したいと思う人が増えていることが分かりました。そこで私たちは、どんな施設が望ましいのかを知るために、先進地や施設を実際に視察(自費)する
ことにしました。
(2)先進地・施設の視察
 昭和58年、東京都東村山市の3ヵ所、同60年、静岡県浜松市の軽費老人ホーム「もくせいの里」、61年、甲府市の特老ホーム「桜井寮」、養護ホーム「春風寮」、62年武蔵野市福祉公社を。63年、町田市在宅福祉サービス公社、平成元年、横浜市の特養「芙蓉苑」、清瀬市の「信愛苑」、茅ケ崎の「ビバリーコート茅ヶ崎」を。2年、長野県軽井沢の「独居老人集合住宅」を視察しましたが、いずれも得るところが大きく、感心したり心うたれたりうらやましく思えたりしました。
 この中で、横浜の「芙蓉苑」の長田理事長(横浜上大岡の長田病院長)は、会津若松市のご出身で、「この次は会津若松市に建設予定」と話されておりましたのに、その後、ご自身が大病されてしまったことは誠に残念でなりません。
 これらの実態調査や視察で得たことは、その後の私たちと行政や関係者等との対話集会の上で貴重な参考資料となりました。
(3)対話集合の実施
 対話集会については、市長さんとは毎年1、2回行っており、福祉行政等について具体的に話し合っております。
 そのほか、福祉協議会や民生委員、老人相談員、市議会議員等の方々とも話し合いを持って、問題解決の方途を見出すために努力しております。
 こうした対話集合によって実現したのが、「福祉タクシー」です。


運動の成果

(1)福祉タクシーの実現
 昭和63年、タクシー会社5社と対話集会を持ち要望書を提出、その後、タクシー会社、行政、市議会関係者との対話集会を実施して理解を求めてきました。タクシー会社事業本部長(5社代表)や各会社社長は、何度も仙台運輸局に足を運ばれ努力してくださいました。その結果遂に、平成元年4月、日本では3台目という西ドイツのベンツによる車椅子や救急設備のついた“福祉タクシー”を実現していただきました。
 タクシー会社では、4人の専門乗務員を訓練してくだされ、料金は大型車並み(時間併用)で赤字覚悟で運行してくれましたが、私たちは、ポスターやチラシを市民や病院や医師会、ロータリークラブ等に配るとともに、テレビでも取りあげてもらい、また市民生活展では当該自動車(実物)を展示してもらってPRにつとめました。
 平成2年には、1年間の利用実績と利用者のアンケートを持って、市の一部補助をお願いするとともに、市長さんと議長さんに福祉タクシーを利用する寝たきり老人への補助金交付についての陳情書を提出しましたが、これは採択されました。
(2)福祉ペンダント
 一人暮らしの老人がいざという時、電話では支障があるので、福祉ペンダントの交付をお願いしてきましたが、今では100台程になり他市より多い数になりました。
(3)訪問医療
 私たちは、以前から大病院に高齢者のための訪問医療をお願いしていたのですが、本市の竹田病院では「訪問医療室」が設置され、医師1人、ベテランの看護婦3人に、車1台があって、対応してくれています。往診料は通常は保険でよいのですが、遠方の場合ガソリン代が少々負担されるということです。こうして末期のガンの患者や寝たきり老人の介護、生活相談等に24時間体制をとって対応してくれています。
(4)福祉サービス
 これまでの行政との対話により、デイサービス、ショートステイも増えてきました。また新しく建て替えられた市営住宅(7階建て)の1階部分に老人が入居できる施設(シルバーハウジング)もとり入れられるようになりました。
 また、来年3月には本市に特養老人ホームも出来ることになりました。これは新生会佐藤病院と行政との話し合いが不調に終り、一度断念されたのを、私たち中央生活学校が橋渡しをして建設されることになったのです。完成すれば80人の方が入居されますし、ショートステイやデイサービスも今の倍ぐらい利用されると思われます。さらに、ここは敷地も広いので、私たちの願いである特定有料ホームも建てられると期待しています。


今後の課題

 これからは、高齢化はますます進み、老夫婦世帯や1人暮らし老人がふえてきます。老人が老人を看る時代になりました。
 しかし、いろいろな高齢者向けのサービスのあることも知らないでいる方もたくさんいます。福祉タクシーのあることを知らない人もいます。私たちはこれらの人びとにあらゆる機会を通して周知をはかり、健康で生きるための助言やまだまだ足りないサービスや施設の充実のため、市民と行政のかけ橋となり、住みよい地域社会づくりに活動を続けています。