「ふるさとづくり'95」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

みて、さわって、つくらんで、こくふ街角博物館
徳島県国府町 阿波こくふ街角博物館運営委員会
 “阿波こくふ街角博物館”の生い立ちは、国府町商工会産業観光委員会で活力に欠けるまちの活性化を議論したのが発端だった。昭和42年に徳島市に合併した人口24000人の市西端の地域だ。議論を重ねるうち「街角博物館」構想が浮かび、徳島市や町内各種団体の理解と協力で、昭和63年4月30日、連休に合わせて13館と1ヵ所が一斉にオープン。この13館長と1ヵ所、18人の運営委員会(代表・長尾籐太郎さん)が運営母体だ。


生きた文化や歴史が身近に感じ

 街角博物館は、どこにもみられるような工場や民家の住宅の中に、展示したり体験出来るスペースを設け、気軽にみたりさわったり作ったりして、生きた文化や歴史を身近に感じてもらおうというもの。全館無料で大体常時開館されている。それを紹介してみよう。
 阿波木偶(でこ)館は、浄瑠璃の世界だ。国府町が木偶作りの名工を数多く輩出してきた「人形師の里」として、ロマンを秘めた浄瑠璃人形を全国に供給して来た歴史を伝え、今も彫り続ける人形師「人形恒」(田村恒夫さん)の工房である。初代天狗久の碑は、鮎喰川堤防沿いにあり、天狗久の工房(跡)は吉岡久治さん方にある。人形師「天狗久」の旧居は、往年の「人形師の里」を象徴するかのようなたたずまいで、工房も当時の雰囲気を漂わせている。近くには、天狗久の作品に感動した作家の宇野千代さん建立の顕彰碑が光る。宇野さんは、この地を足しげく訪れて「人形師天狗屋久吉」を著し、名匠ぶりを世に喧伝した。
 阿波の藍染・しじら館は、織工房・藍布屋など4者による4館で、県無形文化財指定の藍染めの技法を見学したり、参館者自身の手作り体験もすることが出来る。阿波の名石・ひょうたん館は野々瀬光夫さん方にある。四国三郎と呼ばれる吉野川や勝浦川、那賀川、海部川などの河川から取れる原石を丹念に研磨した名石が陳列されている。


特産品あゆの館などもあり人気を集めている

 吉野川や鮎喰川は豊富な水量に恵まれ、大規模な鮎の養殖と生産高は全国一。徳島鮎北部協同組合の鮎の館では、新鮮な生鮎や冷凍鮎、甘露煮、姿焼きなどを即売しているし、県養蚕企業組合では、蚕(かいこ)の館を開いている。横山勤一さん方にあるのは、阿波藩主峰須賀家ゆかりの品々を集めた古美術民芸館・卍堂。農事放送農業協同組合のCATV館は、加入数3600世帯、県下一の最新設備と規模を誇る。その他にも、バイオテクノロジーを駆使して作る洋らんの館・東条園や四季の草花館・美馬園芸場と多彩を極めるのである。