「ふるさとづくり'96」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

万葉火をモチーフにまちおこし
広島県安芸津町 万葉火実行委員会
 ふるさとにゆかりの歌が万葉集に残っている。この“ふるさとの誇り”をなんとか地域づくりに結びつけられないものか。万葉火実行委員会(代表・土井則行さん、メンバー58人)が昭和63年に発足した。当初、風早地区の有志20人が集まって、京都の大文宇のように山の斜面に「万」の字の送り火をたこう。こんなアイデアから始まった活動は、現在会のメンバーも58人に増え、イベントは町民挙げての祭りに発展し、住民連帯の絆となっている。


万葉火実行委員会の発足

 広島県安芸津町は、瀬戸内海に面した温暖な港町である。三津湾にはカキ筏が洋かび、後ろの丘陵には畑が広がる、海、山の幸に恵まれた地域である。そんな安芸津町にゆかりの歌が、万葉集に2首残されている。住民の誇りともなっているこの万葉歌にちなんで、みんなで何かをやってみたい。そんな思いから同会は出発し、最初の取り組みが「万」の字の送り火の実施であった。
 しかし、薪は、山火事になったら、地主の許可は得られるか等の問題が持ち上がったが、土地の提供にめどがつき、京都大文字の研究に出かけたのである。費用は町の町起こし事業担当者と相談した。そして、翌平成元年、このプランは安芸津町「町づくり推進事業」に採択された。山腹に横58メートル、縦110メートルの「万」の大文字をつくろうと、次々仲間が増え、団結の輪が広がっていった。


新たな地域文化の創造へ

 翌平成2年からこの「万葉火」を中心に、万葉の里づくりのイベントを開催してきた。この町民あげての取り組みが、今では毎年恒例になった「火とグルメの祭典・万葉の里あきつフェスティバル」である。
 万葉火の点火を中心に3日間、メイン会場の広場には野外ステージ、展示・催し物のテント、物産店、食堂の出店も加わり、にぎやかな祭典が繰り広げられる。さらにタイトルにもある「グルメ」は、サブ会場にある。「野の幸めぐり」「海の幸めぐり」「山の幸めぐり」「杜氏のふるさとめぐり」と銘打ち、見学・体験を盛り込んだツアーを組む。町内の各地で歴史・特産・特技を生かし、お客さんに喜んでもらおうと繰り広げているこのフェスティバルには、毎年3〜7万人もの参加がある。さらに、万葉の里として「万葉短歌大会」の開催や、太鼓のグループも生まれるなど、新たな地域文化の創造にと発展しつつある。