「ふるさとづくり'97」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

杉原紙の里から情報発信
兵庫県加美町 加美ふるさと塾
 まちを足下から見つめ直し、楽しく地域を学ぶ、まちおこしの仕掛けをしていく、情報発信していく-こんな目的で町民自らが組織を作った。平成5年6月に発足した加美ふるさと塾(代表・吉田和夫さん、メンバー25人)である。まず、まちのことを学び、地域資源を掘り起こすことから始めた。加美町が日本の和紙のルーツともいわれる「杉原紙(すぎはらがみ)」発祥の地であったことから、和紙の里づくりを目指した。全国各地のふるさと塾とネットワークを持ち「広い視野でローカルな行動」を合言葉に町づくり活動に励んでいる。


地域資源の掘り起こし

 かつては播磨紙と呼ばれ、奈良時代には生産量、質ともに日本一とまでうたわれた天下の名紙「杉原紙」は、現在は町立杉原紙研究所で、昔ながらの技法によりすき続けられている。加美ふるさと塾の取り組みは、これを住民サイドからバックアップすることから始まった。
 まず、杉原紙のすばらしさをきちんと語ることのできる町民を1人でも多くつくるため、町民を対象にした公開講座「加美ふるさと講座」を年4回開講した。少しずつではあるが、町民の間に杉原紙への関心と認識が高まってきた。塾では、和紙の学習会を開く傍ら、休日を利用して全国の紙すき産地を訪ね歩き、グローバルな視点で杉原紙を見つめるようになった。産地同士の交流も盛んになり、全国の紙すき愛好家たちが年1回集まる研修交流会「全国手すき和紙青年の集い」にも参加、徐々にネットワークの輪を広げていった。


加美町から全国へ情報発信

 和紙の里として町内すべての家庭に「こうぞ」を植えようと、「こうぞの全戸1株運動」を発案。メンバーが苗木を育て、町内すべての家庭(1,896世帯)に2年がかりで1本ずつ配布した。これにより町内産の良質原料の自給率が上がり、杉原紙研究所からも感謝されている。住民の心のこもった手すき和紙は質的にもひと味違うという。
 さらに、絶版となっていた名著『杉原紙-播磨の紙の歴史』を町民から募金を募るというユニークな方法で再刊した。専門雑誌やダイレクトメールで紹介したところ、各地から予約が殺到し、全国に向け情報を発信することに成功した。
 また、子どもを対象にした「杉原紙年賀状全国コンクール」は、特産和紙を現代生活の中で再発見してもらおうと企画、たくさんの応募があり大好評である。杉原紙を大切に、そのすばらしさを町民が誇りに思うふるさとづくりは、いま着実に根を下ろそうとしている。