「ふるさとづくり'98」掲載
<集団の部>ふるさとづくり大賞 内閣総理大臣賞

未来県はなやま村のパワーコミュニティ
茨城県日立市 塙山学区住みよいまちをつくる会
企業城下町のはなやま村

 「陽の立つさま領内一じゃ」その昔、水戸黄門が諸国漫遊の折、太平洋から昇る朝日を眺めて一言ったことから、その名がついたといわれる茨城県日立市。世界的企業日立製作所発祥の地で、同社の伸長とともに全国からたくさんの人が集まり、典型的な企業城下町となった。最近、人口は20万を少し割った。
 塙山学区住みよいまちをつくる会(通称はなやま村)は、小学校開校に伴い、80年(昭55)に発足。2500性帯、8000人の90%以上が居住歴40年以下の新興住宅地である。
 1997年6月8日(日)決晴。午前6時、小学校の校庭で地区対抗早朝ソフトボールリーグ戦が開幕、50名が参加。6時30分、同じ校庭の片隅で、気功と太極拳をミックスしたような中国の健康体操「練功18法」に20名が集まる。7時、健康部の「日曜ウオーク」の初日。体脂肪率などを測ってから学校のマラソンコースを3周する。8時、恒例の「クリーン塙山デー」に学区内の子どもと大人1500人が汗を流す。10時、塙山コミセンで出あい局がさんさん祭りの打合せ。午後1時、人財部のリーダー研修会に副部長以上の40名が出席。4時からの交流会は例によって7時まで続く。塙山の日曜日は朝から賑やかである。今年も忙しくなりそうだ。


草創期からパワー全開

 コミュニティづくりはまず住民が顔見知りになることからと、住民レク大会、夏まつり、不用品交換市「ゴヂヤッペ市」などのふれあいを深めるイベントや、まちをきれいにする環境美化活動などを進めてきた。また、会の広報紙「かわら版」も発行、多くの住民に参加を呼びかけてきた。かわら版はその後休むことなく毎月発行し、現在194号を数えている。
 このほか、塙山コミュニティセンターの建設、塙山郵便局の誘致、街灯の増設、60代の地域の友だちづくりと奉仕の会「ふれあい60」の発足、まちづくり「進歩住夢(シンポジウム)」の開催、コミュニティ論文募集、10年の活動記録「塙山のサザエさん」の出版など、塙山オリジナル事業も精力的に手がけてきた。
 「はなやま修理公園」建設もその一つ。ごみ捨て場になっていた溜池を、学区内の諸団体が連名で市当局に要望して公園にした。その名称は350年前、水戸藩の悪税にあえぐ農民を救うため直訴して処刑された当地の義民・照山修理の名を残そうと命名した。
 とくに、塙山コミュニティセンター(塙山コミセン)の建設は、住民だけで特別委員会をつくり、請願、陳情、署名運動を続け、わずか3年で実現させた。お陰で塙山の活動は一気に加速することができた。この市内第1号館の塙山コミセンの好実績は、日立市のコミユニティ施策を転換させるきっかけとなり、その後、市内に8館も建設されるところとなった。


手づくりコミュニティプラン

 塙山は住民意識調査が好きである。これまでに5回の調査を行った。配布、集計、分析などの作業はすべて自前のボランティア。そのデータをもとに組織の改革と民主的運営、各種イベントの見直しなどを計画的に進めてきた。なお、第4回、第5回の調査には小・中・高校生にもアンケートを行い、プランに反映させた。
 「まちづくりはイベントをやることではない」。あるリーダーの発言をきっかけに、88年(昭63)まちづくりの長期計画「塙山コミュニティプラン」を策定した。プランの柱は、(1)ごみのない花いっぱいのきれいな塙山、(2)健康で安心して暮らせる塙山、(3)たくましい塙山っ子づくり、の3つ。そして、これまでのイベント型活動から365日の日常活動型へ転換することをきめた。


365日型活動の成果

 プランに沿い、花と緑の部を設け、花いっぱい運動を毎日進めた結果、学区内外から「花のはなやま」といわれるようになった。1人暮らしのお年寄りなどを手助けする、地域の支えあいシステム「エコークラブ」も発足した。「青少年育成推進会議」では、各種団体が話し会い連携を深めた。その結果、PTAや子ども会の役員経験者からコミュニティリーダーになる人が増えた、などの成果も上がった。もちろん現在も365日型活動を続けている。


5テーマ55事業の<さんさん計画>

 しかし、コミュニティプランは理念的にまとめたもので、もっと具体的な行動計画を求める声が早くから出ていた。そして、5年後の93年(平5)には、理想的コミュニティ「ハナトピア」をめざすコミュニティアクションプラン<さんさん計画>を策定した。
 高齢時代における地域福祉活動、大災害への備えや自主防災活動、生涯学習と仲間づくり、ごみ減量、将来の活動拠点づくりなどの5大テーマで55の具体的行動計画をまとめた。
 さんさん計画に沿った活動は今年で4年目。「あんしん」「地球」「出あい」「楽集」「未来」などの事業局名をキーワードに活動している。一人暮らしのお年寄りや高齢者夫婦世帯などの見守り、自主防災組織づくり、生涯楽集(学習)など、55事業の90%以上はすでに実践している。「はなやま創生委員会」では、町内会・自治会の活性化に取り組んでいる。未来局はすでに同プランの見直し作業をはじめた。
 コミュニティ活動は未来へ続く終わりのない旅のようなもの。それは次世代を担う子どもをいかに育てるかという問題でもある。このため、塙山では子どもと大人が同じ体験を通して、自主性や思いやりの心をもった「塙山っ子」を育てることが、最良の青少年育成活動であると信じて進めている。平成9年度の活動のスローガンは「子どもらと心ひとつにハナトピア」。
 具体的活動例としては、最近水源の湧き水が減り、汚れがひどくなった修理公園を再整備しようと、子どもと大人が一緒に行っているワークショップ。フリーマーケット「ゴヂヤッペ市」に子どもたちも出店、売り上げの一割をユニセフに送金。防災訓練で大人と一緒にバケツリレーなどを列挙することができる。この他、ふれあい配食、敬老祭、少年少女探検隊のコミュニティマップづくり、メイン通りや公園の清掃、市長を囲むサロン等、多くの事業を子どもとともに進めている。こうした、子どもたちの参加は、若い親たちがコミュニティ活動に関心を高めることにもつながつている。


ユニークネーミングと楽しいイベント

 イベントは楽しくなければ人は集まらない。このため塙山では毎年事業に「新しさをプラス1」しようと、みんなで必死になってアイデイアを出し合う。たまには、酒の力も借りてワイワイやる。例えば、幼児のいる家庭から預かったプレゼントをサンタに扮して届ける「サンタ宅急便」。初めての子どもを持った母親の子育てを支援する「ヤングママ子育て楽集会」など。
 その他、定年後の生活設計アイディア会議、さんさん祭り、ゴヂャッペ市、進歩住夢、さんさん夢トーク、おとこ塾など、ユニークなネーミングとおもしろイベントがデパートのように並んでいる。


行政に先駆けてごみ減量

 リサイクル、ごみ減量を市行政に先駆けて実践してきた。当世流行のフリーマーケットは16年前の82年(昭57)に始めて現在も続けている。牛乳パック回収も90年(平2)から独自の啓発予算をつけて始めた。91年(平3)にはごみ対策特別委員会を設けて、ごみ減量に本格的に取り組み、再生資源の4種類10分別回収を、かわら版を使っての波状的啓発と、役員の立ち番指導により、予期以上の早さで学区内に完全導入を果たした。コンポスター、EM菌ごみ処理器の購入には市の助成金に加えて会から奨励金を出している。
 当会は、発足時から「会費制まちづくり」を進めてきた。自分たちのまちは自分たちでつくる。そのためには金も出す、汗も流そうという精神である。現在1世帯年額500円。
 年会費のみならず、1人暮らしのお年寄りの昼食会は、お年寄りも調理ボランティアも1回200円を出す。さんさん祭りのナイアガラ仕掛け花火も大人1メートル2000円、子どもは10センチメートル200円のオーナー制である。500円を出して花の世話をする花の里親、サンタ宅配便、手話教室なども会費制で行っている。従って「金がないからできない」などという人は塙山には1人もいない。


2階級特進もある塙山式リーダー育成法

 まちづくりは人づくり。これまでにたくさんの専門部を設け、たくさんの役職をつくり、その中からきらりと光るリーダーを何人も発掘してきた。年功序列や現職の肩書きは通用しない。2階級特進、格下げが当たり前のように行われているのが塙山式人事である。発足以来多くの女性が関わり、現在、部局長の半数は女性である。
 サラリーマンが生き生き人生を送るためのフォーラム「定年後生活設計アイディア会議」や「うまい酒飲んで地域の友達作り」ゼミなどをきっかけに、地域づくり活動に関わる企業人が増えている。楽集局の「おとこ塾」もその一つ。そば打ちや酒の肴づくりなどを月1回定例で行い、一人暮らしのお年寄りを招待したり、各種イベントにも出店するなど、楽しく地域づくり活動に関わっている。
 また、リーダーの学習は視察や研修などによっていたが、これからはインターネット(http://www.jsdi.or.jp/~hanayama)を活用して、全国のコミュニティリーダーたちとグローバルな情報交流をしながら、はなやま村のパワーアップを図つていくことになるだろう。


結局「人」できまる

 17年間、順風満帆に進んできたかに見えるはなやま村の活動だが問題も多い。相変わらず低い住民の意識と関心、町内会の活性化、進学や就職による若者の地域離れ、高齢化など。
 在宅ケア時代の地域福祉、大災害に対応できる防災組織づくり、超高齢時代にふさわしい新コミュニティセンターの建設、行政に依存しない、自己財源の確保、NPOの研究などを柱に<新さんさん計画>の策定も急がねばならない。
 しかし、まちづくりは結局「人」できまる。その点、塙山は人財部の努力でコミュニティ活動に開わる人が年々増えていることは大きな強味である。加えて住民の1人1役ボランティア登録制を近く始める。
 「Think Grovally Act Locally」の理念のもとに、子どもたちとともに進めている今の活動を未来へつなぐ未来県はなやま村のハナトピア建設を、これからも気負わず楽しく、やっていきたい。