「ふるさとづくり'98」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 内閣官房長官賞

福祉と自主防災で明るい町づくり
静岡県静岡市 大岩2丁目福祉協力会
地区のあらまし・地域の互助組織・福祉活動の始まり

 私たちの町は、市内の中心より4キロメートル北に位置し、昭和35年頃より急速に宅地化が進み、人口が増加してきました。現在は820世帯で、市内でも有数の大世帯で、家持世帯約500戸、マンション、社宅など300戸余の町内で、ほとんどがサラリーマン家庭です。
 私たちの福祉協力会は、行政に頼らず地域の皆さんの力で、福祉活動を推進しようと、町内会独自で活動をしております。これは地域の福祉向上のために、町民が自らがつくり上げた互助組織で、福祉活動の趣旨に賛同した住民約370世帯が加入して、年額2000円の福祉協力費を負担して会を支えてきましたが、咋年の総会の折に一部の人だけでなく住民全員の力で活動しようということで、1世帯当たり100円の協力費で会を運営することになりました。
 昭和60年頃より町内会独自で高齢者対策を考えなければと、役員の間で意見がでましたが、集会所がない町内のために何回も会合を持ち、相談した結果、清水銀行大岩支店の会議室を提供してもらい、毎月1日に、老人学級を開き、お年寄りがいつまでも元気でいられるように、血圧測定、尿の検査、健康相談、講話、映両、歌、おどりの指導など、新しい活動を推進して、今日の福祉活動に発展した次第です。


平成8年度の活動内容

 ◇給食サービス(平成3年より実施)
 70歳以上の1人暮らし老人と80歳以上の2人暮らし老人を対象に、毎月第3木曜日に実施しております。これは30人のボランティアのお母さん方が6チームに分かれ、交替で実施しております。
 公民館も集会所もない町内ですので、各家庭で2品ずつおかずを作って、町内会長宅に持ち寄り、器に盛り付けて、町内会長と民生委員がお年寄りのお宅に配っております。
 ◇温泉宅配サービス(平成5年より実施)
 手足や腰などが弱り不自由をしているお年寄りがいるお宅へ、市内梅ヶ島金山温泉から源泉をトラック2台で約3.5トンを運び、直接お風呂に給湯する活動です。
 朝8時に会長宅を出発して、500リットルのポリタンク7個に源泉を入れるのに午前中かかり、各家庭に配り終わるのは、午後4時半を回ります。総勢30人ほどの男性ボランティアがグループを組んで交替で行ないますが、かなりの重労働です。
 源泉は町内に住む金山温泉の社長の協力で無料で頂いております。この「温泉宅配サービス」はユニークな事業として、福祉関係者の間で大変話題となりました。温泉宅配サービスは、偶数月の第1日曜日に実施しております。
 ◇凧づくりと国際交流
 お年寄りの指導で凧づくりを行いました。子どもたちは初めての体験でしたが、思ったより上手に出来上がりました。凧づくりを通して、子どもとお年寄りの交流をはかり、昔の遊びを教えて頂きました。
 また、自分の作った凧で、焼津市田尻海岸で、アメリカ、カナダ、大河内、大岩2丁目の子どもたちが、凧揚げを通して、楽しく国際交流ができました。
 ◇ボランティア交流研修会(年2回)
 他の市町村のボランティアの方々と交流を図り、地域福祉の在り方を研修して、今後の福祉活動の資料として活用できるように努めています。
 私どもが今までに交流した市町村は、富士川町、焼津市、中川根町、金谷町、大井川町、藤枝市、富士市、佐久間町、浜松市、磐田市などです。
 ◇竹とんぼ作り
 親子で竹とんぼの作り方などをお年寄りから指導を受けて作りました。子どもたちは小刀の使い方が思うようにならず、じょうずに削れず、苦労したようでした。しかし、お年寄りの指導で竹とんぼが出来上がり、じょうずな飛ばし方など、昔の遊び方を伝えながら楽しく交流を図ることができまし
た。
 ◇介護者の集い
 寝たり起きたりの生活をしているお年寄り、また、寝たきりのお年寄りのいる家庭の介護者の集いを行い、日頃の労をねぎらい、意見交換をしたり、また、福祉関係者を招き、色々な問題点や、日常生活で困っている問題を出し合い、指導を受けるようにしているので、介護者の皆さんから大変よろこばれております。


自主防災と組み合わせた活動

 ボランティアグループの活動内容の拡充をはかり、自主防災の組織と組み合わせた組織の強化をはかるように努力しております。
 私たちの町内には、ボランティアグループとして、次の15のグループがあり、延べ360人の会員の方々が参加してそれぞれ活動しております。
 (1)福祉会=炊き出し班
 70歳以上のひとり暮らし老人と80歳以上2人暮らしのお年寄りに、毎月第3木曜日に給食サービスを行っております。
 (2)温泉の会=消火班
 手足の不自由なお年寄りのいるお宅に梅ヶ島金山温泉よりトラック2台で、約3.5トンの源泉を運び各家庭のお風呂に、直接給湯します。偶数月の第1日曜日の午前8時30分に会長宅を出発して、給湯活動がおわるのが午後4時30分頃になります。
 全国でも珍しいユニークな活動として、県市福祉開係者に大きな話題となり注目されております。
 (3)空き缶回収
 食品容器環境美化協会が、毎年全国に23台の圧縮機(1台約50万円)を寄贈しているその1台を平成8年10月13日に贈呈されましたので、毎月第2月曜日に空き缶の回収活動を行っております。
 1回に約70キロのアルミ告の回収ができます。700キロのアルミ缶と車イス1台を交換できます。車イスは社会福祉協議会に寄贈することを目的として回収活動を行っております。
 (4)あみものの会
 ソックス、えりまき、ひざ掛けなどを作って老人ホームに贈っています。
 (5)学習指導の会
 元教員の方々を中心として、夏休みに子どもの自由研究、宿題等の指導を行っています。
 (6)雑巾作りの会
 誰にでも簡単なボランティア活動として、ぞうきんを作って学校、施設等に贈る運動を行っております。
 (7)人形作りの会
 いろいろな人形を作りながら、交流をはかり、できた人形は施設等に贈っております。
 (8)車で送る会=物資輸送班
 お年寄りの方々が、朝病院等に行く時に、車で送るだけの活動です。足腰のわるいお年寄りの皆さんから大変よろこばれております。
 (9)こそくり会=救出班
 建築関係者、大工、左官、電気屋、塗装屋、日曜大工の好きな方などで組織しております。例えば、お年寄りのお宅での簡単な修理などを行う活動です。
 戸が動きにくい、棚を作りたい、タンスが倒れないように止めてほしい等の簡単な作業を行っております。
 また、災害時にはいろいろな道具を持っているので、救出班として活動しています。
 (10)銭だいこの会、おどりの会
 ホームなどの慰問を行う。
 (11)切手集めの会
 使用済みの切手、書き損じのハガキなどを集めて、施設、社会福祉協議会等に贈る。
 (12)盲人野球の会
 盲人野球のチームのメンバーが少ないので練習時のお手伝いをする。第4日曜日。
 (13)石芸の会
 小学校を対象に富士山を立体的に創作する。敬老の日などにお年寄りに贈り物をする。
 (14)交通の会=誘導班
 児童の登校時の交通措導、町内行事の交通指導と会場整備を行う。災害時には誘導班として活動する。
 (15)竹ぼうきの会
 お年寄りのボランティア活動として、竹ぼうきの作り方の講習会を開き、作った竹ぼうきを学校や施設などに贈り、お年奇りが作る喜びと奉仕のできる喜びを感じるとともにお互いに交流をはかる。


今後の展望と課題

 私たちの町内は福祉活動とともに自主防災会にも力を入れて活動しております。
 日頃の活動は、ボランティア活動で人と人のつながりを図り、災害時には福祉活動のグループが自主防災会の組織に移行できるような組織になっております。
 例えば、給食サービスのグループは、炊き出し班ヘ、温泉サービスのグループは消火班ヘ、車で送る会は物資輪送班ヘ、こそくり会は救出班ヘ、交通の会は誘導班へという様に、つねに福祉活動と災害時における自主防災活動と連携を持ちながら、人と人とのつながりを大切に活動をしております。
 私たちは、つねに新しい企画と課題に取り組んで一人でも多くの町民が参加して、福祉の輪を広げ、無理のない福祉活動を進め、災害に強いまちづくりを推進したいと思います。