「ふるさとづくり'98」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

ふるさとの保全と美化活動−公園づくりの実践活動を通して−
群馬県東村 新巻遊歩道委員会
 奇岩が連なりみんなの目を引いた景観も、時代とともに人の足が遠ざかり荒れ果てていった。そこに遊歩道をつくることで、住民に親しまれた景観を再び取り戻そうと活動しているのは、新巻遊歩道委員会(代表・富澤義一さんメンバー22人)である。


見捨てられた景勝地に命を

 地域を流れる吾妻川は、急流で洪水の被害ももたらした反面、岸には奇岩が連なり景勝の地ともなっていた。しかし30年程前から川岸には誰も近寄らなくなり、藪地として荒れ果てていた。昭和53年頃から、住民の要請で、村はこの吾妻川河畔を健康保持増進の拠点とすることにし、スポーツ広場の建設、温泉開発が進められた。その結果、現在では、年間10万人がここを訪れるようになっている。
 平成4年、「多くの人が訪れるようになった今、荒れた河畔を公園化して昔の景観を取り戻したい」と、地域のリーダー2人が夏の暑い中、藪を払う作業を始めた。この作業に公民館職員も協力し、4カ月後には人が踏み入れられるようになった。さらに、ゴミの廃棄場所となっていた池を業者の協力を得て重機でさらい、魚も住めるように変えた。また、ここには小石が激流の中で、川底に瓶状の穴を開け、その後川底が隆起して甌穴という地形が見られるが、これを村の文化財にしたいと群馬大学に調査を依頼、町に報告、実現もさせた。
 公民館では、この活動を地域でも支援する必要があると、住民の協力を得て平成5年に同委員会が発足することになった。会の名称の通り、公園とともに遊歩道の設置にも力を入れた。庭木の寄付、よみがえった池に魚を放流と、各家庭からいつの間にか協力も多くなり、みるみるうちに自然の中の公園という趣が出てきた。一方、電力会社が古電柱を寄贈してくれたことから、手作り遊具、街路灯も設置し、平成6年に立派な公園として完成した。


子どもたちも参加し、花のある道路に

 同会の括動は、公園ができて終わりではなく、その後も愛着をもって接していこうと、緑化を進めるため、地域の小学生と協力して桜を植樹し、また、マリーゴールド、パンジーなどの花壇づくりも始まり、訪れる人の目を楽しませている。また、炭づくりを復活させ、その売り上げが会の運営費に充てられることになった。広報活動として地域の由来などを載せた地図を作ったり、案内板を立てて、地域住民や温泉、スポーツ広場に来る人に関心をもってもらうようにしている。こうして活動は今、施設づくりにとどまらず、住民の地域の自然、歴史への愛着づくりにもつながってきている。