「ふるさとづくり'98」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

ハリヨが棲めるきれいな水環境を
滋賀県守山市 浮気自治会
「よびもどそう『水郷の里』浮気」を合言葉に水際花壇と水車の設置、鯉の放流や絶滅の危急種でもある淡水魚ハリヨをテーマに、水環境を考えるフォーラムを開催し美しいまちづくりに取り組んでいるのが「浮気(ふけ)自治会」(代表・西村三右エ門さん)である。


ふるさとづくり計画の実現と成果

 90年、故郷に昔の姿を取り戻したいという住民の声を受けて、同自治会は地区内を流れる里中川を整備し、村中池から伏流水を汲み上げて浮気の清流を蘇らせるとともに、自然と親しみ、心の和む環境づくりを目指した。同時にゲンジボタルが成育できる自然環境の再現にも成功した。
 この事業は県・市からの補助金で行ったものであるが、計画立案から、3か月にわたる作業の全てを住民自らの力で成し遂げた。これは「やりたいことを、楽しく、自分たちの手で」というまちづくりの基本姿勢を浮気に定着させるものとなった。
 また、村中池の水は緊急時の飲料水にできるよう、緊急給水用発電設備も設置し、万が一の備えとしている。


ハリヨフォーラムの開催

 トゲウオ科の淡水魚ハリヨは、生息条件が湧き水のある川や池と限られているため、各地でその生息が危ぶまれている。日本では滋賀県と岐阜県の一部にしか生息していない。同自治会では、里中川の環境整備の後、水量・水温の管理を行い、92年にはかつてハリヨが生息していた状態にまで自然環境を回復させることに成功した。そこで、米原町より雌雄50匹のハリヨを譲り受け放流することになった。今では、群をなすハリヨの姿を見ることができる。
 これが足掛かりとなって95年、「ハリヨの棲める水環境」をテーマとしたパネルディスカッションや「水に学ぼう」と題する作家立松和平氏の記念講演などの「ハリヨフォーラム95浮気」を開催した。参加者からは、「自然環境を考えるきっかけとなった」、「環境保護の重要性がわかった」という声とともに、「一自治会がよくもこれだけの事業をやり遂げた」という賛辞を受けた。
 この成功は、メンバーに大きな自信を与え、さらに「故郷の再現と暮らしやすいまちづくり」を目指した自治会の活動は、まちづくり活動から水環境を通して自然保護を考える活動に焦点が絞られてきた。
 また、フォーラムで訴えた自然環境保護の精神をその場限りのものとしないために、約30名の有志が集い、「浮気ハリヨ保存会」を発足させた。今では、浮気のハリヨ保護活動、ハリヨ保護の先進地域への研修、琵琶湖の浄化に取り組んでいる団体との交流に発展している。