「ふるさとづくり'98」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

競い合い響き合う6つの組曲
熊本県小国町 小国町コミュニティプラン推進チーム
 小国町コミュニティプラン推進チーム(代表・松原崇さんメンバー100人)では、6つの地区がそれぞれ自立的に地域活動を進めてきた。それぞれの計画は、次第に土地利用からコミュニティプランに発展し、自主的な活動が盛んに行われている。


“神風が吹いた”

 平成3年の台風19号により小国自慢の杉の美林が観測史上初めての風速50メートルを超える風になぎ倒され、無残な山の姿となった。その中には樹齢100年を優に超えるものまであった。1年後の土地利用計画チームの研修会で、チーム員の1人が、「神風が吹いて、危険な場所にある杉をなぎ倒していった。もう杉ばかりを植林するのではなく、根っ子の張る広葉樹の植林を進めたらどうだろうか」と言った。小国町にとって杉は、200年以上の歴史を誇る、山林労務者等を支えてきた基幹産業である。不変のものであった「杉」に対する価値観が微妙に変化しはじめた。


土地に夢を描く

 町では、バブル絶頂期のころからの土地の虫食い的な開発を防ぐため平成3年に「土地利用計画チーム」が発足し、現在ではより自主的な活動が行われるようになってきた。チームは6つの行政区から組織されている。西里地区では、地域ウォッチングで地域課題を自由に議論。そこで出された課題の下水道整備は、住民の同意を2カ月足らずで取りつけ、工事も苦情なく進んだ。また、山林整備等では地区住民の行動力に行政が引っ張られる形となった。北里地区では、「北里柴三郎博士祭」をはじめた。細菌学の世界的な先駆者である郷上出身の北里柴三郎博士の理念「学習と交流」をテーマに活動。上田地区では、地域の史跡や伝統文化をまとめ「これを読めば上田のことはなんでも分かる」という「カミダス」の発行やエコーパーク(自然生態系公園・エコロジーパーク)を宣言して、地域外の人たちの協力を得ながら保全・活用方法を検討している。宮原地区では、河川整備や河岸の公園化を目指しクリーン作戦や河を利用したイベント活動を実施している。また、かつて映画館として繁栄した「雄国会館」の復興コンサートやセミナーを開催している。下城地区では、楽夢(がくむ)城下というグループを中心に滝周辺の整備構想の模型を作成し、子どもたちも含めたワークショップによる住民投票や川祭り・文化祭の開催、国道の法面に文字を形どった植栽をすすめている。黒渕地区では、平成7年の「坂本善三美術館」開館を契機に「美術館を地域の誇りとして、どう地域活動に結びつけるか」をテーマに活動している。
 これら6つの地域では、アイデアを競い合いながら響き含いの地域活動を進めてきた。6つの組曲を奏でるのが、小国町の住民活動という交響曲(シンフォニー)である。