「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

アカウミガメの保護と環境保全
静岡県湖西市 カレッタ君のふる里を守る会
 湖西市白須賀海岸は、アカウミガメの産卵地である。毎年5〜8月の産卵時期には、卵を見つけた人が早い者勝ちと乱獲し薬や食料にしてしまう。このままでは、ウミガメが絶滅する恐れがあり、平成3年「カレッタ君のふる里を守る会」(代表・田中輝彦さん、メンバー120人)を結成し、市民への啓蒙や海岸清掃、海岸へ4輪駆動車乗り入れ禁止、ウミガメと光の害調査等、ウミガメの保護活動に取り組み成果を上げている。


カメの産卵時期には夜間海岸パトロール

 アカウミガメの産卵は、1回に80〜150個である。地温度による違いもあるが、普通2か月ほどで孵化し、子亀は集団で砂からはい上がり一目散で海へ帰る。現在、この亀の生態は定かでないが、15〜20年で親亀に成長、生まれた海岸に帰り産卵するのは5000匹に1匹と言われている。
 この貴重なウミガメが、白須賀海岸に帰って来るための保護活動を展開することにした。
 先ず、一般市民に、身近な海岸はウミガメの産卵地であることを周知するため、亀と自然環境問題をテーマに講演会を開催すると共に、子亀の放流や親亀観察体験会を実施、パンフレット「カレッタ君のふる里をたずねて!アカウミガメとの出会いの時」を作成配布、海岸をきれいに、自然を大切にの啓蒙を行った。そして、年4回メンバー中心の海岸清掃、年1回各種団体と一斉クリーン作戦の実施、産卵時期の夜間パトロールや早朝の産卵状況調査、親亀への標識装着放流を実践してきた。


カメヘ与えた光の害、バイパスの照明改善

 会の発足当時、海岸は4輪駆動車が走り回り、海浜植物を踏み荒らし、カメの産卵にも影響を与えていたため、車の乗り入れ禁止を各方面に働きかけた。また、子亀が、車の轍にはまって横に進み、海に帰れない状況も見られた。しかし、真っ暗な海岸では轍を苦にせず海に帰ることから、親亀の上陸、子亀の帰海に光りが影響していることから実験を始めることにした。
 平成4年、浜名バイパスの蛍光灯、ガソリンスタンドの水銀灯がある海側で子亀を放すと、いずれも光りに誘引され進む。道路照明がナトリュウム灯の場所では、真っ直ぐ海に帰るのがあった。そこで、バイパス照明の対策について、市を通じ建設省へ要望した。翌年、建設省も水銀灯、蛍光灯、ナトリュウム灯で実験を行ったが、いずれの光りも誘引する影響があった。
 この年、愛知県で開かれた第3回日本ウミガメ会議で、米国人の講師は低圧ナトリュム灯なら影響が少ない、とのアドバイスを得た。平成6年、実験を重ねた結果を踏まえ、建設省は、バイパスの高架部分は低圧ナトリュウム灯、他の所は高圧ナトリュウム灯でカットルーバー付きを設置することとなった。
 この活動は、マスコミで報道されウミガメは「絶滅にひんした貴重な生き物」との認識も広まった。海岸は6年末から、全面車両乗り入れ禁止、今は、卵を持ち去る人も無くなった。