「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

福祉のまちは「バンコ(ベンチ)」作りから
福岡県北九州市 やまさか暮らし研究会
 福岡県の旧八幡市は、上る煙を7色の虹にたとえ、日本の近代産業をリードした八幡製鉄所(現新日鉄八幡製作所)で栄えた町だが、産業構造の転換で製鉄所は大幅に縮小し、現在の北九州市八幡東区丸山・大谷地区の高齢化率は、25%にもなる。そんな中で、福祉の町づくりが始まった。平成9年に発足した「やまさか暮らし研究会」(代表・佐々木利明さん、メンバー30人)で、まず、バンコ(ベンチ)作りに取り組んでいる。


住みよいまちづくりはまずバンコの設置から

 平成7年8月、「斜面地居住、高齢者住環境整備事業」のモデル地区として、近代的なまちづくりに取り組んで欲しい、という当時の八幡東区長の提案を契機に、活動が始まった。地区では、早速まちづくり推進会を設け、公聴会や勉強会を開いたり、広報紙の発行などを決めた。会合を重ねる中で住民の多くが最も問題視したのが、地区特有の坂道や階段の多さで、高齢者や障害者はもとより、日常買い物などで行き来する主婦にとっても大きな負担になっている、という問題だった。
 住みよいまちをつくるには、まず、坂道の負担を軽減することが第1、という多くの意見から、まちに「バンコ」(ベンチ)を設けることになり、9年5月、会の名称も「やまさか暮らし研究会」に改称。バンコ設置に向けて歩み出した。


自助努力をモットーに作業はボランティアで

 心配していた資金面は、幸いハウジング アンド コミュニティ財団から100万円の助成金が受けられることになってクリアした。木材の調達では、九州電力から古い電柱を貰い受けたり、地区内に住む山の所有者から50年杉を提供してもらうことができた。
 バンコ作りの作業は、定年を迎えたばかりの住民や大学生に地元小学生まで入ったボランティア組織で進められた。山経験のある人や大工さんを指導者に、木材の伐採からベンチの長さに切断し、製材所に運搬して2つに割り、電動丸鋸1台、電子カンナ1台、手鋸5丁、五分錐3本、手カンナ2丁というようになれない道具を使い、ボルトや角座金、スプリングワッシャーなどでバンコに組み立てて、塗料で仕上げていくのである。10年2月、20か所のバンコを設置するための道路使用許可証を警察署に申請したが、条件を満たさないところもあって9か所しか許可されなかった。しかし、NTTや西部ガスなどの所有地に出した許可申請は全部受理された。結局、製作したバンコは22個。うち12個をまちに設置し、設置を予定しているのが6個。そのほか里親バンコと名付けて、今後は私有地にも設置を広げていくことにしている。
 会員やボランティアたちは、ハードでなれない作業のため苦労も多かったが、お年寄りたちの喜びの声が疲れを忘れさせ、「なせばなる……」の達成感を味わった。そして、活動は市民の間に、着実に交流と連帯感をもたらしている。