「ふるさとづくり'99」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

高齢者畜産農家への支援活動
鹿児島県菱刈町 菱刈町和牛青年部
 高齢畜産農家を支援し、地域の農業を守るための活動を続けているのは、鹿児島県菱刈町和牛青年部(代表・大塚次男さん メンバー数15人)だ。同青年部では、高齢者畜産農家のせり市への子牛の運搬代行や乾草づくりを行っている。これらの活動は、農業を中心とする町の地域活性化の核となっている。


せり市への子牛の運搬代行を始める

 鹿児島県菱刈町は、稲作を中心に畜産や園芸などを組み合わせた複合経営の農家が多いところ。とくに稲作と和牛の組み合わせが多く、1500戸の農家のうち400戸がこれにあたる。しかし、農業就業者の高齢化は進み、畜産農家の平均年齢は62歳に達する。
 昭和61年、和牛青年部による高齢者畜産農家への支援活動が始まった。畜産農家にとってきつい仕事は、せり市への子牛の運搬と市場への引き出し作業。これを青年部員が引き受けたのだ。高齢者畜産農家から依頼を受けた青年部員は、朝早くトラックでその農家を訪れる。子牛はトラックに乗るのが初めてで緊張して暴れる。子牛を傷つけてもいけないし、人に危害が加わってもいけない。青年部員も緊張する。せり市場につくと、体重測定、けい留場につなぎせりを待つ。この間、付き添ってきた農家の人は、子牛の最後の世話に余念がない。せりが済むと購買用牛舎に連れて行き、引き渡す。これで仕事が完了する。
 1回のせりでこれを6回、7回繰り返す。青年部員にとっては肉体的、精神的にも疲れる仕事だ。このせり市は年6回開かれる。平成9年度の実績をみると町全体の出荷頭数は1200頭。うち約35%がこのようにして出荷された。


乾草作りは平成3年度からスタート

 もう1つ畜産農家にとってきつい仕事が、乾草作りだ。小規模の農家が大半を占め、乾草作りは手作業になる。
 平成2年の暮れ、青年部の定例会の席上、「水田裏作として乾草を作り、高齢者畜産農家に提供したどうか」という提案が出された。これに対し、子牛運搬代行なら年6回のせり市に身体を動かせば済むが、乾草づくりとなると種まき、刈り取り、梱包と半年を要する作業が必要。天候に左右され、常時良質な乾草を提供できるか心配などの障害が立ちはだかっていた。
 中途半端な気持ちではできない。時間をかけた議論の末、実行に移された。良質な乾草を得るための技術も、県畜産試験場などの指導を受け、研究した。天候をにらんでの収穫時期も検討した。
 こうしたことが自分たちの農作業の合間を縫って行われ、翌3年度からこの事業がスタートした。9年度の実績を見ると、16ヘクタールの土地に栽培し5210梱包(1梱包10キロ)の乾草を生産し、73人の高齢畜産農家に提供した。
 このユニークな高齢者農家支援活動は、農協中央会会長賞を受賞するなど、各方面の注目を浴びている。