「私たちの生活学校」126号掲載
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実態調査とスーパーとの話し合いでレジ袋をなくそう
埼玉県 蕨市生活学校連絡協議会
 スーパーマーケットやコンビニエンスストアー等で食品などを購入した際にサービスの一環として渡されるレジ袋だが、ゴミ袋に代用できるなどの意見はあるものの、容積比で家庭ゴミの約7〜8%を占める(埼玉県蕨市資料)とも言われている。また、焼却によっては、ダイオキシンの発生につながることも指摘されている。そればかりではなく、海中に捨てられたレジ袋が、海がめがくらげと誤って食べてしまい死因ともなっていたりと、環境にも負荷を与えている厄介なものでもある。
 こうしたことから、生活学校運動として、近年、マイバッグ持参運動を展開する動きが広がっている。埼玉県蕨市でも、市の連絡協議会が市内他団体との共催で市の清掃行政を交えて学習会を開いたり、また生活学校で地域内のスーパーにマイバッグ運動推進への協力を働きかけるなどの取り組みが進められている。


生活学校が分別収集の先駆け

 蕨市は、埼玉県の南部に位置し、市の面積が全国で最も小さい市である。さらに都心から30分という便利さもあり、戦後急速に人口が増え、東京都区部を除いて最も人口密度の高い市として知られている。
 現在、蕨市のゴミ処理は隣接する戸田市と処理組合を作って処理しており、しかも市の地域条件もあり、ゴミの多くを焼却処分し、その残灰を埋め立てているが、平成8年から福島県内(平成18年まで使用)や三重県まで運搬して埋め立てるまでになっている。市財政支出の約9%を占める衛生費のうち8割がゴミ処理費となっている。
 こうしたことから市行政や市民のゴミ問題への関心は高いものがあった。オイルショックの時期からリサイクル運動が積極的に進められ、資源ゴミの分別収集がいち早くはじまっていた。こうした動きに生活学校の活動が大きな役割を果たしているのである。
 昭和50年から蕨ひがし生活学校(代表・高松とし枝さん)が地域で空き缶回収運動を始め、また蕨中央生活学校(代表・高田れい子さん)が52年度からビンの回収運動に取り組んでいた。そうした活動に応え、昭和58年に市が市事業としてモデル地区を市内に指定するきっかけになったし、平成3年から蕨ひがし生活学校が牛乳パックの回収をはじめたことから、平成9年には全市的に分別回収につながったのである。
 現在では、空き缶、空きビン、古紙、衣類、ペットボトルが再生資源として回収されている。蕨市では年間市民1人あたり約300キロのゴミを排出しているが、そのうちの60キロが資源ゴミとしてリサイクルルートに乗せられており、リサイクル率が20%と高くなっている。市もこうした生活学校の活動を高く評価している。
 生活学校メンバーが自宅にあるレジ袋を数えてみても、あっという間に50枚から10枚、平均で30枚近くあったというレジ袋。ゴミ減量の一環として、レジ袋の辞退またマイバッグ持参運動に生活学校が関心を持ったのも当然だったといえる。


スーパー入口でマイバッグ持参状況調査―消費生活展で報告―

 市内の生活学校などが実行委員会をつくり毎年開いている蕨市消費生活展において、平成11年度のテーマとしてゴミ減量とダイオキシンをテーマに研究をまとめて発表しているが、そのなかで、現在の状況で一体どれくらいの人がマイバッグを持って買い物に行っているか発表した。市内のスーパー6店舗で10月の平日、買い物客が多くなる夕方4時から5時までの間、どのくらいの人が買い物に来て、そのうち何人が買い物かごやバッグを持って買い物に来るかを入口で調査した結果だ。それによると、一つのスーパーで20%近くが持って来てはいたが、他は10%以下に留まっていた。ただ、同時に消費生活展会場に来た人に、買い物袋を持って買い物に行くか、をたずねたが、40%の人が持参すると答えており、消費生活展については関心が持った人が来るためか、いざとなると実際と違う行動になるのか、出口調査とのズレもみられた。
 この調査は、翌年度の消費生活展に向けて蕨みなみ生活学校(代表・泉山高子さん)がさらに調査し(8店舗対象)発表しているが、結果は前年同様であったものに、若い層より高齢者のほうが持参する、マイカー利用者はほとんど持参しない、主婦より勤め帰りの人のほうが買い物袋を持参していたという実態も報告している。
 11年度の消費生活展では、同時にスーパーマーケットの店長に、レジ袋の年間使用量、レジ袋の有料化について聞いた結果も明らかにした。使用量に不明と応えたスーパーもあったが、各店舗で枚数またキロ数で応えている。店舗の規模もあるが、多いところで800万枚(6000キロ)と答えたスーパーもあった。また、有料化については、大半が「考えていない」ということだった。


他団体と連携した運動の展開へ

 生活学校では、マイバッグ運動を展開するためには市内の他団体と協力して市民的活動として取り組むことが運動展開に効果的と考え、ネットワーク化を進め、この8月にまず市清掃行政と学習会を開いた。学習会では市のゴミの状況を再確認したほか、ゴミ減量の観点から市はマイバッグ持参運動を推進するとともに市民の推進運動については協力することを明らかにした。
 学習会では市がマイバッグ運動の先進地として、静岡県磐田市、山形県米沢市の動きを紹介し関心を引いた。磐田市では磐田市消費者協会が大型スーパーだけでなく一般商店、商店街90店が協賛店となり、環境チケットを渡す方式でマイバッグ運動を展開している。これは、レジ袋を辞退した客に対し協賛店が環境チケットを渡し、環境チケットは市内全幼・小・中学生がいる家庭などは学校に持っていくと、各学校でまとめ、消費者協会を通じて換金され、PTA活動費となっているということだった。また、PTAに関係しない人の環境チケットは消費者協会がまとめ社会福祉協議会に車椅子などを寄贈する経費となっている。
 先進事例の紹介を受けた学習会を通じて市内スーパーのレジ袋の実態をきちんと調べることや、機会を設けて先進地などを見学することとし、まず、11月2日に埼玉県狭山市が実施するノーレジ袋デーの状況は知りたいという声も聞かた。
 一方、蕨みなみ生活学校では消費生活展の調査などをもとに、地域内のスーパーにマイバッグ運動への協力を求めて話し合いをしたところ、「協力をしてもいいが、どのようなサービスがあったらよいか聞いてほしい」との要望がスーパーから出された。生活学校では早速調査し、90人から聞いたところ、47人が「会計時に2円引いてもらう」、次が「ポイントカード制にしてもらい、買い物袋を持参するとポイントが加算される」の28人、「持参した人には日替わりの特定商品を安くしてほしい」22人などの意見が多かった。
 レジ袋の価格も様々だが、平均的には3円から5円ぐらいである。スーパーにとっても経費削減からみるとマイバッグ運動は歓迎していい方法のようだが、小額の商品を購入してレジ袋を辞退した客にも値引きやポイントを与えなければいけないかなどの悩みがあり、生活学校としても、スーパーマーケット側が納得できる方法を提案することも求められている。
 市連絡協議会や各校の活動によって、蕨市におけるレジ袋使用の問題点が見えてきたことから、さらに調査などを通じて少しでもマイバッグ利用運動を推進したいと力の入る運動となってきた。