「私たちの生活学校」129号掲載
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生ゴミ回収システムを町全域に広げるために
鹿児島県・伊集院町 伊集院生活学校
 行政の処理するゴミの量を減らすため、住民の協力で生ゴミを堆肥として活用するシステムづくりの活動を始めたのが、鹿児島県伊集院生活学校(代表・野上侑子さん)だ。システムへの方向性は見えてきたが、肥料として活用してくれる農家の確保など困難な課題もあり、生活学校交流集会などでの他地域の生活学校からの情報などを積極的に活かし、実現を目指している。


人口急増でゴミ増加

 伊集院町は、鹿児島市のベッドタウンとして3千世帯の団地も出来るなど人口が年々増え、現在約2万4千人を上回っている。それに伴いゴミの量も増えてきた。可燃、不燃、資源の3分別のゴミ回収だが、特に可燃ゴミは平成11年度が4473トン、12年度は4840トンと嬉しくない右肩上がりの傾向が続いている。広域行政組合で隣町にゴミ処理場が作り直され、ダイオキシンの発生もなく、処理能力は十分にあるとはいえ、町清掃行政にとっても頭が痛い問題となっているという。
 伊集院生活学校は昭和50年から活動を始め、お返し廃止運動やクリーニングなどの活動とともに、鹿児島県内でも早いうちから、乳酸飲料ビンの分別回収を働きかけるなどゴミ減量問題には当初から関心は高かった。生ゴミ問題についても、県内をブロックに分け、毎年開かれている生活学校交流集会において、平成7年度にEMボカシの利用による生ゴミ堆肥化を学んだことから、関心を持ちボカシ作りは始めていた。しかし、「ゴミをは減らそう」というメンバー間で申し合わせたり、また住民へのアピールをするくらいで、具体的にどう減少させるかまで考えなかったという。
 そうした時、平成12年度の交流集会で、伊集院生活学校が活動報告をすることになった。「ただ単に『こんな活動をしています』という報告ではいけないのではないか」と野上さんをはじめ運営委員会では話し合い、また補佐メンバーにも相談し、これを機会に、具体的な課題で調査をし、対話集会を開いてその結果を報告しようということになった。
 課題については、以前からボカシ作りを通じて町のゴミの5〜10%を占めるという生ゴミに関心があったこと、ネコやカラスが荒らす、なにより新処理場が出来たとはいえ処理には税金が使われる、ゴミの増加を抑えることにより処理費を抑えるために、日常出る生ゴミを減らすことを課題に取り上げることになった。


関心が高かった生ごみ減量

 さっそく、8月から9月にかけ生ゴミについて生活学校メンバー自身の取り組み、町民の意識などの調査を実施した。一般住民に対しては「生ゴミの処理方法」「EMボカシへの理解」「今後への対応」について聞いている。調査にあたっては、なるべく年齢、地域を配慮して配布、回答してもらうようにし、回答者には20歳代の住民もいた。
 結果では、ボカシなどを利用して処理している人も多いものの、60%の住民は町の回収車に出していた。また、生活学校が作って中央公民館においてもらい販売しているEMボカシが月50個は売れることに見られるように、ボカシについての関心は高く約80%が「知っている」と答えている。
 さらに、今後の対応について、約30%が生ゴミ減量に着いて考えたい、聞きたいと答えてくれた。その他の意見の中にも「処理器を町で購入できないか」「処理についての容器の販売を広報して」など生ゴミについての意見が含まれていた。


生活学校自らモデル回収に取り組む

 調査結果をもとに、12年11月に町長はじめ関係行政との対話集会が開かれた。話し合いでは、町長から「生ゴミ減量には生活学校の活動が重要」と挨拶を受けたほか、町内の地域、事業所の生ゴミ処理への行政指導の状況を確認することになった。また、事後処理活動として、町内でモデル的に生ゴミ回収をしてデータを集める、事業所をまわり処理状況を聞き取り調査をする、各家庭の水切りアイデアを募集することを決めている。
 事業所点検では、病院や食堂等13か所を調査した。多くのところで行政指導が効果をあげていたが、給食センターでは水分処理に苦慮しており、行政給食担当に連絡している。また、町回覧を通じて生ゴミ水切り方法も募集している。
 同時に、最大の課題がモデル地区での回収のシステムづくりだった。団地などで生ゴミの自宅処理ができない世帯からEMボカシを入れた生ゴミを、団地内においた回収拠点に出してもらう、農地を持っている協力者が拠点から回収、堆肥として利用するというシステムを考えた。40リットル入る拠点用の回収容器を購入したり、生ゴミを拠点に出してくれる世帯に生活学校のボカシを配布するなど体制も決まった
 まず、団地内で回収拠点になってくれる人を確保することだったが、当初団地内に住む生活学校運営委員などが協力して、5か所の回収拠点が決まった。また、生ゴミを出してくれる人がいるか心配していたが、多くの人が申し出てくれている。さらに、回収した生ゴミを堆肥として使う農地は、運営委員3人の農地や家庭菜園で利用している。
 町はゴミ回収の有料化をしているが、生ゴミ回収に協力してからゴミの量が減り、購入枚数が減ったと喜ばれ、協力するという人が増えている。また、回収拠点も10か所に増え、夏、水切りのPRが不十分で悪臭がしたりと困難はありながら、一月約5百キログラムの生ゴミが回収され、堆肥となり利用されている。回収は家の人も協力してくれ、堆肥を使った菜園にはみずみずしい野菜が育ち、ゴミを出してくれている家庭などに提供しており、喜ばれている。
 問題は、現在利用している3人の農地だけでこれ以上回収量を増やせないということ。町内で利用してくれる農家などを増やしていく必要が出てきた。また、生ゴミを堆肥化し専業農家などに利用してもらうためには、生ゴミの塩分や油分を除いていく必要があるということだ。また、野上さんたち3人だけの回収では少々負担が多く、現在体調を壊し一時的に回収を中止している。


農協やシルバーボランティアとの連携も模索

 こうした時、また平成13年度の交流集会が開かれ、その中で「農協とタイアップしている」という生活学校の活動を聞いた。そこで、農協と話し合い協力する農家を探せないかということになった。また、堆肥化についての技術の情報についても、行政や他の生活学校との交流を通じて情報を取り入れることにより、除去も可能ということも分かってきている。また、回収や利用について町内のシルバーボランティアとの連携による解決が考えられないかと模索している。
 気候もよくなり、再び回収を始めたいと意気込む伊集院生活学校。「ゴミの中で、回収している生ゴミはわずかな量かも知れませんが、町民がゴミ問題の大切さを理解し、さらに生ゴミの堆肥化が地域全体に広がって欲しい」と、意欲と期待を語っている。