HOME>あしたのまち・くらしづくり活動賞>19年度の受賞団体概要
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19年度の受賞団体概要
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食育推進活動部門 |
■内閣総理大臣賞
農山村の素晴らしさまるごと発信〜棚田の村の食育活動〜 |
岡山県岡山市 山ゆりの会 |
同会のある岡山市建部町和田南地区は、山腹の標高400mの高台に集落が点在する農山村地帯で、急傾斜の農地に棚田が多く、主要作物は水稲、乳用牛、野菜等となっている。区画面積が狭いため機械化が難しく、農外就労の増加に伴い、荒廃地が目立つようになっていた。
このような状況の中、地域の活性化を図ろうと、地区の女性たちの力を集めて、平成2年に「山ゆりの会」を発足させた。以来、地域の特産物を活用した加工品づくりと販売に取り組み、地区の高齢者との交流や、都市と農村との交流活動にも活動を広げ、食育活動を通じた地域の活性化に取り組んできた。
主な活動は次の通り。
@地域の食材を使った特産品の開発と販売
平成4年にメンバーの熱意で行政が動き、加工施設が立てられた。以来次々と、地域で生産された有機無農薬の野菜や大豆を利用した、こんにゃく、野菜パン、みそ、豆腐等の特産品を開発。味噌、豆腐、惣菜、菓子製造業を次々と取得し、直売所や町外の販売を開始した。地元特産品を使った商品づくりは、地域住民の生産意欲を向上させている。
A都市と農村の交流活動
地域内の農業生産組織「長尾営農集団組合」の協力を得て、都市と農村との交流活動に取り組んでいる。その1つとして、平成8年から5年間に渡って大阪のスポーツ少年団を招いた、田植えと稲刈りの体験ツアーを企画。営農集団が昔ながらの田植えや稲刈りを指導し、山ゆりの会が、できたての手作り野菜パン、かき餅、絞りたての牛乳などを用意した。子どもたちからは「おいしい」、関係者からは「農村の素晴らしさを堪能できた」、住民からは「農業者としての誇りを実感できた」との感想があった。
B「三世代交流会」の開催により世代を超えてふるさとを体感
平成3年からは、若い世代が帰省するお盆に毎年「三世代交流会」を開催し、集会場に約100名が集まり、地区全体のふれあいの場となっている。現時では若い世代で「桑の実会」を結成し、郷土芸能の伝承活動も行われている。
Cその他
地区の古老から伝え聞いた話や、伝統的行事、建物を紹介する冊子「ふるさと歴史浪漫」の作成も行っている。
こうした活動を通じて、同会の生産する製品が食の安全・安心に配慮していること、生活の中に活動が根付いていること、他のグループとの交流にも熱心であることが高く評価された。 |
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「田植え体験ツアー」には大阪の小学生約80人が参加した |
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棚田で培ってきた昔ながらの田植えを子どもたちに教える |
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普段の仕事の合い間を縫って、地域の特産物を活用した加工品づくりに取り組む |
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■内閣官房長官賞
食農教育で人づくり |
千葉県四街道市 四街道食と緑の会 |
急速にベッドタウン化が進んだ四街道市において、創設者(現会長 中上昭喜)が食の見直し、人づくりと食の見直しを目的に、稲作の体験学習を地元の大日小学校に呼びかけたことに端を発し(昭和60年)、小学校、幼稚園、盲学校等の団体やグループ、約1600人参加(平成19年度現在)、乳業飼育体験学習参加者216名参加(平成11年〜19年)、ケナフ栽培・加工体験学習者1808名参加(平成12年〜19年)を可能にした食育活動を行っている。食育の概念がまだ普及していない時期から取り組んできた先駆性と、地域の各団体との協力体制を構築し、子どもへの食育に留まらず、地域住民の間に広く食育への意識を高めたことが評価された。
主な活動は次の通り。
@体験学習「稲作り・心も一緒に育てよう」への支援活動
昭和60年以来継続する同会のメイン活動。実施校は、市内全小学校(12校)・県立盲学校の5年生で、総合学習の中で1年かけて、田起こし・代かき・田植え・除草・防鳥ネット張り・稲刈り・おだ掛け・脱穀・籾摺り・精米・わら細工等の作業工程を、子どもたちが実際に手足を使って体験する農業体験活動を、メンバーが指導・支援している。
A「市民田んぼの学校」の開設
一般市民を対象にした「稲作り体験学習」を、休耕田を借り上げて実施。家族単位で参加する活動。平成12年にスタート。
B体験農業「ふれあい牧場」の開設
小学校5・6年生〜中学生を対象に、夏休み中に、代表者の酪農牧場で酪農体験学習を実施。牛舎内外の清掃から子牛への哺乳・ミルカーの装着など牛に触る体験を行っている。毎年20〜30人が参加。平成12年にスタート。
C環境学習「ケナフ・紙すき」の学習支援
ケナフを育て、パルプを作り、紙を漉くことによって、省エネ・省資源への意識を育んでもらう活動。平成12年度よりスタート。毎年200名あまりの子どもたちが参加。
D市民交流会「農業生産者と市民のつどい」の開催
市民に市内の農業事情を理解してもらい、都市と農村・生産者と消費者の連携を目指して、「市内農業生産者と市民の集い」を随時開催。毎回約50名の参加があり、市内の果樹・野菜や畜産生産などの農業現況を学習し、交流を深めている。
E県の「ちば食育ボランティア活動促進事業」を受託
「食育フォーラムIN四街道」の開催と「活動記録集」の製作を行った。 |
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市内に12ある全ての小学校の5年生に対して、体験学習「稲づくり」支援を実施 |
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稲づくりにはアイガモたちも大活躍 |
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休耕田を借り上げた「市民田んぼの学校」では、一般市民が稲づくりを体験できる |
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■主催者賞
世代と地域、いのちとこころをつなぐ食育活動 |
愛媛県松江市 都会と田舎を結ぶ食育ネット |
地方で飽和状態にある地産地消、都会で命の尊さと本物の味を知らない家庭がある現状に高校生たちが立ち上がった。愛媛大附属農業高校2・3年生有志と横浜国大附属鎌倉小学校5年生及び愛媛県内子町の農家、直売所などの実践記録である。
第1段階小学生の「農業への疑問・質問にお答えします」平成18年6月〜7月
都会の小学生から農業への疑問・質問をメールで送ってもらい農高生がメールで返答。あわせて農家への取材や、直売所で活躍する農家のおばちゃんからもメッセージをもらい、取材した結果を伝えるためのプレゼンテーションを作成。
第2段階「なぜ?なに?」交流(メール)(平成18年9月〜10月)
プレゼンを見た小学生は、遠く離れた高校生のお兄さんお姉さんが自分たちのために活動してくれたことを喜び、高校生もかわいい弟妹と感じ顔は見えないが、メールで距離も世代も縮まった。
第3段階「は〜い。こちら愛媛です。」テレビ電話で生中継(平成18年11月1日)
次には顔を会わせたいというニーズが高まった。農業高校は野菜実習、小学校では総合学習中にテレビ電話機能を使って生中継。農業高校で生産されたキュウリを見て、「どんなふうに作られているの?」と小学生から携帯電話がかかってくる。高校生はレポーター・教師役、自分たちが作っているものを説明。
第4段階「おもぶりごはん」をつくりましょう(平成19年1月27日)
次には交流のニーズが両者とも高まり、愛媛の食材で郷土料理「おもぶりごはん」をつくることに。農家・直売所・農業高校から食材を送り、インターネットテレビ会議システムを使い、高校での調理の様子を説明しながらの同時進行。保護者も参加。シイタケなど、普段食べられないものも食べられたとの声もあり、新鮮で本物の味は違うとの保護者からの声もあった。
第5段階「田舎へ行きたい!」「田舎へおいでよ!」(平成19年2月〜6月)
楽しそうな農業高校生の活動を携帯やHPで見て、お兄さんお姉さんに会いたい、愛媛へ行って農業の体験をしたいとの欲求が高まり、大人を動かす。
第6段階田舎暮らし体験!(平成19年8月3日〜5日)
小学生、保護者、教師等約50名が愛媛に来て農業体験、川遊び・山遊び、うどん打ち体験、町並み散策、クイズ・ゲーム交流等、農家や高校主による体験活動。
第7段階「これからもよろしくね!愛媛はみんなのふるさと。」(〜平成20年2月)
小学生による体験学習のまとめ、高校生のアドバイス(インターネットや携帯電話)、体験学習の時のイネ、収穫したコメを持って高校生が小学生のもとへ、高校生の作ったおにぎりを食べて収穫祭、「愛媛はみんなのふるさとだよ」宣言など。
現在までの成果
遠隔共同調理に21組の児童・保護者が、田舎暮らし体験に32名の児童・7名の保護者が参加したことがこの取り組みの成果を物語っている。大人ではなく高校生が前面に立ち、小学生や保護者と関わっているこの取り組みは、今後の食育モデルケースとして多くの示唆を含んでいる点が評価された。 |
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携帯電話のテレビ電話機能を使って鎌倉小学校の児童の質問に答える |
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小学校ではスクリーンに高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんが大写し |
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テレビ会議システムを使って遠隔地の小学生と一緒に「おもぶりごはん」作り |
子育て支援活動部門 |
■内閣総理大臣賞
手づくりおもちゃを通しての心のふれあい |
愛媛県新居浜市 新居浜市おもちゃ図書館きしゃポッポ ボランティアグループ |
「いろいろなところで、いろいろな人が、いろいろな思いでふるさとづくりをしています。10数年前、仲間と一緒に『障害児さんが安心してあそべるところを…』と願って始めたその場所は、障害のある子ない子にも、親やボランティアにとっても楽しい場所になりました」(代表・松山明子さん)。
おもちゃ図書館とは、障害児が親やボランティア、地域の人と遊ぶことで生き生きするようにと、スウェーデンの障害児の母親がおもちゃを交換したことがきっかけ。
平成7年、市が建設する総合福祉センターにおもちゃ図書館をつくろうとの呼びかけに共鳴した障害児の親、主婦、民生委員など20〜70代の人たちが同会を結成した。
手作りおもちゃは、初めは本を見て作っていたが、遊んでいる手どもの様子を見ながら自分たちなりに工夫し、創作おもちゃを作り始めた。安全に遊べることを第一に、視覚障害児のためには音が出るとか手触りで遊べるなどの工夫もしている。
平成10年度「幼児・障害児のための手作りおもちゃ展」では廃材を利用したリサイクル調理器具(おままごとセット)『お料理作ろう』が入選。平成11年度には『郵便ごっこ』が優秀賞受賞。平成12年度には『お菓子の家』が入選。最近では、学校の先生や障害児のお母さんと相談しながらおもちゃを作っている。
平成12年度に環境を取り上げ、障害児を含む子どもたちが実際に触れることができ、環境に関することを身につけていくような体験型おもちゃを製作した。ボランティア扮するリサイクルマンが登場し、ほうきを持って歌って踊り、子どもたちのゴミや地球環境問題への関心を高める。総合学習で小学校(1年生)から依頼も受け、障害児の利用を考えて作ったおもちゃゴミは、小学校低学年の環境学習にもピッタリだった。その後学校や幼稚園での出前講座に取り入れられ、同会ではこれらの経験をいかし、初級編と上級編の「環境かるた」も作成した。
「障害があっても思いきり太鼓を叩けたら生きる元気が出てくる」と平成13年8月からは和太鼓の練習も始めた。恒例になったクリスマス会での発表のほか、市の出前講座のメニューにも取り上げられ、障害児親子、ボランティアが演奏・交流している。
はじめはお母さんの手助けで演奏していた子どもが時間をかけて練習していくうちに自分で打てるようになり、大きな自信にもつながっている。
平成15年にはNHK松山放送局から病気の解説をするエプロンシアターの制作・出演の依頼を受けた。この経験は形のないものから一つのものを作り出していくこと、みんなが知恵を出し合って協力することを学ぶ良い機会になたったという。
平成11年東京で開催された「第8回おもちゃの図書館国際会議」に会員7名が参加し28か国の人々と交流した。第9回(リスボン)、10回(プレトリア)と同会議に参加し、今では同会の手づくりおもちゃで多くの国の子どもたちが遊んでいる。
ささやかな活動でもその積み重ねが障害の有無を超え人と人とが助け合う、住みよいまちづくり・くらしづくりにつながっているという点が非常に高く評価された。 |
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出前講座―ゴミ分別学習リサイクルマンと遊ぼう |
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和太鼓の取り組み、5周年コンサートでみんな楽しく頑張った! |
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手づくりおもちゃとメンバーたち |
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■内閣官房長官賞
「あったらいいな」の子育て支援を目指して |
福井県小浜市 特定非営利活動法人わくわくくらぶ |
小浜市内の保育の必要な母親たちの切実な要望を受け、公的な保育サービスで対応できない一時保育等、様々な保育ニーズに即応えられるサポート体制を整備した。希望者も年々増え、「子育てに自信を持てるようになった」という母親の声に見られるように、市内の子育て環境の向上に寄与していることが高く評価された。
@永年、保育士を勤め、6年前、保育相談窓口へ異動した芝さんは、緊急時の一時保育など保護者の多様な保育ニーズに応えられない当時の保育の限界を知る。芝さんは、要望に応えたいと、定年前に退職、退職金で一軒家を購入、経験と資格を持つ元同僚や後輩など協力を得て、平成16年に何日でも、年中無休で、子どもを預る、子育て支援施設「わくわくくらぶ」を発足させた。
A行政も評価、平成16年、市内の子どもの場合、8時間以内は利用料の半額を市が負担する「すみずみ子育てサポート事業」の委託を受けた。18年度からは、第3子が3歳に達するまでは無料となり、1か月延べ400人以上が利用。さらに、夜間も預かって欲しいとの保護者の要望を受け、平成18年度、小浜市の「市民提案型まちづくり事業」に夜間延長保育を提案、採用され、18年からわくわくくらぶへ夜間9時30分までの保育が委託された。
B単に、預かるのではなく、1時間の託児でも必ず子どもの生活、体調を連絡帳に細かく記入、保護者の安心と信頼感が高まるようにしている。子育てに悩む母親のために、「自分で育てられる気持ちになるまで」と預り、「自分で育ててみる。いざというときここが有ると思うと安心して育てられる」と自信を持ってくれた。
B多くの保護者の利用するようになり、最近、保育を依頼されても、施設が狭いため、断らなければならないこともあり、もう少し広い施設があったらいいなと、願っていた。平成19年7月より小浜駅前の若狭農業共済事務所が移転することになり、その空き事務所を好意で借りられるようになった。
Cさらに、今年度より毎週土曜日の学童保育が市内全域閉鎖されたため、駅前商店街の協力で、集会施設「はまかぜプラザ」で、市のシルバー人材センターの保育サポータ養成講座修了者に協力を得て、学童保育の場にすることを考えている。 |
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つどいの広場では親子料理教室なども行なっている |
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つどいの広場は親も子も楽しくホッとする場となっている |
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預かり保育の様子 |
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■主催者賞
つながって育ち合う「循環型子育て支援」 |
岐阜県多治見市 多胎児サークルみど・ふぁど |
多胎児の両親の苦労は、単に子供が二人と同じでない。妊娠中から管理入院となるケースが多く、出産後も2倍の睡眠不足の中、24時間育児に追われ、地域社会から隔絶され、育児不安が募ると育児困難な状態となる。
こうした多胎児家庭を「社会につなげる」視点から、多胎児を育てた先輩が平成5年にサークル「みど・ふぁど」を立ち上げた。
「みど・ふぁど」では、「循環型子育て支援」を目指している。子供が育った後サークルを辞めたのでは、それまでの育児経験の蓄積が個人のもので終わってしまい、社会共有の財産にならないことから、支援された者が次の支援者になることの循環と、支援している者が同時に支援されている者から育てられているという二つの循環をねらいとする支援のモデルを示すことを目指している。
現在、51組226名の会員が、活動に参加している。主な活動は、次のとおり。
@自主的活動(育ち合い活動)
「運動会、お泊り会、クリスマス会、リサイクル会、新入学を祝う会」0歳〜14歳の多胎児の親子行事。大きい子が小さい子の世話をしながら異年齢で遊ぶ。
「パパの会」父親による育児情報交換会
「ママの会」大きくなった多胎児の母の会。思春期の多胎児の問題、受験の問題などの情報交換などをしている。
A育児支援活動
「未就園児親子の集い」親同士のミーティングの際に、託児や遊びの世話をする。
「病院訪問」病院・産院との協働で、入院中の多胎妊産婦を訪問し、相談活動をする。
「マタニティ訪問、乳児訪問」保健センターとの協働で、多胎妊婦、育児家庭を訪問する。
「座談会」講師を招き、多胎特有の育ちについて等の話を聞く。育児不安解消となる。
その他「各種講習会」「先輩ママと語る会」「子どもスタッフ」「子どもお助け隊」「情報提供」「プレパパママスクール」といった多彩な活動をしている。
現在、県内他地域のサークルと「ぎふ多胎ネット」を設立し、「循環型子育て支援」の拡大を目指しており、今後の活動が期待される。 |
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育ち合い交流活動のひとつ、クリスマス会 |
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パパの会は父親による育児情報交換会 |
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子どもスタッフ:公園で遊ぼうお手伝い |
まち・くらしづくり活動部門 |
■内閣総理大臣賞
行政に頼らない「むら」おこし |
鹿児島県鹿屋市 柳谷自治公民館 |
過疎化、高齢化が進むなか、集落でできることは自分たちが汗を流そうと、数々の生産活動で収益を生み出し、その収益を福祉や教育に注いだり、空き家を整備して、芸術家を招聘したりなど、地域の自立に向けた多彩な活動をしているのが、鹿児島県鹿屋市の柳谷自治公民館(世帯数120 人口300人)。
最初に取り組んだのが、雑草の生い茂った20aほどの町有地の公園化。集落総出で整備し、「わくわく運動遊園」と名づけた。
数々の収益活動を展開
並行して、遊休地でのカライモの生産も開始。ここでも総出の作業が行なわれ、栽培面積は1haに達し、80万円の収益を稼ぎ出すまでになっている。12年から家畜のふんの悪臭を防ぐため土着菌の製造も始めた。この土着菌を給餌すると、悪臭が消えハエが発生しない、地力回復の堆肥としても有効という。年間約30万kg製造販売され、約200万円を売り上げている。さらに、カライモを原料とした集落ブランド焼酎“やねだん”も商品化。毎年、約3000人が視察に訪れる人を対象にした食事処「未来館」もオープンし、財源づくりに役立てている。
緊急警報装置の設置と寺子屋の開設
利益の使い道は、第一に福祉と教育。お年寄り宅に「緊急警報装置」を設置したり、子どもの基礎学力向上を目的に寺子屋も開校。17年度からは、自治公民館費(自治会町内会費)を、年7000円から4000円に減額、翌年には、全世帯に1万円のボーナスも支給した。みなし法人として約40万円の納税もしている。
お宝歴史館、異郷からのメッセージ放送、サンセットウォーキング大会
さらに、埋もれていた農機具や民俗資料保を保存、展示する「お宝歴史館」の建設。ここで育ち、異郷で暮らす人たちからのメッセージを高校生たちが代読し、有線放送で流す「異郷からのメッセージ放送」。3歳児を中心に5qのウォーキングに挑戦する「サンセットウォーキング大会」などの催しも実施している。
空き家を迎賓館に、芸術家を招聘
同集落には、空き家が15軒あるが、ここを整備し、迎賓館と名づけ、芸術家を招聘。現在、3軒に陶芸家、画家などが住人となっている。また、閉店したスーパーを、ギャラリーに改装し、作品展示や活動拠点として利用されている。現在、これらの人に加え、Uターンを含めて、21人が新たに柳谷に転入してきている。
意識改革と後継育成
柳谷の活動は単なる自主財源づくりが目的ではない。生産活動をすること自体が、人々の交流の場であり、住民総参加型の地域づくりで、その副産物が収益である。ボランティアだけでは限界がある。自主財源を確保し、老いも若きも地域のなかで、十分に能力が発揮でき、不安のない暮らしができるようなシステムを今後作っていくことが重要であろう。このことを実践しているのが、柳谷集落の11年にわたる活動といえよう。 |
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20アールの雑草が生い茂った土地を住民総出で整備し、「わくわく運動遊園」と名付けられたこの公園は、柳谷集落の活動拠点となった |
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最初は高校生がお年寄りの指導のもと始めたからいも生産は、集落の大きな財源となっている。これを原料にした集落名を冠した焼酎「やねだん」の商品化にも成功している |
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小学生、中学生の学力向上を目指して開かれている「寺子屋」。先生の謝礼も収益が当てられている |
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■内閣官房長官賞
渡良瀬川源流の森づくりを推進しよう |
栃木県日光市 特定非営利活動法人足尾に緑を育てる会 |
利根川の一大支流である渡良瀬川の源流に位置する足尾町松木地区は、長年にわたる足尾銅山の煙害、大量の木の伐採などにより、広大な山地が荒廃裸地化し、下流域に被害を与えてきた。このような状況から、渡良瀬川上流と下流の市民グループが集まり、1996年5月、足尾の山に緑を取り戻そうと、「足尾に緑を育てる会」を結成し、植樹活動を開始した。
市民ボランティアによる植樹
「100万本の木を植えよう」のスローガンを掲げ、毎年4月には、「春の植樹デー」を開催し、今年は第12回を迎え、2日間で、1350人が参加し4600本の苗木を植えた。これまで、延べ8400人が3万6000本あまりの苗木を植え、緑化活動に大きく貢献し、足尾町の春恒例のイベントになっている。その他、夏の草刈りデーや、秋には「観察デー」を開催し、植樹後の管理も行なっている。「毎月の作業デー」は、毎月第4日曜日に、会員の他にボランティアを募り、草刈り作業などの各種作業を実施している。
体験植樹の実施
2002年より、足尾に緑を育てる会がNPO法人となったのを機に国土交通省からの委託支援活動として、学校の体験植樹を年間100団体以上受け入れており、小中学生の生徒による体験植樹の実施も増えてきた。近年環境問題に対する関心の深まりで、日光方面への修学旅行にくる首都圏の小学6年生が、環境学習をかねて「体験植樹」に足尾を訪れている。
普及啓発活動として、足尾グリーンフォーラムを開催
2000年から「足尾グリーンフォーラム」を開催。植樹地近くの「銅親水公園」にて開催している。ここには環境問題を学べる足尾環境学習センターがあり、植樹体験を通し環境問題を考える場所として機能するだけでなく、足尾の歴史や緑化の取り組みを学べる総合的な環境学習の一大拠点となっており、今年度より管理を委託されている。
公的機関との協力
国や県による土砂流失防止対策や緑化事業は100年の歴史があり、国土交通省、林野庁関東森林管理局、日光治山事務所が現在これらを行なっている。平成8年より民間団体として、はじめて「足尾に緑を育てる会」が緑化事業への取り組みを行い、公共機関に民間団体が関わることは、歴史上初めてのことである。協働で緑化事業への取り組みを行ない、円滑に事業が推進されている好事例として全国から注目を集めている。 |
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「足尾の山に100万本の木を植えよう」をスローガンに |
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斜度40度の急斜面が植樹の現場 |
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体験植樹に小学生たちが毎年多数参加している |
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■主催者賞
“ミニ自治”の夢へ一歩! |
秋田県湯沢市 湯沢市岩崎地区町内協議会 |
35年前、公民館の移転建設地が、町内会の思惑で地域が紛糾したことから、若者が中心になり、対話を通じての合意形成による解決の手法を考え出た。以後、この手法を活かし、地域住民の要望をまとめ、行政とも協働しながら、自主的、自立的な活動で、将来につなぐまちづくりを継続し、地域環境整備、地域文化の伝承、生活簡素化運動等、成果を上げていることが、評価された。
@岩崎地区は、公民館移転、小学校建設や県立商業高校新築の場所など、町内会を二分する政争の問題に事欠かない地域であった。将来を心配した青年会OBが、千年(ちとせ)友和会を結成し、紛糾の原因を分析、その結果、地区に全地域の立場で住民同士が話し合う場がないことが、最も問題であると分析、「住民の合意形成」を基本理念に、地域での「対話の土俵づくり」に努めてきた。
A以後、町内会ごとに全住民対象の住民のつどい等開催、地域課題や生活課題の解決運動を続けてきた。小学校移転改築等大事業も、意見の相違はあったが順調に解決した。また、交通安全施設等行政への要望も多いが、行政も合意形成の手法を高く評価、誠実に対応してくれ、住民主体の市政への参加意識が最も高い地区となる。
B昭和60年の住民のつどいで、岩崎地区の自然、民俗的文化資源を見直し、地域のために生かそうという意見が出され、まず千年公園のフジ棚復活に取り組んでいる。各世帯からの寄付、各町内会のボランティアで作り、現在は、現在7基に増え、平成6年、半世紀ぶりに藤まつりが復活、地域の一大イベントとして定着した。そのほかにも、仏事祭壇共同利用事業、川をきれいにする運動、ポイント制ボランティア事業など、住民の声がきっかけ始まり、現在まで続いている。
C今年度、地区センター機能を併設した、市民活動・NPO活動拠点施設「ふるさとふれあいセンター(仮称)」が建設されることになり、指定管理者として、岩崎地区は市と契約すること新たな目標を一つ加えた。同時に、今後10年間を想定した「ふるさと再生プラン」の作成に取り組んでいる。テーマは「福祉でまちづくり」。昨年末にアンケート調査を実施、平成19年度中に成案を作成する計画である。お隣同士・地域全体で支え合うまちづくりを目指している。もう一つの役場の任を実践しながら、追い求めている大きな夢――「ミニ自治の創造」に一歩でも近づきたいと、まちづくり活動への思いを膨らませている。 |
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住民の合意により永年続けられている祭壇共同利用事業 |
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みんなの力で再生した藤棚の下での藤まつり |
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ポイント制ボランティア事業による公園の手入れ作業 |
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■主催者賞
歩いて気づいたまちづくり「なんとかなんないの」から「なんとかしなきゃ」へ |
茨城県水戸市 水戸女性フォーラム |
歴史的・文化的資産に恵まれた水戸の街を愛して止まない女性たち(40人)で作るグループ。平成5年の発足以来「人にやさしいまち まちにやさしい人へ」を合言葉に、まず自分たちの足で街を歩き、自分たちの目で見、自分たちで調べ、そして実際にやってみる。そうした活動を通して見えてきたことを「まちづくり提言集」にまとめ、関係機関に配布する。
街を歩いて気づいた「なんとかなんないの」という小さな「つぶやき」が、みんなで話し合っていくうちに「何とかしなきゃ」という会員共通の思いとなり、行動へと展開していく。
公共トイレの改善活動も、歩いて気づいた「なんとかなんないの」というつぶやきから始まった。平成6年に、公共施設やデパートのトイレの点検を行う一方で、「さわやかで、使いやすく、安全で機能的なトイレとは」をテーマに研究を行い、提言集にまとめた。それに反応して、デパートのトイレは改善された。
平成6年には、臭くて汚い公衆便所を高齢者・身体障害者・母と子・若い女性・観光客の視点でワークショップを実施し、その結果を提言集にまとめた。その後、公衆便所は、1階が公共トイレ、2・3階はギャラリーの美しい建物に建て替えられ、トイレの部分には数々の会員の提言が採用された。新しいトイレに会員たちは毎週1回交代で花を活ける花一輪活動を平成9年のオープン以来続ける。活動は広がり、学校トイレの改善にも取り組む。
街を歩いてみると、植え込みにゴミが絡まり、空き缶・空きビンが散乱し、歩道にはガムがこびり付き、水戸の印象を悪くしている。そこで「なんとかしなきゃ」と、黄門まつりの前の7月と、梅祭りの前の2月に、中心市街地の歩道の「クリーン作戦」を行う。始めは会員だけであったが、事業所のボランティアグループやサッカーチーム、家族連れなど協力者は年々増えている。
会員は、偕楽園の案内ボランティアや「まちの駅みと」の案内人も務める。来園者から質問の多かった「お食事どころ」「お土産品」を紹介した「水戸のまちなか散策」マップを作るなど、その活動は多岐に渡っている。
まちづくり提言集はすでに9冊になる。花一輪活動は平成9年から続けている。活動は一過性のものにせず、一度始めた活動はできる限り継続的に実施している。「継続こそが力なり」というのが会員のモットーであり、持ち味でもある。 |
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公共便所が改築され、1階が公共トイレ、2・3階はギャラリーになった「水戸市銀杏坂市民ギャラリー」 |
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トイレには会員の提言が取り入れられ、水飲みコーナーが設けられた。手洗い場に自主的に花を活ける活動を続けている |
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案内人を引き受けている「まちの駅みと」ではお雛様を飾ったり、折り紙教室を開いたりしている |
企業の地域社会貢献活動部門 |
■内閣総理大臣賞
商店街を通しての街活かし |
大阪府大阪市北区 天神橋3丁目商店街振興組合 |
「商店街から文化を発信しよう」と、日本初の「商店街立」カルチャーセンターをオープンさせたのを皮切りに、若者とのジョイント事業や修学旅行を対象にした「一日丁稚体験」、さらには2億円を超す寄付を集め、落語の定席「「天満天神繁昌亭」を建設するなど、数々の文化の掘り起こし事業を実施するなかで、街に賑わいを取り戻したのが、天神橋三丁目商店街振興組合。
日本初の「商店街立カルチャーセンター」をオープン
大阪天満宮の参道として栄えた天神筋商店街は、大阪を代表する商店街。しかし、昭和50年代、同商店街の一日の通行量は8000人という、どん底の状態であった。昭和54年、若手の商店主が立ち上がる。商店街を法人化し、「近代化委員会」を設ける。議論の末、活性化のキーワードに据えたのは「文化」。
最初に取り組んだのが、文化を発信基地となる多目的のイベントホール『天三カルチャーセンター』の設立。空き店舗を活用したもので、商店街立のカルチャーセンターとしては、日本でもはじめての試み。ここでは、地元音楽家によるコンサート、ディスコ大会など、自らが企画した手づくりの催しを数々実施していった。
伝統文化の復活、若者との交流
天満に伝わる文化の復活・掘り起こしにも力を注いだ。日本三大祭りの一つとして名高い天神祭や「星愛七夕祭」で若者が興味をいだく企画・実行している。街は老若男女が集まってこそ街になると、若者とのジョイントも数多く行なっている。写真家の卵による天神橋筋風景展、アーケード下のモニュメント製作、ストリートミュージッシャンの育成、天満音楽祭の開催、各大学生との交流など多岐にわたる。
物づくり文化、観光文化
天満は、ガラス、酒など元来物づくりの盛んな土地。そこで、「天満切子」と名づけたガラス製品の売込み、「百天満天百」という地酒の復活などにも力を注いでいる。
平成11年に始めたのが「修学旅行生の一日丁稚体験」。修学旅行生たちが、各店で見習いをし、大阪弁を習い、地場産業の商品を屋台に乗せて商店街で売り歩く。毎年希望者が増えている。この企画は今や全国各地の商店街に広がりをみせている。
116億円の経済効果を生み出した「天満天神繁昌亭」
平成16年に新しい動きが起こる。上方落語協会と大阪天満宮との協力を得て、「天満天神繁昌亭」を昨年オープンする。建設費用2億円を超えたが、すべて寄付でまかなった。この定席による、1年間の経済効果が、直接・間接合計116億円を超えるという調査も報告されている。
経済的な振興のみならず地域文化の振興によって、さらに繁昌亭の建設にみられるように、行政の補助よりは、自らの力で実施しようとする姿勢、そして商店街の中だけに留まらず、商店街の周りの活性化にも力を注ぐという姿勢が、現在では、現在1日30000人の来街者を生み出すという地元商店街の隆盛のみならず、大阪全体に対する地域貢献は大きいものがあるといえる。 |
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昨年、大阪天満宮敷地に建設された「天満天神繁昌亭」。31億円の寄付を集め建設された |
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大阪天満宮の鳥居をモチーフにしたアーケード |
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千年の歴史を持つという「星愛七夕祭」の復活など伝統文化の掘り起こしも大きなテーマ |
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■内閣官房長官賞
出前防犯授業「ALSOKあんしん教室」 |
東京都港区 綜合警備保障株式会社 |
児童を狙った犯罪が増えていることから、警備業務で培った知識を活かし、「ALSOKあんしん教室」を実施、以後、児童に登下校における行動など、現役のガードマンが講師となり、劇など通じて教え、「自分の身は自分で守る、生きる力を付けさせる」ことにつながると、全国の小学校から授業の希望が多く寄せられる活動になっていることが、高く評価された。
@神奈川県内の小学校から、子ども達の安全を守る方法を教えて欲しいという申し出があり、警備業務で培った、登下校路の安全対策、巡回のポイントなどの知識を、学校の安全教育などに役立てられないか、と社員からの提案があった。この提案を受け、業務に支障なく継続できること、など検討した結果、小学校での「現役ガードマンによる出前防犯授業」が始まった。
A若手社員がボランティアで、講師の話し方や防犯劇の内容、資料など出前防犯授業の開発、指導案づくりに着手した。身近な授業ということで、クラス単位で行うということを基本に、「ALSOKあんしん教室」を開く。平成16年から、神奈川県内で、同社に警備を依頼している、いないにかかわらず、要望があった学校で試験的に実施したところ、半年で42校、158回の要望があった。翌17年からは全国に広げ、実施された。教室に参加した児童が、現在は30万人以上が受講するまでになった。
B社員も約1,000人が講師を務め、授業内容向上のため、社内独自のあんしん教室マスター認定制度を設定、指導・訓練・社内試験制度を導入した。本社も広報部に4名の専従者を配置し社内体制も整備、指導内容のチェックや新たな指導案開発等のため、バックアップしている。
C子どもからは、あやしい人をどのように判断するか、不審者に追いかけられた時の対応などを劇仕立てで、実際のガードマンに教えてもらい、よかったという声が多く寄せられた。また、教師や保護者からも、評価する声が寄せられている。社員も講師を務めることにより、より自分の仕事に誇りを持つようになっている。 |
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登下校の危険な場所のチェック方法を教える |
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不審者をどのように判断するかを教えてもらう |
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不審者に声をかけられたらどうするかを学ぶ |
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■主催者賞
職員が地域で貢献する「ヒューマニー活動」 |
東京都中央区 住友生命保険相互会社 |
住友生命保険相互会社(以下「住友生命」と略記)は、「地域社会と調和する企業」を目指し、平成4年度から全国の職員が自ら汗を流すボランティア活動(「ヒューマニー活動」と呼称)を実施している。
「ヒューマニー」とは、Human(人間的で温かみあふれ)とHarmony(社会との調和図る)の造語で、住友生命の社訓「経営の要旨」の「社会公共の福祉に貢献する」を踏まえ、豊かで明るい長寿社会の実現を目指し、全国各地で職員が地域のニーズにあった活動を自主的に実施している。
活動経費は、本社から一定額(上限)が支給されるが、飲食費等は自分持ちで、勤務時間外に地道に目立たない形で活動を継続している。
平成18年度には全国で194の活動を実施し、延べ約3万1千人が参加した。
主な活動としては、
@健康な暮らしを支える地域福祉への取組みでは、☆使用済み切手の回収・寄贈によるアジアの医療環境の支援、☆あしながPウォークへの参加による親を亡くした世界の維持への支援、☆チャリティーバザーによる福祉施設の支援といった全社的に実施するものの他に、☆チャリティーカレンダーによる車椅子の寄贈(熊本支社)や盲導犬育成費の寄贈(京都支社)など各支社における多様な取組みがある。
A次世代に引き継ぐ地域環境の維持・保存への取組みでは、各地域の海岸や河川の清掃・美化活動として、例えば☆アカウミガメの産卵地を保護する「ウェルカメクリーン作戦」(浜松支社)や、緑化推進活動として、☆隅田川のコンクリート壁面を緑化する「グリーンアッププロジェクト」(東京本社)☆「桜並木づくり」(北見支社)☆「ニッコウキスゲの捕植」(栃木支社)などがある。
住友生命は、平成19年度に創業100年を迎え、CSR活動の一環である「ヒューマニー活動」の一層の拡充を図っている。
既に多方面で貢献している実績があることは評価でき、また、明確な基本姿勢のもとで全社的に取り組んでいる姿勢から、今後一層の発展が期待される。 |
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チャリティーバザーに物品を提供し、当日のバザーもお手伝い |
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職員が持ち寄った品を売り、売上げを「あしながPウォーク実行委員会」へ寄付する |
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荒川の河川沿いの清掃活動、荒川クリーンアップ |
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