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令和元年度あしたのまち・くらしづくり活動賞発表
 独自の発想により全国各地で活発に展開されている地域づくり・くらしづくり・ひとづくりの活動に取り組んでいる地域活動団体等を表彰する、令和元年度あしたのまち・くらしづくり活動賞(主催・公益財団法人あしたの日本を創る協会、NHK、読売新聞東京本社など)の各賞が以下の通り決定しました。

■内閣総理大臣賞
岩手県陸前高田市 特定非営利活動法人SET

■内閣官房長官賞
宮城県大崎市 特定非営利活動法人鳴子の米プロジェクト

■総務大臣賞
熊本県山鹿市 特定非営利活動法人岳間ほっとネット

■主催者賞
茨城県大洗町 一般社団法人ユニバーサル・ビーチ協会
埼玉県狭山市 認定特定非営利活動法人ユーアイネット柏原
東京都町田市 つくし野ビオトーププロジェクト
神奈川県横浜市青葉区 特定非営利活動法人森ノオト
熊本県熊本市東区 NPO法人みるくらぶ

また、振興奨励賞には20団体が選ばれました。団体名はページの下部をご覧ください。
今年度の応募総数は195編でした。

審査講評はこちらです。
内閣総理大臣賞
人口が減るからこそ豊かになるまちづくり
岩手県陸前高田市 特定非営利活動法人SET
【活動内容】
 公共交通機関もほとんどない立地条件の悪い広田町に、年間2,000名以上の若者を継続的に誘致し、月に1度以上通い、活動をする若者が約80名いる。そのメンバーたちが複数のチームで活動をしているため、毎週末必ずメンバーが東京から広田町に訪れ、地元住民との交流や中高生とのワークショップを行っている。また現地に移住して活動する若者が20名以上いる。交流人口から、活動人口、そして移住者へと繋がる全国的にあまり類を見ないモデルを創り出した。また、約3,000人の町で800人以上の住民がNPO法人SETの活動に参加し、まちづくりを行っている。中でもSETに理解あるコアな町民の方々と3ヶ月に1回会議を開催し、SETの行った活動の報告・相談、また町で活動するメンバーの様子や評判など、町の方だからこそ持てる視点からSETの運営を補ってきている。

1.活動の発端
 東日本大震災をきっかけに平成23年3月13日に設立し、復興支援活動の過程で広田町に出会った。地域住民との交流を通して町が産業の衰退や人口減少等の社会問題に直面していることを知り、平成25年6月にNPO法人化し、継続的な活動をスタートさせた。

2.主な活動内容
(1)修学旅行民泊
 「外から人を連れてきて、この町の暮らしを体験してほしい」という地元住民の声がきっかけとなり、全国の中学・高校の民泊修学旅行を市や他団体と協働で誘致し、広田町での受け入れを行う民泊事業を実施している。
(2)高田と僕らの未来開拓プロジェクト
 今までに陸前高田の中高生53名と関東圏の大学生47名が企画メンバーとして28個以上のプロジェクトを実行し、中高生468名が参加者として企画に携わっている。
(3)Change Maker Study Program(CMSP)
 春、夏の長期休みに大学生を160名ずつ募り、町の方と共に1週間でまちづくりへのアクションを行うプログラムを運営。このCMSPのプログラム内により、民泊事業は地元の方の声を元に、高田と僕らの未来開拓プロジェクトは地元の中学生の声を元に試作され、実現した。
(4)Change Makers College(CMC)
 広田町に4ヶ月間滞在し、人口減少社会に対して「人口が減るからこそ豊かになる」という考え方や価値観、その人間観から生まれる人口減少社会のリーダーシップを育成する4ヶ月の移住留学型事業を実施。

【評価された点】
 立地条件の悪い被災地に、多くの若者を誘致し、地元の中高生や住民の声を聴きながら一緒になって様々なプロジェクトを企画、実践してきている。地元住民と外部の若者との交流を通じて、「自分たちの手で人づくり・まちづくりを」という誇りをもって、取り組んでおり、成果を上げている。外部の若者が過疎地に入って、地域住民と交流を図りつつ、まちづくりを行うという新しい取り組みであり、先進的活動であることが高く評価された。
内閣官房長官賞
みんなの力で地域の農や暮らしを守る
宮城県大崎市 特定非営利活動法人鳴子の米プロジェクト
【活動内容】
 宮城県・鳴子温泉地域は、約1,200年前開湯の温泉観光地であるが、景気の低迷などに伴い観光客も400万人から200万人と半減。また、県境の山間地域で、農業を辞める農家が増え、耕作放棄地が増加、農村風景も失われようとしていた。鳴子の田んぼや農村風景、暮らしを守るため、地域が一丸となり平成18年に鳴子の米プロジェクトがスタートした。
 美味しい米は作れないと言われた山間地で、山に合う米「東北181号」を探し出し、「ゆきむすび」と命名され、山間地を代表する新品種の米が誕生した。自然乾燥「くい掛け」にこだわり、結(ゆい)も復活、協力して手作業での生産を継承している。

 米の価格が市場や全農で決められるのではなく、「作り手」が安心して米を作れる価格を決め、「食べ手」がその価格で予約購入するという、「食べ手」が「作り手」の米づくりを買い支える仕組みづくりを考案し取り組んできた。農家から1万8千円/俵で米を買い取り、米通信発行経費及び若者の研修支援費用などの運動維持経費を上乗せした2万4千円/俵で「食べ手」に販売している。米の作付前の年明けから予約の受付を始め、収穫前に予約が完売し、11月下旬から12月に新米を発送している。現在は約950人の「食べ手」がおり、地元の旅館なども予約しているが、8割は北海道から九州までの地域外の消費者が占めている。このような取り組みは、アメリカではCSA(地域支援型農業)と呼ばれており、日本の米のCSAモデルとなっている。CSA(地域で支える農業)を実践することで、中山間地での農業を持続させ、国内各地に地域で支える農業を広めている。
 米を生産販売するだけでなく、おいしい食にできるよう、桶職人や漆工、こけし工人は、おむすびに合う器を作り、お菓子屋はゆきむすびの米粉で菓子を作り、女性たちは約100種類のおむすびをおむすび屋「むすびや」から食文化を発信している。

 これまで小中高・大学生など多くの若者を受け入れ、食と農の仕事に就いたり、プロジェクトを卒論として書いた学生がCSAを研究する博士に成長したり、さらには卒論を書いた大学生が東京のおむすび屋に就職したことがきっかけで、ゆきむすびを扱うおむすび屋が東京に開店した。また、震災後休業していたおむすび屋「むすびや」は、全国からのクラウドの支援により復活オープンした。
 作り手と食べ手の交流会も開催している。5年前からは「にっぽん・食の哲学塾」を開塾し、多くの人に、農と生きるための食の大切さを伝えている。
 今年度からは、米以外に野菜の契約会員制CSA「鳴子よいっこ」を、鳴子と仙台で実証をスタートさせた。

 平成20年、鳴子の米プロジェクトをモデルに、NHK仙台放送局が1時間ドラマ「お米のなみだ」を制作、放送した。全国各地から激励や応援のメールが届いた。とりわけ、若い人たちから農業の大変さを知り、初めて農を理解した等、多くの意見や感想が寄せられた。さらに、鳴子の米プロジェクトをモデルにした小説「雪まんま」も出版されている。

【評価された点】
 「生産性」に劣る山間地域の農業に、CSA(Community Supported Agriculture, 地域支援型農業)というコンセプトを導入して、独自に開発した「ゆきむすび」という地域ブランド米の事前予約生産販売に成功した稀有な事例である。農業生産の安定だけでなく、農村景観の維持、「食べ手」と「作り手」の交流、人材育成、地域の食文化の発信、観光の活性化、CSAの普及などの効果を挙げていることが評価できる。
総務大臣賞
廃校を利活用して、ふるさと岳間を想う、みんなの想いを形に
熊本県山鹿市 特定非営利活動法人岳間ほっとネット
【活動内容】
1.活動のきっかけ
 熊本県山鹿市鹿北町岳間地区は中山間地域にあり、14集落で811名315世帯、高齢化率約45%。地域に医療機関はなく、路線バスも廃止、平成25年に小学校廃校。平成29年度に保育園閉園。「ないものづくし」の地区であった。
 平成24年に14集落の区長グループが「岳間を考える会」を立ち上げた。熊本市の大学生の協力を得て地元住民へのインタビューや全世帯を対象としたアンケート調査を実施。住民の地域愛が浮き彫りになった。そこで「ないものねだりよりあるもの探し」をしたところ、普段食べているものがおいしすぎること、あったかい人柄が岳間ならではの良さと気づいた。
 平成25年度には廃校になった岳間小の活用計画を話し合った。平成26年度には家庭教室の一部を改装して営業許可を取得し貸し出しカフェスペースに。本が1冊もなかった図書館は全国からの寄贈で6,000冊の本を集め森の図書館として復活させた。他の教室は不必要になったソファをいただき憩いの場に変身。段差は地元の大工さんがテラスデッキを設置するなど、廃校が生まれ変わった。誰もがほっとできる場所を目指そうと「ほっと岳間」と命名した。

2.現在の主な活動
@「岳間うまかもん教室を通した岳間の食材の宣伝」今年で4年目になる料理教室。1年間参加可能な30名の教室生を募集し、毎月1回、岳間でとれた食材だけを使った料理教室を行う。講師は地元のお母さんたち。200種類ほどにのぼる。
A「貸し出しカフェで起業家支援」農家の担い手による農カフェなど様々な方が挑戦し1日カフェを営業。ここの営業をきっかけに起業した団体もある。
B「田舎でも学べる環境、いろいろな教室の開催」若者が都会に流失しないよう、岳間の暮らしを満喫できるように、ヨガ教室、英会話教室、短歌教室、パン教室などを定期的に開催。要望があれば教室を増やしていく予定。
C「イベントとSNSでの宣伝と交流」年4回、小学生等がいる若いお母さんたちとマママルシェを開催。30店舗が出店し、11回目の今年5月は400名が来場。また、岳間渓谷ぐるっとウォークは今年で12回目。3月に開催し県内外から500人が訪れる。宣伝では、Facebook「ほっと岳間」を立ち上げ情報発信。また、熊本日日新聞の折り込み紙の企画で体験活動を通した宣伝。
D子どもたちの支援:鹿北中学校等の国際交流活動に昼食バイキングの提供。出張子育て支援センターにも図書館等を提供。労働不足の高齢農家には就農支援の大学生をマッチングさせてインターンシップも始めた。その大学生の協力で「たけまあそび」という冊子を完成させた。
Eお母さんたちのおせち販売:一昨年からおせちの販売をスタート。ほとんどを岳間の食材によるすべて手作り。一昨年は100個限定、昨年は注文が250個になった。

3.その他
 ほっと岳間のある石垣の草取りや拭き掃除、トイレ掃除や廊下の掃除を地元住民がボランティアで行う。森の図書館は自由に誰でも本を借りられる。催しや教室がない時期でも入館し楽しめる仕組みに。年間来場者は、平成28年度約3,000人、29年度約6,000人、30年度約8,000人。

【評価された点】
 「ないものねだりよりあるもの探し」のコンセプトを地域住民が共有し、地域の活性化を達成しつつあることが高く評価できる。特に、小学校廃校後の活用計画を話し合う過程で、各集落の自治会を基盤に大学生の協力を得て全世帯アンケートによる住民ニーズの把握や地域資源を再発見等を行い、広く住民参加の手法を取り入れていることが注目される。
主催者賞
「みんなで一緒に楽しむ」海辺からユニバーサル社会を目指す
茨城県大洗町 一般社団法人ユニバーサル・ビーチ協会
【活動内容】
 2020年東京オリンピック・パラリンピックを前にして、ようやく認知され始めた「ユニバーサル」という理念。一般的には未だに「心のバリアフリー」と言われているが、ユニバーサル・ビーチ協会(以下UBA)では「みんなで一緒に楽しむ」ことを「ユニバーサル」と定義し、その実現をテーマとしてきた。毎月の定例のユニバーサルサロンをはじめ、海洋教育の実践、野外活動機器の開発、ユニバーサルに関する調査・研究、シンポジウム、政策提言、ハンディキャップ体験、ユニバーサルツーリズム、ユニバーサルスポーツ、リトリート、障がい者の就労支援などユニバーサル社会に近づくための取り組みを展開している。

 UBAの活動は大洗サーフ・ライフ・セービング・クラブの活動の軌跡の上にある。
 1995年水陸両用車椅子を日本で初めて導入。障がいのある方や、高齢者が自由かつ安全、快適に活動できるよう、地域の方と一体となってユニバーサルビーチを整備。
 2009年から活動を通年とし、専門家や学術関係者などを加え拡大編成し設立したのが、UBAである。2019年4月、一般社団法人化した。

 2011年3月11日東日本大震災の際、大洗も4メートルを超える津波に見舞われ、町役場や海岸線にある施設、海岸監視に必要な備品倉庫などが被害を受けた。その後の原発事故の風評被害も含め、海水浴客は著しく減少。観光産業も大打撃を受けた。大洗町も津波防災対策の築堤や一時避難所となるビーチセンターの建設など、大規模な防災対策が行われることとなった。これを契機にユニバーサルをより積極的に発信しようという機運も生まれた。
 2013年に不定期の勉強会を毎月定例のユニバーサルサロン(勉強会)とした。障がい者とその家族、大学生、地域住民、大洗町職員、茨城県職員、東京や周辺地域からの支援者、茨城大学教職員など参加者は各回40名に達する。
 さらに、政策提言が可能な体制を整え、不定期に研究会も開催した。茨城大学を始めとする学識経験者も関わり、2014年には提言書をまとめ大洗町に提出した。▽ユニバーサルビーチを存続するために、堤防=壁ではなく、バリアフリー規準をクリアした築山の建設、▽障がい者の一時避難所となるビーチセンターの建設などを盛り込んだものだ。その後、2017年竣工された津波防災対策堤防及びユニバーサルビーチセンターは、この提案を核に施工されている。

 2015年2月ユニバーサルシンポジウムvol.1を開催。ユニバーサルツーリズムを考える契機を設けた。
 2016年2月にはユニバーサルシンポジウムvol.2開催に加え、学生の実行委員会を中心に「だれもが楽しめるユニバーサルスポーツ」体験イベント「ユニスポWAVE2016」を企画、実施。
 2017年6月には築山、ビーチセンター建設を町民への周知を図りユニバーサルシンポジウムvol.3を開催。7月には「ユニスポWAVE2107」を開催。実行委員には障がい者の大学生も加え、高校生ボランティアの参加もあった。これらは学生と地域、行政の協働の実績でもあり、大洗発ユニバーサルを発信し続けている証でもある。
 2018年からは、障がい者とその家族といっしょにキャンプ事業を試みるなど人育ての浜の活動は広がりつつある。

【評価された点】
 ライフ・セービングの仲間がユニバーサルを「みんなで一緒に楽しむ」と定義し、その実現を目指す。地域住民、行政職員、学生、学識者など幅広い分野から40人もの人が参加し、まちづくりについて学び・議論・まとめ、町に提案し、実現している。この一連の実現力を評価したい。今後も期待できる。
主催者賞
健康で心豊かな共生社会の実現を目指して
埼玉県狭山市 認定特定非営利活動法人ユーアイネット柏原
【活動内容】
(1)生活支援事業
 日常生活を送る上で支障を来している高齢者、身障者や子育て中の家庭、その他特別の事由がある人等が抱える諸々の課題・問題に対応・支援する。(有償支援:600円/30分)内容:庭の除草・剪定、簡易な大工・電気・水回り、家事(掃除、食事つくり、障子・網戸の張り替え等)、付き添い・送迎、子育て、自治会からの受託事業等々。営業日は月曜日〜土曜日。

(2)コミュニティサロン事業
 地域住民が心豊かで健康で文化的な生活を追求するための各種施策の提供・支援
@コミュニティカフェ“ゆうあい”の展開(住民の交流と憩いの空間)
営業日時:火〜土10:30〜15:30、料金:100円〜650円
A趣味と実益を追求する各種教室やサークルの主催
*教室:生け花、手芸、詩吟、旅行英会話
*サークル:ちぎり絵、俳句、ウオーキング、健康体操、健康麻雀 料金:0円〜500円/回
B各種講座の主催:認知症予防講座、認知症サポーター養成講座、成年後見制度講座、食中毒予防講座、防災・防犯講座、狭山の歴史講座等 料金:無料
C各種イベントの主催と共催
主催:納涼祭り、夏休み子供サロン「こども木工工芸教室」、納涼コンサート、ミニ生け花展、地域支え合い感謝際&ゆうあいバザー、クリスマスチャリティコンサート、NPOバスツアー
共催・協力:柏原8区桜祭り、柏祭祭り、狭山市市民文化祭
Dオレンジカフェとフリーサロンの開催:認知症者とその家族、その他認知症に関心のある方々のためのカフェ 開催:毎月第1月曜日10:00〜15:00、料金:100円〜500円(定食+コーヒー)
E子育て広場“ぴょんたん”の主催:0〜3歳児と母親を対象 料金:無料〜200円

(3)地域支え合いの仕組み推進プロジェクト
 ユーアイネット柏原は、埼玉県で推進中の「地域支え合いの仕組み推進」プロジェクトの唯一の指定交付事業者として、「地域支え合い活動」と「まちの総合活性化支援活動」を推進中。
 また、ユーアイネット柏原のサービス提供スタッフは、謝礼としてユーアイネット柏原が発行する「地域商品券」で50%と「現金」で50%を受領する。「地域商品券」はこのプロジェクトに加盟している地域の35商店・事業者でのみ使用できる。これにより地域経済の振興とまちの活性化を支援している。

【評価された点】
 高齢化が進む80年代ニュータウンにおいて、「支え合いと共生社会の実現」を目指す。生活支援、コミニュティサロン、地域支え合い仕組み推進プロジェクトの取組みは、地域住民の評価も高く会員の増につながっている。有償支援制度も取り入れるなど継続性も確保。同様のタウンの先例となり得る。
主催者賞
地域で親子が共に学ぶ≪体験的環境学習≫
東京都町田市 つくし野ビオトーププロジェクト
【活動内容】
 本活動は、町田市立つくし野小学校4代前の田村健治校長(故人)が14年前の在任時、自然体験や生物とのふれあいを通じて、様々な命の大切さ、環境学習の大切さ、身近な地域の自然について体験的活動を通じて学ぶ機会を児童に提供することを目的に始めたものである。現在は、田村先生の理念を基盤とし、地域住民が主催を引継ぎ、発展してきた環境NPO団体が実施する『地域住民による都市近郊型体験的環境教育・学習』となり、現在の活動に至っている。現在の年間の延べ参加者数は、子どもと親等を合わせて900〜1,000名となっている。
 活動の拠点とする町田市つくし野地区は、東京都町田市南端に位置し、横浜市に隣接した地区である。学区のほとんどは、約50年前電鉄会社によって計画的に開発されたエリアであり、都市インフラは整っているが、多摩地区特有の里山的景観はほとんど残されていない。しかし隣接した横浜市エリアには、このような開発を免れた里山的自然景観が数多く残り、里山とのかかわりのある暮らしが垣間見えるところもある。豊かな自然環境がある地域での体験的環境学習は、ある意味容易かもしれない。しかし、日本の人口の過半は私たちのような環境に住み、子どもたちはこのような環境で育っている。それ故、このような地区に住む「子どもたち(でも)人生に基盤となる世界観や人生観を築く基礎となる、独創性に富んだ自然体験」ができるような本活動の活動プログラムと13年間の経験や実績は、他の多くの類似地区に対する普遍性がある。
 活動プログラムは、つくし野小学校内のビオトープ整備に始まった。しかし、小学校は公共施設であり、校長が変わる度に判断が変わり、継続的な整備には限界がある。そこで子どもたちが幼稚園や小学校の授業や行事、地域や家族単位での活動では学び・体験することのできない体験的環境学習を提供し、経験することができるよう、ある時期から活動拠点を学校から近隣に飛び出し、活動目的・内容を発展させてきた。具体的には、地域の寺や地主の提供による畑での作物栽培体験や、地域住民(農家)から、農業指導を受ける等、地元密着型の活動を実施している。「畑で作物を植え、育て、収穫し、食べる!」は、年間を通じて、定例と不定期の特別活動を合わせれば、全体の2/3のプログラムを占めている。この活動では、畑は農薬の用い方を適正に行えば、生物相が豊かなビオトープとなり、生き物とのかかわり、食育などの面で、豊かな経験を子どもたちにもたらしてくれていることを理解してもらえるよう取り組んでいる。「森であそぼう!森で学ぼう!」の活動では、1本のブランコ、トンデモブランコ、ハンモックなどのアトラクション系活動と、藍の生葉タタキ染め、小枝で小物作りなどの工作系、森のジグソーパズル、森の音さがしビンゴなどのゲーム系、昆虫採集といった多種のプログラムを用意し、複数から選択させている。「たきびをしよう!火を学ぼう!」の活動では、児童だけでのたき火の準備、着火、調理の体験を実施。家族単位ではできない規模・内容を志向し、竹で作るバームクーヘン、大丸太のウッドキャンドル、カボチャの丸焼きといった、ダイナミックで印象に残る体験プログラムを実施。「水を学ぼう!川で遊ぼう!」では、初めに生き物にとっての水環境の重要性を話した後、近年ほとんど行われない川遊びや魚とりの様々な方法を伝授している。

【評価された点】
 14年前、小学校長が自然体験や生物とのふれあいを通じて、命の大切さ、環境の大切さについて学ぶ機会を子どもたちに提供した活動。今は地域住民に引き継がれ、活動内容も1年〜数年に及ぶ継続プログラムによるものが実施されるなど高度化。また、活動を通して世代間、地域内新旧住民の交流も図られている。参加者も年々増加、着実に成果を上げている。
主催者賞
メディアから始まるわたしたちのまちづくり
神奈川県横浜市青葉区 特定非営利活動法人森ノオト
【活動内容】
 森ノオトの活動拠点である横浜市青葉区の人口は、約31万人。横浜市の18ある区の中でも2番目に人口が多く、1995年に区ができて以来、増え続けている(平成30年度)。ローカルウェブメディア『森ノオト』を立ち上げたのも、子育て期の一人の女性。現理事長兼編集長の北原まどかさんが、豊かな自然環境を子どもたちの世代に残したい、と地域企業の支援を受けて2009年11月から運営を開始。地球温暖化への対策を声高に訴えるのではなく、生活者の視点で届けることを大切にし、自分で考え行動できる人を増やしたいと考え、2013年1月にNPO法人を設立。暮らしや地域の情報を、エコの視点で発信できる書き手を育てようと、市民ライターの養成講座に取り組み、地域で子育て中の女性が書き手として加わり、新たなコミュニティを育んでいる。
 『森ノオト』は、独自の編集方針を持ったローカルなメディア。編集権を守るため、広告掲載に頼らず、「寄付で支えるメディア」として独立した運営を続けている。すべての記事は独自の取材に基づき、毎年約250本の記事を掲載。エコロジー、オーガニック、サスティナビリティ、といった方針に沿った地域の情報を集めて発信することで、地域の解像度を高め、同じ感性を持つ生活者たちがつながるようになった。現在、NPOの正会員、マンスリーサポーター合わせて133人が会員として登録。月間約5万人の読者が訪れている。7年間ライター養成講座を重ね、受講生は約100名に上る。このうち、約50名がライターとして参加。ライターはボランタリーな活動だが、メンバーが事務局スタッフとして運営に携わるようになり、着実に団体として成長している。日本全体で女性の就業率が出産、育児期に低下するように、このエリアでも、妊娠や出産を機に職を離れる女性は少なくない。森ノオトの活動に主体的にかかわることで、社会とつながるきっかけや自信を得て、新たな仕事に就く人が出てきている。
 ウェブメディアでの発信だけでなく、衣食住の参加型イベントも年間を通じて企画。リユースマルシェ、エコクッキング、地産地消、裁縫講座など、2018年は100を超える催しを行い、約4,900人が参加。中でも、「あおばを食べる収穫祭」は「地産地消&地域循環」をテーマに掲げ、2013年から毎年11月に開催を続けている。取材を通してつながった区内のお店に声をかけ、地元の商店街と共催で運営し、約2,000人が参加している。
 2015年には活動拠点を横浜市青葉区の郊外住宅に移し、断熱DIYや雨水タンク、生ゴミコンポスト、もちより畑などの、循環型オフィスとして実験中。2016年には、ものづくりの事業も始める。これは、「あおばを食べる収穫祭」でいらない布地をウエスとして集めたことがヒントになっている。使わなくなった布地を回収し、新たなものに作り替えてアップサイクルしようというコンセプト。アップサイクル、アップリケ、という言葉から発想を得て「AppliQue」というブランド名に。プラスチックの袋を減らすために、あずま袋を、マイ箸・マイ弁当箱を使う人を増やすために、マルチクロスや箸包みなどを作り循環型社会につながるものづくりに取り組んでいる。作り手となっているのは、地域の子育て世代の女性たち。ここでも、子育て期の女性たちの雇用や地域活動へのきっかけを生み出している。
 こうした活動が評価され、行政からの協働事業や委託事業も増えてきた。横浜市青葉区とともに2018年度から始めた「子育てツアー」は、子育て世代の転入、転出の多いこの地域ならではの課題解決を目指している。当事者としての地域での子育て経験と、地域の情報を編集し、届けてきたからこそ実現できた企画。「エコ」の枠にとらわれず、複眼的な視点を持ちながら、持続可能なまちづくりに向けて今後の活動も続けていく。

【評価された点】
 都市部において一定の目的をもってネットワーク化を図る地域活動のモデル的な事例であると考えられることから、受賞に値すると考えられる。
主催者賞
『出会い・ふれあい・支え合い』世代間交流を促す活動
熊本県熊本市東区 NPO法人みるくらぶ
【活動内容】
 当団体の究極の目標は『安寧』な社会の創造。『安寧』は、穏やかな気持ちで生活を送ることが可能な社会とされている。私たちはその定義に則り、穏やかな気持ちに誘うためには、一人一人の存在が否定されることなく、人とのほどよい関係が維持され、困ったときには相互に助け合いができるようなつながりのある社会を想定して活動している。団体設立の契機は、孤立した育児環境が社会問題視されるようになったこと。不登校・いじめ・虐待などが顕在化しはじめたことに端を発している。これらの状況があることを踏まえ、孤立した育児環境を改善したいと強く思い、「みるくらぶ」は、平成5年12月6日創設。その間、社会活動法制定により平成19年6月13日、NPO法人みるくらぶ、として法人化、現在に至る。
 以下3つの項目の事業は、地震直後の実態に合わせるため通常行っていた活動に加えて実践している活動である。
@親子居場所事業:人との関わりがあれば、少々の課題は自助努力と共助の助け合いで乗り越えられる個々の意欲を引き出すことが可能だとする当団体の設立趣旨に沿うと考えて、まずは出会う機会を創出するために、アウトリーチに切り替え、出会い、語らいを通じてニーズ把握を行い随時必要な支援を実践してきた。
A学習サポート:巡回支援を行っている際に母親たちから聞かされた学習の遅れに対する懸念から実施。特に当時の新1年生(現在の小学校3年生)は震災が起きた際、五十音や計算の基礎学習の時期に重なり、その基礎学習の機会が震災により奪われたこと。さらに、その間学習塾へ通い学習をしていた子どもとそうでない子どもの間に習熟格差が生じていることも明らかになり仮設への入居が始まったのと同時に開始。
Bこころリラクゼーション講座:具体的には、フラワーアレンジメントをはじめ工作などの作業を行いながら保育所と学校へ出向き、一学年を対象に一クラス単位にて開催。高齢者を対象にした講座は、月1回定期的に開催している。気持ちを穏やかに維持し、さらに人とより良くつながるスキル獲得と機会を提供することが目的。人とつながることの心地よさを実感できる機会となるように一人一人の子どもに配慮しながら開催している。この講座は、仮設に入居している高齢者の認知予防と孤独死を防ぐためのコミュニティ支援としても開催している。
 今後は、拠点を復活させ、子どもの健全育成を確実に支え、老若男女問わず、いつでもだれでも気軽に来所できるような多世代交流の居場所を創設していきたい。活動の根幹は、「人との出会い」と「助け合い」による安心した社会の創造であり、この3年間、支援活動を通じてその尊さを実感していただいた。「受けた恩は、今度は私たちが他の方々に返しますね」と聞かされたが、このように、人の善意の輪を広げていくことが可能だと実感している。また、一人一人の特性を生かすことが、社会貢献の場となれば意欲を引き出し、生きがいを実感できると確信する。また、この活動は特に斬新的なものではないが、日常生活の基盤を支えるには必要不可欠な活動であり、この活動がうまく機能すれば、経済視点の街づくりから転換して、子どもを核にした街づくりを主眼に置いた地域環境の創造と、生活の質、例えば、緩やかな人とのつながりに着目した街づくりの必要性について提案できるのではないかと考えている。

【評価された点】
 平成5年、不登校、いじめ、虐待が顕在化する中、「子どもの健全育成」を目的に、様々な事業を展開。特に、熊本地震後は保護者のケアも考慮し、「親子居場所事業」とするなど、震災後の取り組みは被災者の置かれている境遇に配慮し、被災者に寄り添った心のケアを中心としたきめ細やかな取り組みを高く評価したい。
振興奨励賞
宮城県仙台市宮城野区 つるがや元気会  高齢者支援、健康寿命促進活動の実施
茨城県笠間市 特定非営利活動法人グラウンドワーク笠間  高齢者の居場所づくりとまちづくり活動
群馬県みどり市 とまり木  みんながあたたかくつながれる居場所づくり
埼玉県さいたま市緑区 NPO法人チアーズ  みんなで食べるごはんはおいしい! 
千葉県八千代市 緑が丘西自治会  みらいに向けての課題解決づくり  
東京都台東区 NPO法人台東区の子育てを支え合うネットワーク  地域で子どもを育てる 
神奈川県横浜市中区 認定NPO法人地球市民ACTかながわ/TPAK  高齢者の生きがいをつくる国際ボランティア 
神奈川県小田原市 おだわら児童館連合  多世代交流ができる居場所づくり 
新潟県十日町市 特定非営利活動法人桂公園こどもランド  公園から広げる地域の活性化 
静岡県三島市 山田川グリーンツーリズム研究会  山田川流域を愛する人を育てる 
静岡県藤枝市 下当間ふれあいサロン一五の会  地域は一家族“住んでよかった下当間” 
三重県東員町 NPO法人生ごみリサイクル思考の会  「ごみゼロ社会の実現」めざして 
兵庫県姫路市 NPO法人あぼしまちコミュニケーション  地域と自治会と行政のパイプ役 
島根県飯南町 谷自治振興会  囃子響く神楽でつなぐ「谷」づくり 
香川県丸亀市 特定非営利活動法人さぬきっずコムシアター  共生社会を実現するみんなの居場所づくり 
佐賀県伊万里市 特定非営利活動法人NPO栄町地域づくり会  高齢者が安心して暮らせる仕組みづくり 
佐賀県武雄市 よりみちステーション  子どもを中心とした居場所づくり 
長崎県雲仙市 特定非営利活動法人奥雲仙の自然を守る会  「奥雲仙田代原」地域で取り組む保全活動 
熊本県熊本市中央区 熊本県発達障害当事者会 Little bit  市民参加型の対話を目指す発達障害啓蒙活動 
宮崎県宮崎市 株式会社ナチュラルビー  「食」からつながるコミュニティづくり